包茎手術で早漏は治る?感度・射精時間への影響を研究から医師が解説
2026/09/18
包茎手術をすると早漏は改善する?
「包茎手術をすると亀頭が露出して刺激に慣れるため、早漏も改善する」
このような説明を聞いたことがある方もいるかもしれません。
たしかに、包茎手術によって亀頭や包皮の状態が変わるため、性交時の感覚に何らかの変化が起こる可能性はあります。
しかし、現在までの研究を総合すると、
「包茎手術をすれば早漏が治る」とは言えません。
包茎手術と早漏について12研究・計21,589人を解析したシステマティックレビュー/メタ解析では、包茎手術を受けている男性と受けていない男性の間で、早漏の頻度に有意な差は認められませんでした。
また、別のメタ解析でも、早漏の頻度や射精までの時間に明確な差は認められていません。ただし、これまでの研究には質や研究方法のばらつきがあり、この点には注意が必要です。
現在のAUA/SMSNA(米国泌尿器科学会/北米性医学会)の射精障害ガイドラインでも、
「射精までの時間は、割礼の有無によって影響されないと患者に説明すべき」
とされています。
つまり、早漏を治すことだけを目的として包茎手術を受けることは、現在の医学的エビデンスからは推奨しにくいというのが基本的な考え方です。
一方で、個々の研究を見ると、包茎手術後の射精時間や感覚の変化について異なる結果も報告されています。
では、
なぜ「包茎だと早漏になりやすい」「包茎手術で早漏が改善する」といわれるのでしょうか?
次から、包茎と早漏の関係、亀頭の感度、実際の射精時間(IELT)の研究結果を順番に見ていきます。
そもそも「早漏」とは?
「射精が早い」と感じるだけで、必ずしも医学的な**早漏(Premature Ejaculation:PE)**に該当するわけではありません。
早漏を考えるうえでは、射精までの時間だけではなく、
- 射精を自分でコントロールしにくい
- 本人やパートナーに苦痛・不満がある
- その状態が繰り返し起こる
といった点も重要です。
AUA/SMSNAガイドラインでは、生涯型早漏(lifelong PE)について、挿入から射精までがおおむね2分以内で、射精コントロールが難しく、それによる苦痛を伴う状態としています。後天性早漏(acquired PE)は、それまで問題がなかった人で射精までの時間が明らかに短くなり、コントロール困難や苦痛を伴う状態です。
IELTとは?
早漏の研究でよく使われるのが、
IELT(Intravaginal Ejaculatory Latency Time:膣内射精潜時時間)
です。
これは簡単にいうと、膣への挿入から射精までの時間を指します。
一般男性を対象とした研究では中央値約5.4分という報告がありますが、個人差は大きく、「○分より短ければ必ず早漏」という単純なものではありません。
包茎手術の研究を見るときは「早漏」と「IELT」を分けて考える
ここは今回の記事でかなり重要です。
研究によっては、
「包茎手術後にIELTが変化したか」
を調べているものもあれば、
「早漏と診断される人が減ったか」
を調べているものもあります。
この2つは同じではありません。
実際、包茎手術と早漏についてのメタ解析では、早漏そのものの頻度には有意差がなかった一方、IELTについては包茎手術群に有利な結果も報告されています。 それでも著者らの総合的な結論は、包茎手術が早漏そのものを改善するとはいえない、というものでした。
したがって、
「射精までの時間が少し延びた」=「早漏が治った」
とは限りません。
この違いを押さえたうえで、次に**「そもそも包茎の人は早漏になりやすいのか?」**を研究から見ていきましょう。
包茎の人は早漏になりやすい?
「包茎だと亀頭が普段から露出していないため、刺激に弱くなって早漏になりやすい」
よく聞く説明ですが、医学的にはそれほど単純ではありません。
包茎手術(circumcision)の有無と早漏を調べた12研究・計21,589人のメタ解析では、包茎手術を受けた男性と受けていない男性で、早漏の頻度に有意な差は認められませんでした(OR 0.90、95%CI 0.72–1.13)。
さらに、10研究・計18,740人を解析した別のメタ解析でも、早漏について有意差は認められていません(OR 1.13、95%CI 0.83–1.54)。この研究では射精までの時間についても明確な差は認められませんでした。
「亀頭が刺激に慣れていない=早漏」とは限らない
早漏には陰茎の感覚だけでなく、
- 射精をコントロールする神経系
- 心理的・対人関係の要因
- ED(勃起不全)
- 一部の後天性早漏では甲状腺機能や前立腺・尿路の炎症など
さまざまな要因が関係します。AUA/SMSNAガイドラインでも、早漏は射精時間だけではなく、射精コントロールの困難さや本人・パートナーの苦痛を含めて評価することが重要とされています。
そして同ガイドラインは、包茎手術との関係について、
「射精までの時間は、circumcision(包茎手術・割礼)の有無によって影響されないと患者に説明すべき」
としています(Conditional Recommendation、Evidence Level: Grade C)。
したがって現時点では、
「包茎だから早漏になる」
「亀頭が露出していないから刺激に弱い」
と一律に説明できるだけの根拠はありません。
ただし、ここで気になるのが、**包茎手術をすると実際に亀頭の感度は変わるのか?**という点です。
次は、この「感度が鈍くなるから早漏が改善する」という説を研究から見ていきます。
包茎手術をすると亀頭の感度は低下する?
「包茎手術をすると亀頭が常に露出するようになり、刺激に慣れて感度が鈍くなる」
これは、包茎手術と早漏を説明するときによく使われる考え方です。
しかし、「包茎手術をすると亀頭の感度が低下する」と単純に言えるほど、研究結果は明確ではありません。
実際に感覚を測定した研究では、大きな差はみられていない
2016年の研究では、包茎手術を受けている男性30人と受けていない男性32人について、陰茎の触覚・痛覚・温度感覚などを実際に測定しました。
その結果、亀頭や陰茎の各部位について、包茎手術の有無による感覚の有意な差は認められませんでした。
一方で、包皮がある男性では、包皮そのものは他の陰茎部位より細かな触覚に敏感という結果も出ています。
つまり、
「包皮には感覚がある」ことと、
「包皮を切除すると亀頭の性的な感度が低下する」ことは同じではありません。
「触覚」と「性的な快感」も同じではない
ここも重要なポイントです。
医学研究で測定される「何グラムの刺激を感じるか」「温度変化を感じるか」といった感覚閾値と、実際の性交時に感じる性的快感や射精のしやすさは別のものです。
実際、40,473人を含むシステマティックレビューでは、質の高い研究を中心にみると、包茎手術によって陰茎の感度、性的感覚、性的満足度などが全体として悪化するという明確な証拠は認められませんでした。
別のメタ解析でも、早漏、射精までの時間、勃起機能、オーガズムなどについて有意な悪化は確認されていません。
ただし、「感度が変わらない」と断定するのも適切ではない
一方、すべての研究結果が一致しているわけではありません。
1,369人を対象とした質問票研究では、包茎手術を受けた男性で亀頭の性的快感やオーガズムの強さが低かったという結果も報告されています。
そのため現在の研究からは、
「包茎手術をすると必ず感度が鈍くなる」
「感度がまったく変化しない」
のどちらも一律には言えません。
ただ、少なくとも**「亀頭が露出して感度が低下するから、早漏が治る」という単純なメカニズムは、現在のエビデンスでは十分に証明されていません。**
では、実際のところ、包茎手術の前後で射精までの時間(IELT)は変化するのでしょうか?
次はここを、具体的な研究結果を見ながら整理します。
包茎手術で射精までの時間(IELT)は延びる?
ここは少し複雑です。
研究の中には、包茎手術後にIELT(膣内射精潜時時間)が延長したと報告しているものがあります。
手術後にIELTが延びた研究もある
中国で行われた前向き研究では、包茎手術を受けた575人と、手術を受けなかった623人を比較し、手術後12か月まで経過を追っています。
その結果、包茎手術を受けたグループでは、手術前と比較して
IELTの延長
射精コントロールの改善
性交への満足度の改善
などが報告されました。
また、早漏の男性を対象とした別の研究では、平均IELTが
手術前:1.10分
↓
手術後:2.48分
と延長しています。この研究では陰茎の神経刺激に対する反応も測定され、亀頭側の感覚伝達に変化がみられました。
こうした研究だけを見ると、
「やっぱり包茎手術は早漏に効くのでは?」
と思うかもしれません。
ただし、研究全体では結論が一致していない
重要なのはここです。
12研究、計21,589人をまとめたシステマティックレビュー/メタ解析では、一部の解析でIELTについて包茎手術群に有利な結果がみられたものの、早漏そのものの頻度には有意差がありませんでした。
著者らの最終的な結論も、包茎手術が早漏に効果をもつとはいえないというものでした。
「IELTが延びた研究がある」=「早漏治療として有効」ではない
個々の研究でIELTの延長が報告されていても、それだけで包茎手術を早漏治療として推奨することはできません。
研究によって、
対象となる男性
包茎の状態
早漏の診断方法
IELTの測定方法
手術方法
追跡期間
などが異なるためです。
さらに、IELTが延びることと、射精をコントロールできるようになり、本人の苦痛が改善して「早漏が治療された」といえることも同じではありません。
実際、AUA/SMSNAガイドラインはこれらの研究を踏まえたうえで、射精までの時間はcircumcisionの有無によって影響されないと患者に説明することを推奨しています(Conditional Recommendation, Evidence Level: Grade C)。
したがって、現時点で最も妥当なのは、
「包茎手術後にIELTが延びた研究はある。しかし、研究全体では結果が一定せず、包茎手術を早漏の治療として推奨できるだけの根拠はない」
という整理です。
では、実際に早漏を治療したい場合、包茎手術ではなく何を選ぶべきなのでしょうか?
次は、現在推奨されている早漏治療と包茎手術の位置づけを整理します。
早漏を治療したい場合、包茎手術以外にどんな方法がある?
ここまで見てきたように、包茎手術を早漏そのものの治療として積極的に勧められるだけのエビデンスはありません。
一方、早漏には、包茎手術よりもエビデンスが確立している治療があります。
AUA/SMSNAガイドラインでは、早漏に対する第一選択の薬物治療として、SSRI、ダポキセチン(使用可能な地域)、クロミプラミン、陰茎への局所麻酔薬などが挙げられています。
局所麻酔薬
リドカインやプリロカインなどを亀頭に使用し、刺激に対する感覚を一時的に低下させることで射精までの時間を延ばす方法です。
「亀頭が敏感すぎる」と感じている人にとっては、包茎手術によって恒久的に感覚を変えようとするより、こちらの方が早漏に対する直接的な治療といえます。
EAUガイドラインでも、リドカイン/プリロカイン製剤はIELTを有意に延長することが示され、早漏の治療選択肢として推奨されています。
SSRI・ダポキセチンなどの内服治療
射精にはセロトニンを中心とした神経伝達が関係しているため、SSRIには射精を遅らせる作用があります。
海外では短時間作用型SSRIのダポキセチンが早漏治療薬として承認されている国もあります。また、パロキセチンやセルトラリンなどのSSRI、クロミプラミンについても有効性が報告されています。
ただし、承認状況は国によって異なり、副作用や併用薬も考慮して選択する必要があります。
EDなど原因となる問題があれば、そちらの治療も重要
特に後天性早漏では、それまで問題がなかったのに急に射精が早くなった原因を確認することが重要です。
ED、泌尿生殖器の炎症、心理的要因などが関係している場合には、早漏だけを治療するのではなく、背景にある問題への治療を優先することがあります。EAUも、後天性早漏ではEDや泌尿生殖器感染などがあれば先に治療することを推奨しています。
「早漏の手術」には慎重な判断が必要
早漏に対しては、陰茎背神経を処理する手術なども報告されています。
しかしAUA/SMSNAでは、早漏に対する外科的治療は十分なエビデンスがなく、現時点では実験的な治療と考えるべきとされています。
したがって、
早漏を治したい → とりあえず包茎手術
ではなく、
どのタイプの早漏なのかを評価し、エビデンスのある治療から検討する
という順番が基本です。
もちろん、真性包茎や繰り返す亀頭包皮炎など、早漏とは別に包茎手術を検討する理由がある場合は話が別です。
早漏改善だけを目的に包茎手術を受けるべき?
結論からいうと、早漏の改善だけを目的として包茎手術を受けることは、現在のエビデンスからは積極的には勧められません。
これまで見てきたように、一部の研究では包茎手術後にIELT(膣内射精潜時時間)が延長したという報告があります。
しかし、複数の研究をまとめたメタ解析では、包茎手術を受けた男性で早漏が明確に少なくなるとは示されていません。
また、AUA/SMSNAのガイドラインでも、射精までの時間はcircumcision(包茎手術・割礼)の有無によって影響されないと説明することが推奨されています。
「包茎の治療」と「早漏の治療」は分けて考える
ここが大切です。
たとえば、
真性包茎で亀頭を露出できない
亀頭包皮炎を繰り返している
包皮の狭窄によって性交時に痛みがある
など、包茎そのものに治療する理由がある場合には、包茎手術を検討する意味があります。
その結果として、性交時の感覚や射精までの時間に変化を感じる人がいる可能性はあります。
しかし、
「早漏だから包皮を切れば治る」
という順番で手術を選択するのは別の話です。
「感度を下げるための手術」と考えない
包茎手術は、早漏治療のために亀頭の感覚を鈍くする手術ではありません。
手術後に性的な感覚がどう変化するかには個人差があり、現在の研究でも「必ず感度が低下する」とは示されていません。
そのため、
「包茎手術をすれば亀頭が鈍感になって、射精時間が長くなる」
という効果を期待して手術を受けると、期待した変化が得られない可能性があります。
両方に悩んでいる場合は、それぞれ評価する
一方で、
「包茎も治したいし、早漏にも悩んでいる」
というケースは当然あります。
この場合は、どちらか一方の治療ですべて解決しようとするのではなく、
包茎には包茎の適応を判断し、早漏には早漏の原因やタイプを評価して治療を選ぶ
という考え方が適切です。
包茎手術を受けた結果として早漏が改善する可能性を完全に否定する必要はありませんが、それを手術の確実な効果として期待するべきではありません。
逆に、包茎手術で射精しにくくなったり、遅漏になったりする?
「包茎手術で感度が落ちるなら、逆に射精しにくくなったり、遅漏になったりしないの?」
と心配する方もいると思います。
結論として、包茎手術によって多くの人が遅漏になる、あるいは射精できなくなるという明確なエビデンスはありません。
射精機能全体への明確な悪影響は示されていない
包茎手術と男性の性機能を調べたメタ解析では、早漏だけでなく、射精障害、オーガズムの問題、勃起機能などについても検討されています。
2013年のメタ解析では、包茎手術の有無によって射精障害に有意な差は認められませんでした。
また、男性の性機能に関するシステマティックレビューでも、質の高い研究を中心にみると、包茎手術によって性的機能や性的満足度が全体として悪化するという明確な根拠は示されていません。
ただし、術後に「感覚が変わった」と感じる可能性はある
これは、
「手術前とまったく同じ感覚が保証される」
という意味ではありません。
包茎手術では包皮の一部を切除するため、亀頭の露出状態や性交時に動く皮膚の量などが変化します。
そのため、人によっては術後に、
「刺激の感じ方が変わった」
「以前より敏感に感じる」
「以前より刺激が弱く感じる」
といった主観的な変化を感じる可能性はあります。
実際、性的感覚についての研究結果は完全には一致しておらず、感覚やオーガズムの変化を報告した研究もあります。
術後早期の「射精しにくい」は別に考える
さらに、手術直後の状態と長期的な性機能は分けて考える必要があります。
術後早期には、傷の痛み、腫れ、突っ張り感、性交への不安などがあるため、性行為を再開した際に一時的に感覚が違ったり、射精しにくいと感じたりする可能性があります。
これは、包茎手術によって恒久的な遅漏になったことを意味するとは限りません。
長期間続く場合は原因を確認する
傷が十分に治癒したあとも、
明らかに射精しにくくなった
オーガズムを得にくくなった
勃起時に傷が強く突っ張る・痛む
といった症状が続く場合には、一度診察を受けた方がよいでしょう。
特に勃起時の突っ張りや痛みがある場合には、単純な「感度」の問題ではなく、瘢痕や皮膚の不足など術後の構造的な問題が関係していないか確認することも重要です。
したがって、
「包茎手術をすると早漏が治る」も、
「包茎手術をすると感度がなくなって遅漏になる」も、
どちらも一律には言えません。
包茎手術による性的感覚の変化には個人差がありますが、現在の研究では、射精機能に大きな悪影響を与えるという明確な根拠は示されていないというのが妥当な整理です。
包茎手術と早漏について、研究から分かっていること
ここまでの内容を一度整理すると、包茎手術と早漏については、個々の研究と研究全体の結論を分けて考えることが重要です。
一部の研究では「射精時間が延びた」という報告がある
包茎手術の前後を比較した研究の中には、
IELT(膣内射精潜時時間)が延長した
射精コントロールが改善した
性的満足度が改善した
と報告したものがあります。
そのため、包茎手術後に早漏症状の改善を感じる人がいる可能性まで否定する必要はありません。
しかし、研究全体では早漏への効果は確認されていない
一方、12研究・計21,589人をまとめたシステマティックレビュー/メタ解析では、包茎手術を受けた男性と受けていない男性で、早漏の頻度に有意な差は認められませんでした。
この結果などを踏まえ、AUA/SMSNAガイドラインでも、
射精までの時間は、包茎手術(circumcision)の有無によって大きく左右されない
と患者に説明することが推奨されています。
現時点での結論
したがって、現在のエビデンスを整理すると、
包茎手術後にIELTが延長したという研究はある
↓
しかし、すべての研究で同じ結果ではない
↓
研究全体では、包茎手術による明確な早漏改善効果は確認されていない
↓
早漏治療だけを目的として包茎手術を行う根拠は乏しい
という位置づけになります。
またAUA/SMSNAでは、早漏の第一選択となる薬物療法として、SSRI、ダポキセチン(使用可能な地域)、クロミプラミン、陰茎への局所麻酔薬などを挙げています。
つまり、早漏に悩んでいる場合には、
「包茎だから手術する」ではなく、まず早漏として適切に評価し、早漏に対する治療を検討する
ことが基本です。
一方で、真性包茎や繰り返す亀頭包皮炎、性交時の痛みなど、早漏とは別に包茎手術を検討する理由がある場合には、包茎と早漏をそれぞれ分けて考えるのがよいでしょう。
どんな場合なら包茎手術を検討してもいい?
早漏があるからといって、それだけを理由に包茎手術を受ける必要はありません。
包茎手術を検討するときは、早漏とはいったん分けて、包茎そのものによって困っていることがあるかを考えることが大切です。
包茎そのものに症状がある場合
たとえば、
- 包皮が狭く、亀頭を十分に露出できない
- 勃起時や性交時に包皮が突っ張る・痛む
- 亀頭包皮炎を繰り返している
- 包皮に瘢痕や強い狭窄がある
- 嵌頓包茎を繰り返す、またはそのリスクがある
といった場合には、早漏とは別に包茎の治療を検討する理由があります。
少なくともガイドライン上も、症状のある治療抵抗性の包茎や反復する亀頭包皮炎などは、外科的治療を検討する代表的な状況です。
「包茎も早漏も気になる」場合
この場合は、
包茎 → 包茎として治療が必要か判断する
早漏 → 早漏として原因やタイプを評価する
と分けて考えるのがおすすめです。
包茎手術後に射精時間の変化を感じる人はいるかもしれませんが、それを手術の目的や保証された効果にはできません。
AUA/SMSNAガイドラインでも、circumcisionの有無は射精潜時に有意な影響を与えないという立場が示されています。
早漏だけが悩みなら、まず早漏治療を検討する
反対に、
包皮は問題なくむける
炎症や痛みもない
包茎自体には特に困っていない
一番の悩みは射精が早いこと
という場合には、包茎手術よりも、早漏としての診察・治療を先に検討する方が合理的です。
早漏には局所麻酔薬やSSRIなど、ガイドラインで推奨されている治療があります。また、EDや泌尿生殖器の炎症などが関係する後天性早漏では、その原因への治療が優先されます。
つまり、
「早漏を治すために包茎手術をする」のではなく、
「包茎には手術する理由があるのか」「早漏にはどの治療が適しているのか」をそれぞれ判断する。
これが、現在のエビデンスからは一番自然な考え方です。
包茎手術で早漏が改善するかは個人差がある
ここまで研究を見てきましたが、実際の診療では**「手術をしたら射精までの時間が長くなった」と感じる人がいる可能性**はあります。
一方で、まったく変化を感じない人もいるでしょう。
手術後に変わるのは「亀頭の感度」だけではない
包茎手術を受けると、
亀頭が露出するようになる
性交時の包皮の動きが変わる
陰茎への刺激の加わり方が変わる
包皮の締め付けや痛みが改善する
など、性交時の状況そのものが変化することがあります。
そのため、術後に射精までの時間が変化したとしても、それを単純に
「亀頭が刺激に慣れて鈍感になったから」
と説明することはできません。
「改善した人がいる」と「治療効果がある」は別
一部の研究では包茎手術後のIELT延長が報告されています。しかし、12研究・計21,589人をまとめたメタ解析では、IELTについて包茎手術群に有利な結果が含まれた一方、早漏そのものの頻度には有意差がなく、研究全体として包茎手術が早漏に有効とは結論づけられていません。
AUA/SMSNAガイドラインも、射精潜時はcircumcisionの有無によって影響されないと患者に説明することを推奨しています。ただし、この推奨のエビデンスレベルはGrade Cであり、研究の限界があることも踏まえる必要があります。
したがって患者さんには、
「包茎手術後に早漏が改善する人はいるかもしれませんが、早漏改善を目的として手術を受けた場合、その効果を保証することはできません」
と説明するのが、現在のエビデンスに最も沿った表現でしょう。
包茎手術を検討する場合には、包茎そのものを治療するメリットとデメリットを基準に判断し、早漏については必要に応じて別に治療することが大切です。
まとめ|包茎手術は早漏治療を目的に行う手術ではない
包茎手術と早漏については、**「手術をすれば亀頭が刺激に慣れて、早漏が治る」**と単純に説明できるものではありません。
一部の研究では、包茎手術後にIELT(膣内射精潜時時間)が延長したという報告があります。
しかし、12研究・計21,589人を対象としたメタ解析では、包茎手術を受けた男性と受けていない男性で、早漏の頻度に有意な差は認められませんでした。
また、AUA/SMSNAガイドラインでも、射精までの時間はcircumcision(包茎手術・割礼)の有無によって大きく左右されないと患者に説明することが推奨されています。
現在の研究から整理すると、
- 包茎だから早漏になるとは言い切れない
- 包茎手術後にIELTが延長した研究はある
- 包茎手術で必ず亀頭の感度が低下するわけではない
- 包茎手術によって早漏が治るとは証明されていない
- 早漏だけを治す目的で包茎手術を選択する根拠は乏しい
というのが妥当な結論です。
真性包茎や繰り返す亀頭包皮炎、性交時の痛みなどがある場合には、包茎そのものの治療として包茎手術を検討する意味があります。
一方、主な悩みが早漏なのであれば、包茎手術とは分けて早漏として評価し、局所麻酔薬やSSRIなど、早漏に対してエビデンスのある治療を検討することが基本です。AUA/SMSNAも薬物療法や局所麻酔薬などを治療選択肢とする一方、PEに対する外科的治療については十分な根拠がないとしています。
「包茎を治療すること」と「早漏を治療すること」は、いったん分けて考える。
これが、現在の医学的エビデンスに基づいた最も適切な考え方です。
医師からひとこと
「包茎手術をすると亀頭が刺激に慣れて、早漏も治る」と説明されることがありますが、現在の医学的エビデンスでは、そこまで単純には言えません。
実際に、包茎手術後に射精までの時間が延びたとする研究はあります。しかし、複数の研究をまとめると、包茎手術の有無によって早漏の頻度に明確な差は認められておらず、AUA/SMSNAガイドラインでも射精までの時間は包茎手術(circumcision)の有無によって大きく左右されないという見解が示されています。
そのため、「早漏を治すために包茎手術をする」ことは基本的にはおすすめしません。
包茎そのものに治療する理由があれば包茎手術を検討し、早漏に悩んでいるのであれば、早漏として原因やタイプを評価して治療を選ぶ。この2つは分けて考えることが大切です。
また、早漏には局所麻酔薬やSSRIなどの治療選択肢があり、心理・行動的アプローチと薬物療法の併用が有効な場合もあります。
包茎と早漏の両方が気になっている場合には、「手術をすれば両方治る」と考えるのではなく、それぞれについて適切な治療方法を相談してみてください。
関連記事
今回の記事とあわせて、以下の記事も参考にしてください。
- 亀頭が敏感すぎるのはなぜ?包茎・早漏との関係と対処法
- 包皮小帯(裏筋)は性感帯?切除・温存と感度、早漏との関係を医師が解説
- 包茎手術にはどんな方法がある?術式の違い
- 包茎手術は必ず必要?治療を検討する目安
- 包茎と亀頭包皮炎の関係|赤み・かゆみを繰り返す原因と治療
- 包茎手術でEDになる?勃起・感度・性的満足度への影響
参考文献
- Yang Y, Wang X, Bai Y, Han P. Circumcision does not have effect on premature ejaculation: A systematic review and meta-analysis. Andrologia. 2018;50(2). doi:10.1111/and.12851. PMID:28653427.
- Shindel AW, Althof SE, Carrier S, et al. Disorders of Ejaculation: An AUA/SMSNA Guideline. J Urol.2022;207(3):504-512. doi:10.1097/JU.0000000000002392. PMID:34961344.
- Gao J, Xu C, Zhang J, et al. Effects of Adult Male Circumcision on Premature Ejaculation: Results from a Prospective Study in China. Biomed Res Int. 2015;2015:417846. doi:10.1155/2015/417846. PMID:25695078.
- Morris BJ, Krieger JN. Does male circumcision affect sexual function, sensitivity, or satisfaction? A systematic review. J Sex Med. 2013;10(11):2644-2657. doi:10.1111/jsm.12293. PMID:23937309.

