医療ダイエットとは?効果・方法・リスクを医師が解説
2026/10/24
医療ダイエットとは?一般的なダイエットとの違い
食事制限や運動を頑張っても、なかなか痩せないのはなぜ?
「食事に気をつけているのに、なかなか体重が減らない」
「仕事が忙しくて、運動する時間がない」
「食事制限を始めても、空腹に耐えられず続かない」
「一度は痩せたけれど、結局リバウンドしてしまった」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
ダイエットというと、食事制限や運動によって体重を減らすことをイメージする方が多いでしょう。
確かに、体重管理において食事と運動は重要です。しかし、実際には誰もが十分な時間を確保できるわけではなく、仕事や家庭の事情によって生活習慣を大きく変えることが難しい方もいます。
また、私たちの体重は、単純に本人の努力だけで決まるものではありません。
食欲を調節するホルモン、エネルギー消費、睡眠、ストレス、遺伝的な体質など、さまざまな要因が関係しています。
さらに、体重が減少すると、身体はエネルギー消費を抑えたり、食欲を高めたりする方向に働くことがあります。
そのため、短期間で体重を減らすことができても、その状態を長期間維持するのは簡単ではありません。
ダイエットが続かない原因は、必ずしも意志の弱さだけではなく、身体の仕組みや生活環境にもあるのです。
近年では、食欲や満腹感の調節に働きかける薬剤も登場し、医療機関で減量を目指す「医療ダイエット」が注目されています。
医療ダイエットとは?医学的なサポートを受けながら減量する方法
医療ダイエットとは、医師が患者さんの健康状態や生活習慣を評価し、医学的な視点から減量を支援する取り組みです。
一般的なダイエットとの大きな違いは、食事や運動による自己管理だけでなく、必要に応じて薬物療法などの医学的な選択肢を検討できることです。
例えば、食事量を減らそうとしても強い空腹感が続き、つい食べすぎてしまう方もいます。
そのような場合、食欲の調節に働きかける薬剤が減量を支援する選択肢となることがあります。
代表的な薬剤には、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬があります。
これらは食欲や満腹感などに作用し、食事摂取量の減少を通じて体重減少につながることがあります。
ただし、薬を使用すれば誰でも簡単に痩せられるわけではありません。
効果には個人差があり、吐き気や便秘などの副作用が生じることもあります。また、薬物療法を終了したあとに体重が再び増加する場合もあります。
そのため、医療ダイエットでは薬剤の効果だけに頼るのではなく、食事・運動・体組成の変化を確認しながら、長期的な体重管理につなげていくことが重要です。
一般的なダイエットと医療ダイエットの違い
一般的なダイエットでは、食事量の調整や運動習慣の改善など、自分自身で取り組む方法が中心になります。
一方、医療ダイエットでは、健康状態や生活背景に合わせて、無理なく取り組める減量方法を検討します。
主な違いを以下にまとめます。
| 比較項目 | 一般的なダイエット | 医療ダイエット |
|---|---|---|
| 取り組み方 | 自己管理が中心 | 医療者による評価・管理を伴う |
| 食事療法 | 自分で食事量や栄養バランスを調整 | 食欲や生活習慣も考慮して検討 |
| 運動療法 | 自分で運動習慣をつくる | 体力や生活状況に応じて検討 |
| 薬物療法 | 基本的に使用しない | 医学的に適切な場合に検討 |
| 減量効果の評価 | 体重や見た目が中心になりやすい | 体重・体脂肪・筋肉量なども評価 |
| 安全性 | 自己管理が中心 | 副作用や健康状態の変化を確認 |
ここで重要なのは、医療ダイエットが食事療法や運動療法の代わりになるわけではないということです。
例えば、仕事が忙しくて毎日ジムに通えない方でも、日常生活の中で活動量を増やしたり、短時間の筋力トレーニングを取り入れたりする方法があります。
また、厳しい食事制限が難しい方でも、薬物療法を適切に利用しながら、食事内容や食習慣を少しずつ改善していくことが考えられます。
大切なのは、理想的な生活習慣を一度に実現することではなく、自分の生活に合った方法で減量を継続することです。
肥満症と診断されていなくても、体重管理を始める意味はある
日本肥満学会では、BMI(Body Mass Index:体格指数)が25以上の場合を「肥満」と定義しています。
BMIは、以下の式で計算できます。
BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)
例えば、身長170cm、体重75kgの場合、BMIは約26.0となり、日本の基準では肥満に該当します。
一方、「肥満症」とは、肥満に関連する健康障害を伴う場合や、内臓脂肪の蓄積などから医学的に減量が必要と判断される疾患です。
肥満と肥満症は同じ意味ではありません。
しかし、現時点で肥満に関連する病気を発症していないからといって、体重管理が不要というわけではありません。
肥満は、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな健康問題と関連しています。
そのため、こうした病気を発症してから対策するだけでなく、健康状態に応じて早い段階から体重や生活習慣を見直すことにも意味があります。
これは、将来の病気の発症リスクを減らすことを目指す「予防医学」の考え方にもつながります。
ただし、体重を減らせば減らすほど健康になるわけではありません。
適正な体重や減量の必要性は、年齢、BMI、体脂肪量、筋肉量、既往歴、健康状態などによって異なります。
また、肥満症と診断されていない方への薬物療法については、承認された適応や臨床試験の対象集団との違いを考慮する必要があります。
当院では、自由診療による医療ダイエットも選択肢として提供していますが、薬剤の使用については健康状態やリスクを確認したうえで個別に判断します。
医療ダイエットの目的は「体重を減らすこと」だけではない
ダイエットをするとき、多くの方が最も気にするのは体重の数値ではないでしょうか。
しかし、体重が減少したからといって、必ずしも理想的な身体の変化が起きているとは限りません。
例えば、体重が80kgから75kgに減少した場合、5kgの減量に成功したことになります。
ただし、その5kgがすべて体脂肪とは限りません。
減量中には、体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量も減少することがあります。
筋肉量が大きく減少すると、筋力や身体機能の低下につながる可能性があります。
そのため、医療ダイエットでは以下のような点にも注目します。
-
体脂肪量:余分な体脂肪が減少しているか
-
骨格筋量:筋肉量をできるだけ維持できているか
-
腹囲・内臓脂肪:内臓脂肪の蓄積に改善がみられるか
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健康状態:血糖値・血圧・脂質などに変化があるか
-
生活習慣:無理なく継続できる食事・運動習慣が身についているか
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しています。
InBodyでは、体重だけでなく、体脂肪量や骨格筋量などを推定することができ、減量中の身体の変化を確認する際に役立ちます。
ただし、InBodyの測定値は水分状態や測定条件によって変動するため、数値だけで判断することはできません。
同じような条件で継続的に測定し、体重や腹囲、健康状態などと合わせて評価することが大切です。
「何kg痩せたか」だけでなく、「体脂肪と筋肉量がどのように変化したか」を確認することで、より適切な体重管理につながります。
忙しい方やダイエットが続かなかった方にも、医療という選択肢を
健康的な減量には、適切な食事と運動が重要です。
しかし、仕事が忙しい方、生活リズムが不規則な方、食欲をコントロールすることが難しい方など、生活習慣の改善だけでは思うように減量できない場合もあります。
そのような方にとって、医療ダイエットは選択肢の一つになり得ます。
当院では、患者さんの健康状態や生活背景を踏まえ、必要に応じてGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬などを用いた自由診療を検討しています。
例えば、GIP/GLP-1受容体作動薬であるマンジャロは、日本では2型糖尿病治療薬として承認されています。
そのため、糖尿病ではない方への減量目的での使用は、国内で承認された適応の範囲外となります。
適応外使用では、期待できる効果だけでなく、副作用や長期的な安全性に関する不確実性、国内承認薬との違いなどを理解する必要があります。また、薬剤が医学的に適さないと判断される場合には、処方できないこともあります。
医療ダイエットは、誰もが薬を使用するべきという考え方ではありません。
一方で、食事や運動だけで減量を継続することが難しい方に対し、努力不足と決めつけるのではなく、医学的な支援を検討することにも意味があります。
一人で続けることが難しいときに、医療のサポートを受けることも、体重管理に取り組むための一つの方法です。
無理のない食事・運動習慣を少しずつ身につけながら、必要に応じて薬物療法を組み合わせ、長期的に健康な身体を維持することを目指します。
医療ダイエットにはどんな方法がある?主な治療方法を解説
医療ダイエットには、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法など、さまざまな方法があります。
「医療ダイエット=痩せる薬を使うこと」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には薬物療法だけでなく、食事や運動などの生活習慣を含めて考えることが重要です。
一方で、仕事や家庭の事情によって、厳しい食事制限や十分な運動時間を確保することが難しい方もいます。
そのような場合には、生活習慣の改善を無理のない範囲で進めながら、医学的に適切と判断されれば、薬物療法によるサポートを検討することもできます。
ここでは、医療ダイエットで用いられる主な方法について解説します。
① 食事療法|無理な食事制限ではなく、続けられる食生活を目指す
体重を減らすためには、基本的に摂取するエネルギー量が消費するエネルギー量を下回る状態をつくる必要があります。
そのため、食事療法は医療ダイエットにおいて重要な役割を担っています。
ただし、極端に食事量を減らしたり、特定の食品を完全に避けたりすればよいというわけではありません。
過度な食事制限は、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの不足につながり、筋肉量の減少や体調不良を引き起こすことがあります。
また、厳しい制限を長期間続けることは難しく、結果としてリバウンドにつながる場合もあります。
大切なのは、短期間だけ頑張る食事制限ではなく、普段の生活の中で続けられる食事内容にすることです。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。
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甘い飲み物や間食の量を見直す
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外食やコンビニ食でもタンパク質を意識する
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主食・主菜・副菜のバランスを整える
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食事を抜くのではなく、1日の摂取量を調整する
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食べすぎにつながりやすい生活習慣を見直す
もちろん、食事内容を細かく管理する時間がない方もいるでしょう。
そのような場合でも、すべてを一度に変える必要はありません。
まずは実践できる部分から改善し、無理なく継続できる食生活を目指すことが重要です。
なお、GLP-1受容体作動薬などを使用する場合も、食欲が低下することで食事量が減りすぎ、必要な栄養素を十分に摂取できなくなる可能性があります。
そのため、薬物療法中も食事内容への配慮は必要です。
② 運動療法|体脂肪の減少だけでなく、筋肉量の維持も重要
運動はエネルギー消費を増やすだけでなく、筋力や心肺機能の維持、血糖コントロールの改善などにも役立ちます。
医療ダイエットでは、主に有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが考えられます。
有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが代表的です。
継続することでエネルギー消費を増やし、体脂肪の減少や心肺機能の改善などが期待できます。
筋力トレーニング
スクワット、腕立て伏せ、ダンベル運動などが代表的です。
減量中の筋力や筋肉量の維持に役立ち、身体機能を保つうえでも重要です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。
ただし、これはすべての方が最初から達成しなければならないという意味ではありません。
運動習慣がない方や、仕事が忙しくまとまった時間を確保できない方は、日常生活の中で身体を動かす機会を増やすことから始めてもよいでしょう。
例えば、通勤時に少し長く歩く、階段を利用する、自宅で短時間のスクワットを行うといった方法もあります。
ダイエットのために、必ずしも毎日ジムに通う必要はありません。
自分の体力や生活習慣に合わせて、継続できる運動を取り入れることが大切です。
また、減量中には体脂肪だけでなく筋肉を含む除脂肪量も減少する可能性があるため、薬物療法を行う場合にも運動療法は重要になります。
③ 行動療法|太りやすい生活習慣を少しずつ改善する
行動療法とは、食事や運動に関係する日常の行動を振り返り、体重管理につながる習慣を身につけていく方法です。
例えば、次のような生活習慣が体重増加につながっている場合があります。
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仕事が忙しく、夕食が深夜になりやすい
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ストレスを感じると間食が増える
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食事を急いで食べる習慣がある
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睡眠時間が短く、生活リズムが不規則
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空腹ではなくても、習慣的に食べてしまう
このような行動を把握するために、体重や食事内容、間食の頻度などを記録する方法があります。
ただし、毎日細かく記録することが負担になる方もいるため、継続できる方法を選ぶことが大切です。
例えば、体重を定期的に測定する、間食した時間帯だけを記録する、食べすぎやすい状況を把握するなど、簡単な方法から始めることもできます。
また、ストレスや睡眠不足が食欲や食行動に影響することもあるため、食事や運動だけでなく、生活全体を見直すことが役立つ場合もあります。
行動療法の目的は、厳しいルールを増やすことではなく、体重管理を続けやすい生活習慣をつくることです。
④ 薬物療法|食欲や満腹感に働きかけ、減量をサポートする
近年、医療ダイエットで注目されているのが、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を用いた薬物療法です。
これらの薬剤は、食欲や満腹感を調節する仕組みに作用し、食事摂取量の減少を通じて体重減少につながることがあります。
代表的な成分として、以下のようなものがあります。
| 有効成分 | 主な製剤例 | 特徴 |
|---|---|---|
| チルゼパチド | マンジャロ、ゼップバウンド | GIPとGLP-1の両受容体に作用 |
| セマグルチド | オゼンピック、リベルサス、ウゴービ | GLP-1受容体に作用 |
| リラグルチド | サクセンダなど | GLP-1受容体に作用 |
※製剤によって日本国内での承認状況、適応疾患、投与方法は異なります。海外製剤や国内未承認製剤を含む場合もあり、すべてが国内で肥満症治療薬として承認されているわけではありません。
例えば、マンジャロの有効成分であるチルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する薬剤です。
食欲や満腹感の調節に働きかけることで、食事摂取量が減少し、体重減少につながることがあります。
このような薬剤は、食欲のコントロールが難しい方にとって、減量を支援する選択肢になり得ます。
ただし、薬剤によって承認された効能・効果は異なります。
例えば、マンジャロは日本では2型糖尿病治療薬として承認されており、糖尿病ではない方への減量目的の使用は国内承認適応外となります。
当院では、患者さんの健康状態や生活背景を確認し、自由診療による薬物療法も選択肢の一つとして検討しています。
一方で、薬物療法には吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの副作用があり、まれに重篤な有害事象が生じる可能性もあります。
また、薬剤を中止したあとに食欲や体重が再び増加する場合もあるため、治療開始時から長期的な体重管理について考える必要があります。
薬物療法は、食事療法や運動療法に代わるものではなく、それらを無理のない範囲で継続するための医学的なサポートとして位置づけることが大切です。
⑤ 体組成評価|体重だけでなく、体脂肪や筋肉量も確認する
医療ダイエットでは、減量の方法だけでなく、その結果をどのように評価するかも重要です。
例えば、同じ5kgの減量でも、主に体脂肪が減少した場合と、筋肉を含む除脂肪量が大きく減少した場合では、身体への影響が異なります。
そのため、体重だけでなく、体脂肪や筋肉量の変化にも注目することが大切です。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などを推定することができます。
こうした測定結果を継続的に確認することで、減量の経過を評価する際の参考になります。
例えば、体重は減少していても、骨格筋量の推定値が大きく低下している場合には、食事内容や運動習慣を見直すきっかけになります。
ただし、InBodyは身体の電気抵抗から体組成を推定する装置であり、測定値は水分状態や食事、運動、測定時間などの影響を受けます。
そのため、1回の測定結果だけで判断せず、できるだけ同じ条件で測定し、体重、腹囲、身体機能、健康状態などと合わせて評価することが重要です。
医療ダイエットでは、単に体重を減らすことだけでなく、身体の変化を確認しながら減量を進めることが大切です。
自分に合った方法を組み合わせることが、医療ダイエットの基本
医療ダイエットにはさまざまな方法がありますが、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。
食事の調整だけで十分な減量ができる方もいれば、運動習慣の改善が効果的な方もいます。
一方で、強い空腹感や生活環境などの影響によって、食事療法や運動療法だけでは継続が難しい方もいます。
そのような場合、健康状態や治療上のリスクを確認したうえで、薬物療法を組み合わせることも考えられます。
大切なのは、どの方法が最も優れているかを一律に決めることではありません。
患者さんの体質、健康状態、生活習慣、減量目標に合わせて、続けられる方法を選ぶことが重要です。
医療ダイエットは、短期間だけ体重を減らして終わるものではなく、その後の体重維持や健康管理まで見据えて取り組むことが望まれます。
GLP-1・GIP/GLP-1とは?医療ダイエットで使われる薬の仕組み
医療ダイエットで使用される薬剤の中でも、近年特に注目されているのが「GLP-1受容体作動薬」と「GIP/GLP-1受容体作動薬」です。
代表的な薬剤には、マンジャロ、オゼンピック、リベルサス、ゼップバウンド、ウゴービなどがあります。
これらは、食欲や満腹感の調節に関係するホルモンの働きを利用した薬剤です。
従来のダイエットでは、空腹を我慢しながら食事量を減らそうとすることが多くありました。
一方、GLP-1などに作用する薬剤は、食欲や満腹感を調節する身体の仕組みに働きかけることで、食事量を減らしやすくするという特徴があります。
では、具体的にどのような仕組みで体重が減少するのでしょうか。
GLP-1とは?食欲や血糖値の調節に関係するホルモン
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事を摂取した際などに主に腸から分泌されるホルモンの一つです。
GLP-1は「インクレチン」と呼ばれるホルモンの一種で、血糖値や食欲の調節に関係しています。
主な働きには、以下のようなものがあります。
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インスリン分泌の促進:血糖値が高いときに、膵臓からのインスリン分泌を促す
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グルカゴン分泌の抑制:血糖値が高い状態では、血糖値を上げるホルモンの分泌を抑える
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食欲・満腹感の調節:脳の食欲調節に関係する領域に働きかけ、食欲を抑える方向に作用する
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胃排出の遅延:胃の内容物が小腸へ移動する速度を遅くする
これらの作用によって、GLP-1は食後の血糖値や食欲の調節に関係しています。
ただし、体内で自然に分泌されるGLP-1は、DPP-4という酵素によって短時間で分解されます。
そこで開発されたのが、体内で分解されにくく、GLP-1受容体への作用が長く続くように設計された「GLP-1受容体作動薬」です。
医療ダイエットでは、こうした薬剤の食欲調節作用などを利用して、減量を目指すことがあります。
なぜGLP-1の薬で食欲が減るの?
GLP-1受容体作動薬による体重減少には、脳への作用が重要な役割を果たしていると考えられています。
私たちの食欲は、単に胃が空になったかどうかだけで決まるわけではありません。
脳では、身体のエネルギー状態や消化管からのホルモンなど、さまざまな情報をもとに、空腹感や満腹感が調節されています。
GLP-1受容体作動薬は、こうした食欲調節に関係する神経系に働きかけることで、食事摂取量を減少させます。
実際に、薬剤を使用した方では、次のような変化がみられることがあります。
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以前より空腹を感じにくくなる
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少ない食事量でも満足しやすくなる
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食事と食事の間に食べたいと感じる頻度が減る
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食べ物への強い欲求が軽減する
ただし、こうした変化には個人差があります。
また、薬剤によって胃の内容物が小腸へ移動する速度が遅くなることも、食後の満腹感に関係すると考えられています。
一方で、長期使用では胃排出遅延作用が弱まることがあり、減量効果のすべてを胃の動きだけで説明することはできません。
GLP-1受容体作動薬は、胃の中に食べ物を長く残すだけの薬ではなく、脳を含む複数の経路を通じて食欲や食事摂取量を調節する薬剤です。
GIPとは?GLP-1との違いを解説
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)も、GLP-1と同じくインクレチンの一種です。
主に小腸から分泌され、血糖値に応じたインスリン分泌の促進などに関係しています。
また、GIPは脂肪組織や脳などにも作用し、エネルギー代謝や食欲調節に関わることが研究されています。
近年では、GLP-1だけでなくGIPにも作用する薬剤が開発されています。
その代表が、マンジャロやゼップバウンドの有効成分である「チルゼパチド」です。
チルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する薬剤で、「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれます。
GLP-1単独に作用する薬剤とは異なる仕組みを持ち、臨床試験では大きな体重減少効果が報告されています。
ただし、GIPとGLP-1がどのように相互作用して減量効果を生み出しているのかについては、現在も研究が進められています。
また、GIPとGLP-1の両方に作用するからといって、すべての条件でGLP-1受容体作動薬より優れていると一律に判断できるわけではありません。
薬剤の選択では、減量効果だけでなく、副作用、承認適応、患者さんの健康状態などを考慮する必要があります。
GLP-1・GIP/GLP-1製剤は、脂肪を直接燃焼させる薬ではない
医療ダイエットの薬について、「注射するだけで脂肪が燃焼する」「代謝が大幅に上がって痩せる」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬による体重減少は、主に食欲や食事摂取量の変化によって生じるものです。
基本的には、摂取するエネルギー量が減少し、消費するエネルギー量を下回ることで、体重が減少していきます。
つまり、薬を使えば食事内容に関係なく脂肪が燃焼する、という仕組みではありません。
また、食事量が大きく減少すると、体脂肪だけでなく筋肉を含む除脂肪量も減少する可能性があります。
そのため、薬物療法によって食欲が抑えられている場合でも、タンパク質を含む必要な栄養素を確保し、可能な範囲で運動を継続することが重要です。
当院では、体組成分析装置「InBody」を用いた評価も行っており、体重だけでなく、体脂肪量や骨格筋量などの変化も確認しながら減量を支援しています。
GLP-1・GIP/GLP-1製剤にはどんな種類がある?
現在、GLP-1やGIP/GLP-1に作用する薬剤には、複数の有効成分や製剤があります。
代表的なものを以下にまとめます。
| 有効成分 | 主な製剤 | 作用 |
|---|---|---|
| チルゼパチド | マンジャロ・ゼップバウンド | GIP/GLP-1受容体作動薬 |
| セマグルチド | オゼンピック・リベルサス・ウゴービ | GLP-1受容体作動薬 |
| リラグルチド | サクセンダなど | GLP-1受容体作動薬 |
これらは同じように食欲調節に関係する薬剤ですが、投与方法、使用頻度、用量、承認適応などに違いがあります。
例えば、マンジャロとゼップバウンドは有効成分が同じチルゼパチドですが、日本で承認されている適応が異なります。
また、オゼンピックとウゴービも有効成分は同じセマグルチドですが、製剤ごとの用量や承認適応には違いがあります。
当院では、マンジャロ、オゼンピック、リベルサス、リラグルチド製剤のプラオベスなどを取り扱っています。
なお、製剤によっては国内未承認のものがあり、また国内承認薬であっても減量目的での使用が承認適応外となる場合があります。
そのため、治療を受ける際には、薬剤の特徴だけでなく、国内での承認状況や安全性についても理解することが大切です。
個々の薬剤の違いや減量効果については、別の記事で詳しく解説します。
GLP-1・GIP/GLP-1製剤は、すべての人に適しているわけではない
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、減量を支援する選択肢になりますが、すべての方に適しているわけではありません。
これらの薬剤では、吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状が比較的多く報告されています。
また、急性膵炎、胆嚢・胆道系の疾患、脱水など、注意が必要な有害事象もあります。
持病や服用中の薬剤、過去の膵炎歴、消化管の症状などによっては、薬物療法が適切でない場合もあります。
特に、インスリン製剤や一部の糖尿病治療薬を併用している場合には、低血糖にも注意が必要です。
また、薬物療法を中止したあとに食欲が戻り、体重が再び増加することもあります。
そのため、治療を開始する際には、効果だけでなく、副作用や治療期間、中止後の体重管理についても考えることが重要です。
医療ダイエットでは、薬剤の効果だけでなく、安全性や長期的な体重維持まで含めて治療方法を検討する必要があります。
医療ダイエットでどのくらい痩せる?減量効果と個人差
医療ダイエットを検討する際、多くの方が気になるのは「実際にどのくらい体重が減るのか」ということではないでしょうか。
「1か月で何kg痩せられる?」
「マンジャロを使えば10kg以上痩せる?」
「食事制限や運動だけの場合と、どのくらい違う?」
こうした疑問を持つ方は少なくありません。
近年、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を使用した大規模な臨床試験では、従来の生活習慣改善だけでは達成が難しかった程度の体重減少も報告されています。
ただし、薬剤の効果には個人差があり、使用する薬の種類や用量、治療期間、もともとの体重、生活習慣などによって結果は異なります。
また、体重が減ったからといって、必ずしも健康的な減量ができているとは限りません。
医療ダイエットでは、どのくらい体重が減るかだけでなく、どのような経過で減量し、その後の体重をどう維持するかが重要になります。
体重は何%減れば効果がある?まずは5%の減量が一つの目安
ダイエットでは「5kg痩せたい」「10kg落としたい」といった目標を設定する方が多いでしょう。
しかし、医学的には減量した体重の絶対量だけでなく、もとの体重に対する減少率も重要です。
例えば、体重80kgの方の場合、減量率と体重の変化は次のようになります。
| 減量率 | 減少する体重 | 減量後の体重 |
|---|---|---|
| 3% | 2.4kg | 77.6kg |
| 5% | 4.0kg | 76.0kg |
| 10% | 8.0kg | 72.0kg |
| 15% | 12.0kg | 68.0kg |
| 20% | 16.0kg | 64.0kg |
一般的に、過体重や肥満のある方では、体重の5%程度の減少でも血糖値、血圧、脂質代謝などの改善につながることがあります。
また、日本肥満学会では、肥満症の治療において、肥満の程度や健康状態に応じた減量目標を設定することが推奨されています。
日本の肥満症診療では、肥満症に対する初期の減量目標として、現体重の3%以上が一つの目安とされる場合もあります。
ただし、必要な減量率は、肥満の程度や合併する疾患などによって異なります。
必ずしも10kg、20kgと大きく減量する必要はなく、比較的小さな体重減少でも健康上の意義がある場合があります。
一方、体重が標準範囲にある方では、さらに減量することが健康上の利益につながるとは限りません。
減量目標は、BMIや体脂肪量、健康状態などを踏まえて設定することが大切です。
マンジャロなどの薬では、どのくらい体重が減る?
近年、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を用いた臨床試験で、大きな体重減少効果が報告されています。
代表的な研究の一つが、チルゼパチドを用いた「SURMOUNT-1試験」です。
この試験では、糖尿病のない肥満または過体重の成人2,539人を対象に、チルゼパチドを週1回投与した場合の減量効果が検討されました。
72週間の治療後、平均体重減少率は次のようになりました。
| チルゼパチドの投与量 | 72週間後の平均体重減少率 |
|---|---|
| 5mg | 約15.0% |
| 10mg | 約19.5% |
| 15mg | 約20.9% |
| プラセボ(偽薬) | 約3.1% |
※食事・運動などの生活習慣改善指導も併用した臨床試験の結果です。
この研究では、チルゼパチドを使用した群で、プラセボ群と比較して大きな体重減少が認められました。
ただし、試験参加者の平均体重は約105kg、平均BMIは約38であり、日本で比較的軽度の肥満を理由に自由診療を希望する方とは、体格や健康状態が異なる場合があります。
また、試験は72週間という比較的長い期間にわたって行われています。
そのため、「マンジャロを使えば誰でも短期間で体重が15〜20%減る」という意味ではありません。
実際の治療では、薬剤の用量や使用期間、副作用による継続の難しさなども考慮する必要があります。
なお、日本ではマンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されており、減量目的での使用は承認適応外です。同じ有効成分のゼップバウンドは、一定の条件を満たす肥満症に対して承認されています。
GLP-1製剤でも大きな減量効果が報告されている
チルゼパチド以外にも、GLP-1受容体作動薬による減量効果が報告されています。
代表的な薬剤がセマグルチドです。
糖尿病のない肥満または過体重の成人1,961人を対象としたSTEP 1試験では、セマグルチド2.4mgを週1回投与した群で、68週間後に平均14.9%の体重減少が認められました。
一方、プラセボ群では平均2.4%の体重減少でした。
さらに、チルゼパチドとセマグルチドを直接比較したSURMOUNT-5試験では、72週間後の平均体重減少率はチルゼパチド群で20.2%、セマグルチド群で13.7%でした。
ただし、これらの研究で使用されたセマグルチドは、主に肥満症治療を目的とした1.7〜2.4mgの週1回投与です。
当院で取り扱うオゼンピックやリベルサスとは製剤や用量が異なるため、同じ減量効果が得られるとは限りません。
また、チルゼパチドとセマグルチドの効果に差が認められたからといって、すべての方にチルゼパチドが適しているわけではありません。
薬剤の選択では、副作用、持病、使用方法、治療期間などを総合的に判断する必要があります。
医療ダイエットはいつから効果が出る?
薬物療法を始めた場合、どのくらいの期間で体重が減り始めるのでしょうか。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、治療開始後の比較的早い段階から食欲や食事量に変化がみられる場合があります。
また、臨床試験では、治療開始後の数週間から体重減少が観察されています。
ただし、治療開始直後から大きく体重が減るとは限りません。
これらの薬剤は、副作用を軽減するために低用量から開始し、身体の状態を確認しながら段階的に増量する方法が一般的です。
例えば、チルゼパチドは通常2.5mgから開始しますが、この用量は主に治療導入を目的としたものです。
そのため、開始後1か月の体重減少が少ないからといって、すぐに治療が無効と判断できるわけではありません。
一方で、薬剤の効果が十分に得られない方や、副作用によって継続が難しい方もいます。
医療ダイエットの効果は、数日間の体重変化だけではなく、数週間から数か月の経過を通して評価することが大切です。
また、体重は水分量や便通、食事内容などによって日々変動するため、毎日の数値に一喜一憂せず、一定期間の変化を見ることが重要です。
同じ薬を使っても、痩せる人と痩せにくい人がいるのはなぜ?
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、臨床試験で高い減量効果が報告されていますが、すべての方が同じように痩せるわけではありません。
効果の違いには、さまざまな要因が関係すると考えられています。
もともとの体重や肥満の程度
同じ5%の減量でも、体重100kgの方では5kg、体重60kgの方では3kgの減少となります。
そのため、体重の絶対量だけで効果を比較することは適切ではありません。
使用する薬剤や用量
薬剤の種類や用量によって、平均的な減量効果は異なります。
ただし、用量を増やせば必ずしもすべての方で効果が大きくなるわけではなく、副作用とのバランスも重要です。
食事や生活習慣
薬剤によって食欲が低下しても、食事内容や生活習慣によって摂取エネルギー量は異なります。
また、睡眠不足やストレス、活動量の低下なども、体重管理に影響する場合があります。
体質や薬剤への反応
同じ薬剤を同じ用量で使用しても、食欲の変化や体重減少の程度には個人差があります。
こうした差が生じる仕組みについては、現在も研究が進められています。
そのため、他の人と同じ薬を使っているのに体重が減らないからといって、自己判断で用量を増やしたり、複数の薬剤を併用したりすることは避ける必要があります。
体重が減っても、筋肉まで減っていないか確認することが大切
医療ダイエットの効果を判断するときには、体重の減少量だけでなく、体組成の変化にも注意する必要があります。
例えば、体重が5kg減った場合でも、体脂肪が主に減少したのか、筋肉を含む除脂肪量も大きく減少したのかによって、身体への影響は異なります。
特に、薬物療法によって食欲が大きく低下すると、食事摂取量が減りすぎる場合があります。
その結果、タンパク質などの栄養素が不足し、筋肉量の減少につながる可能性があります。
筋肉は、身体を動かすためだけでなく、姿勢の維持や糖代謝などにも関係しています。
そのため、減量中にはできるだけ筋肉量を維持することが望まれます。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などを推定することができます。
ただし、測定結果は水分状態などの影響を受けるため、1回の測定値だけで判断することはできません。
体重や腹囲、食事・運動の状況などと合わせ、継続的に評価することが重要です。
医療ダイエットでは、単に体重を減らすのではなく、できるだけ筋肉量を維持しながら余分な体脂肪を減らすことが大切です。
目標体重に到達したあとも、体重管理は続く
医療ダイエットで目標体重に到達すると、「もう薬をやめても大丈夫なのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、使用を終了すると食欲が再び増加し、体重が戻ることがあります。
チルゼパチドを用いたSURMOUNT-4試験では、治療を中止した群で、その後の52週間に平均14.0%の体重再増加が認められました。
この14.0%は中止時点の体重に対する増加率であり、減量前の体重から14kg増えたという意味ではありません。
一方、治療を継続した群では、さらに平均5.5%の体重減少が認められました。
この結果は、薬物療法による減量効果を維持するうえで、治療の継続や中止後の体重管理が重要であることを示しています。
ただし、すべての方が薬を長期間使用しなければならないという意味ではありません。
治療終了のタイミングや方法は、減量の経過、健康状態、副作用、生活習慣、本人の希望などを踏まえて個別に検討する必要があります。
また、段階的に薬を減量すれば必ずリバウンドを防げるという方法は、現時点で確立されていません。
医療ダイエットの本当の目標は、体重を減らした時点で終わるのではなく、その後も健康的な体重を維持できる状態を目指すことです。
そのため、治療中から食事や運動の習慣を整え、必要に応じて体組成の変化を確認しながら、長期的な体重管理につなげていくことが大切です。
医療ダイエットの副作用とリスクは?安全に治療を受けるための注意点
医療ダイエットを検討している方の中には、「薬を使って痩せるのは身体に悪いのでは?」「副作用が心配」と感じている方もいるでしょう。
近年、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、臨床試験で減量効果が確認され、海外でも肥満治療に広く使用されるようになっています。
しかし、効果が期待できる一方で、副作用や注意すべきリスクもあります。
特に、マンジャロやオゼンピックなどの薬剤では、吐き気、便秘、下痢などの消化器症状が比較的多く報告されています。
また、頻度は高くありませんが、急性膵炎や胆嚢疾患など、速やかな対応が必要な副作用が生じる可能性もあります。
医療ダイエットで大切なのは、副作用を過度に恐れることでも、軽視することでもなく、起こり得る症状を理解して適切に対応することです。
GLP-1・GIP/GLP-1製剤で多い副作用は?
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬で比較的多くみられるのは、胃腸に関係する症状です。
代表的な副作用には、以下のようなものがあります。
| 主な副作用 | 症状の例 |
|---|---|
| 吐き気 | 胃のむかつき、気持ち悪さ |
| 嘔吐 | 食後などに吐いてしまう |
| 便秘 | 排便回数の減少、便が硬くなる |
| 下痢 | 軟便や水様便が増える |
| 腹部膨満感 | お腹が張る、食後に苦しい |
| 腹痛・胃部不快感 | 胃の重さ、腹部の不快感 |
| 食欲低下 | 食事量が大きく減る |
これらの症状は、薬剤の種類や用量、患者さんの体質によって頻度や程度が異なります。
特に、治療開始直後や薬剤を増量したタイミングでは、消化器症状が現れやすい傾向があります。
一方、治療を継続するうちに症状が軽減する方もいます。
ただし、すべての方で副作用が自然に改善するわけではありません。
日常生活に支障が出るほどの症状がある場合には、薬剤の増量を見送る、用量を調整する、休薬・中止を検討するなど、医師による判断が必要です。
吐き気や胃のむかつきが出たときはどうする?
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬による吐き気には、胃の内容物が小腸へ移動する速度が遅くなる作用などが関係しています。
また、薬剤による食欲調節の変化も、消化器症状に関係すると考えられています。
軽い吐き気の場合には、食事の摂り方を工夫することで症状が軽減することがあります。
例えば、以下のような方法が考えられます。
-
1回の食事量を減らし、少量ずつ食べる
-
脂肪分の多い食事や大量の食事を控える
-
満腹になったら無理に食べ続けない
-
食後すぐに横になることを避ける
-
水分を少しずつ、こまめに摂取する
ただし、食事量を減らしすぎると、必要なエネルギーやタンパク質などが不足する可能性があります。
吐き気が続いて十分な食事や水分を摂取できない場合には、単に我慢するのではなく、医師に相談することが大切です。
また、強い腹痛を伴う場合には、急性膵炎などの可能性もあるため、通常の胃腸症状として自己判断しないようにしましょう。
便秘や下痢が起こることもある
医療ダイエットの薬物療法では、便秘や下痢が生じることもあります。
便秘には、食事量の減少、水分摂取量の不足、消化管の運動の変化などが関係する場合があります。
特に、薬剤によって食欲が大きく低下すると、食事量だけでなく、水分や食物繊維の摂取量も減少しやすくなります。
便秘がある場合には、水分摂取や食事内容、身体活動などを見直すことが基本になります。
一方、下痢が続く場合には、脱水に注意が必要です。
頻回の下痢や嘔吐によって身体の水分が不足すると、腎機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
軽度の症状であれば経過をみられる場合もありますが、症状が強い場合や長期間続く場合には医師による評価が必要です。
また、強い腹痛や腹部膨満、嘔吐、排便・排ガスの停止などを伴う場合には、腸閉塞などの可能性もあるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
急性膵炎や胆嚢疾患など、重大な副作用にも注意が必要
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、頻度は高くないものの、重大な副作用が報告されています。
代表的なものが、急性膵炎や胆嚢・胆道系の疾患です。
急性膵炎
急性膵炎は、膵臓に炎症が生じる疾患です。
主な症状には、持続する強い上腹部痛、背中に広がる痛み、吐き気、嘔吐などがあります。
こうした症状が現れた場合には、薬剤の使用を中止し、速やかに医療機関を受診する必要があります。
ただし、薬剤と急性膵炎の因果関係や発症リスクの大きさについては、研究によって評価が異なる部分もあります。
そのため、薬剤を使用すると必ず膵炎のリスクが大きく上昇するという意味ではありませんが、見逃してはいけない症状として知っておくことが重要です。
胆石症・胆嚢炎など
胆石症や胆嚢炎、胆管炎などの胆嚢・胆道系疾患にも注意が必要です。
これらは薬剤の使用に伴って報告されているほか、急激な体重減少そのものが胆石形成のリスクを高める場合があります。
右上腹部の痛み、発熱、黄疸などが現れた場合には、速やかな診察が必要です。
脱水・急性腎障害
強い吐き気や嘔吐、下痢によって水分摂取が不足すると、脱水が生じることがあります。
脱水が重度になると、急性腎障害につながる可能性があります。
特に、もともと腎機能が低下している方や、高齢者では注意が必要です。
低血糖は起こる?糖尿病の薬との併用に注意
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、血糖値が高いときにインスリン分泌を促進するなどの作用を持っています。
そのため、これらの薬剤を単独で使用した場合には、重い低血糖は比較的起こりにくいとされています。
ただし、低血糖のリスクがまったくないわけではありません。
特に、インスリン製剤やスルホニル尿素薬など、低血糖を起こしやすい糖尿病治療薬を併用している場合には注意が必要です。
また、食事量が極端に少ない場合、過度な飲酒、激しい運動なども、低血糖の発生に関係することがあります。
低血糖では、冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、めまい、意識障害などが生じる場合があります。
糖尿病の治療を受けている方は、必ず使用中の薬剤を医師に伝える必要があります。
医療ダイエットで筋肉が減ることもリスクの一つ
医療ダイエットでは、薬剤そのものの副作用だけでなく、減量に伴う身体の変化にも注意が必要です。
特に重要なのが、筋肉を含む除脂肪量の減少です。
体重が大きく減少する際には、体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量も減少することがあります。
これはGLP-1受容体作動薬などに限った現象ではなく、食事制限やその他の減量方法でも生じ得ます。
ただし、薬物療法によって食欲が強く抑えられ、十分な食事を摂取できなくなると、栄養不足につながる可能性があります。
そのため、減量中には次のような対策が重要になります。
-
必要なエネルギーとタンパク質を確保する
-
可能な範囲で筋力トレーニングを行う
-
極端に急激な減量を目指さない
-
体重だけでなく筋力や体組成の変化も確認する
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などの変化を確認する際の参考にしています。
ただし、InBodyは筋肉量を直接測定するものではなく、身体の電気抵抗から体組成を推定する装置です。
そのため、測定条件の影響も考慮しながら、体重や身体機能、食事・運動の状況などと合わせて評価します。
医療ダイエットでは、単に体重を減らすのではなく、できるだけ筋肉を維持しながら健康的に減量することが大切です。
医療ダイエットの薬を使用できない人・注意が必要な人
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、すべての方に適しているわけではありません。
使用前には、既往歴や現在の健康状態、服用中の薬剤などを確認する必要があります。
特に、以下のような場合には注意が必要です。
-
過去に急性膵炎を発症したことがある方
-
重度の胃不全麻痺など、重い消化管障害がある方
-
胆石症や胆嚢炎などの既往がある方
-
脱水や低栄養のリスクが高い方
-
摂食障害が疑われる方
-
妊娠中・授乳中、または妊娠を予定している方
-
薬剤の成分に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方
また、米国ではチルゼパチド製剤について、甲状腺髄様癌の本人・家族歴や多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)がある場合は禁忌とされています。
こうした海外の安全性情報も参考にしながら、使用の適否を判断する必要があります。
なお、すべての注意事項がすべての製剤に共通するわけではありません。禁忌や使用上の注意は、個々の薬剤の国内添付文書などで確認することが重要です。
さらに、GLP-1・GIP/GLP-1製剤では胃内容物の排出が遅くなるため、全身麻酔や深い鎮静を伴う検査・手術を受ける場合には、薬剤を使用していることを事前に医療者へ伝える必要があります。
このような症状が出たら、早めに医療機関へ相談を
薬物療法中に軽度の吐き気や便秘が生じることはありますが、症状によっては速やかな医療対応が必要です。
| 症状 | 考えられる問題・対応 |
|---|---|
| 持続する強い上腹部痛、背部痛、嘔吐 | 急性膵炎などを疑い、薬剤を中止して速やかに受診 |
| 右上腹部痛、発熱、黄疸 | 胆嚢炎・胆管炎などの可能性があり、速やかに受診 |
| 繰り返す嘔吐、水分を摂れない、尿量が少ない | 脱水・腎機能障害の可能性があり、速やかに受診 |
| 強い腹部膨満、腹痛、嘔吐、排便・排ガスの停止 | 腸閉塞などの可能性があり、緊急評価が必要 |
| 呼吸困難、顔や喉の腫れ、全身の強いアレルギー症状 | 重いアレルギー反応の可能性があり、直ちに救急受診 |
軽度の症状であっても、長期間続く場合や徐々に悪化する場合には医師に相談しましょう。
また、副作用が強いにもかかわらず、自己判断で増量したり、他のダイエット薬を追加したりすることは避ける必要があります。
自由診療でも、安全性を重視した治療が大切
日本では、マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されており、糖尿病ではない方への減量目的での使用は承認適応外となります。
一方、有効成分のチルゼパチドは、米国や欧州などで一定の条件を満たす肥満・過体重の成人に対する体重管理にも承認されています。
そのため、チルゼパチドを減量目的で使用すること自体が、医学的根拠のない治療というわけではありません。
ただし、海外で承認されていることと、日本国内で個々の製剤が減量目的に承認されていることは別の問題です。
また、海外の臨床試験では、一定のBMIや健康状態の条件を満たす方を対象としており、すべての体格の方に同じ有効性や安全性が確認されているわけではありません。
当院では、患者さんの健康状態、BMI、体組成、生活背景などを確認し、自由診療による薬物療法も選択肢の一つとして検討しています。
特に、仕事が忙しい方や、食欲のコントロールが難しい方、過去にダイエットを継続できなかった方に対しても、医学的なサポートを提供することを大切にしています。
一方で、減量の医学的な必要性が乏しい場合や、副作用のリスクが利益を上回ると判断される場合には、薬物療法をおすすめしないこともあります。
医療ダイエットは、誰でも薬を使って痩せるためのものではなく、一人ひとりの健康状態や生活に合わせ、安全性にも配慮しながら減量を支援するための選択肢です。
医療ダイエットはどんな人に向いている?治療を検討する目安
医療ダイエットに興味があっても、「自分も治療を受けられるの?」「病気がなくても相談していいの?」と疑問に思う方は少なくありません。
また、仕事が忙しくて運動する時間がない方や、何度もダイエットに挑戦してはリバウンドを繰り返している方もいるでしょう。
医療ダイエットは、すでに肥満に関連する病気を発症している方だけでなく、将来の健康リスクを考えて体重管理に取り組みたい方にとっても、医療機関へ相談するきっかけになります。
ただし、医療ダイエットを相談することと、実際に薬物療法が適していることは別です。
大切なのは、体重の数値だけで判断せず、健康状態や生活習慣、これまでの減量経験などを踏まえて、自分に合った方法を検討することです。
何度もダイエットに失敗している人
医療ダイエットを検討するきっかけの一つが、これまでの食事制限や運動だけでは十分な減量効果が得られなかった場合です。
例えば、次のような経験はないでしょうか。
-
食事制限を始めても、強い空腹感で続かない
-
一度は痩せても、数か月後には体重が戻ってしまう
-
ダイエットを繰り返すうちに、以前より痩せにくくなったと感じる
-
食欲を抑えようとしても、つい食べすぎてしまう
体重管理が難しい背景には、食欲を調節するホルモンやエネルギー消費の変化など、身体の仕組みが関係している場合があります。
特に、減量後には食欲が増加したり、エネルギー消費量が減少したりする生体反応が生じることがあり、減量した体重を維持するのは簡単ではありません。
そのため、ダイエットが続かないことを、単純に本人の努力不足と考えるのは適切ではありません。
医療機関では、これまでの減量経験や生活習慣を確認し、食事療法・運動療法・行動療法などを見直すことができます。
また、医学的に適切と判断される場合には、食欲調節に働きかける薬物療法が選択肢になることもあります。
これまでダイエットを続けられなかった方にとって、医療による支援は、新たな選択肢の一つになり得ます。
仕事が忙しく、食事や運動の管理が難しい人
健康的な体重管理には、食事内容の改善や適度な運動が重要です。
しかし、実際には仕事や家庭の事情によって、十分な時間を確保できない方もいます。
例えば、残業が多く夕食が遅くなる方、外食が中心の方、長時間のデスクワークで活動量が少ない方などです。
このような生活環境では、理想的な食事管理や運動習慣を維持することが難しい場合があります。
一方で、忙しいからといって、将来の健康管理を諦める必要はありません。
医療ダイエットでは、患者さんの生活背景に合わせて、現実的に取り組める方法を検討します。
例えば、毎日ジムに通うことが難しくても、短時間の筋力トレーニングや日常生活での身体活動を増やす方法があります。
食事についても、すべてを自炊する必要はなく、外食やコンビニ食を利用しながら栄養バランスを改善することは可能です。
さらに、体格や健康状態、食欲の問題などを評価したうえで、薬物療法を検討する場合もあります。
医療ダイエットは、生活を大きく変えることが難しい方に対しても、無理なく取り組める体重管理を支援する方法です。
ただし、忙しさだけが薬物療法を開始する医学的な理由になるわけではありません。減量の必要性や治療による利益とリスクを個別に判断する必要があります。
過食や強い食欲によって体重が増えている人
「お腹がいっぱいでも、つい食べてしまう」
「間食をやめようと思っても、なかなかやめられない」
「食事量を減らすと、空腹がつらくて続かない」
このように、食欲のコントロールが難しいと感じている方もいるでしょう。
食欲は、単純に意志の強さだけで決まるものではありません。
脳の食欲調節機構や消化管ホルモン、睡眠、ストレス、食習慣などが複雑に関係しています。
近年では、こうした食欲調節の仕組みに働きかけるGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬が登場しています。
これらの薬剤は、空腹感や満腹感の調節などに作用し、食事摂取量の減少につながることがあります。
そのため、強い食欲によって減量が難しい方では、健康状態や肥満の程度に応じて薬物療法を検討する余地があります。
ただし、「食べすぎてしまう」という症状の背景には、ストレスや生活習慣だけでなく、むちゃ食い障害などの摂食障害が関係している場合もあります。
食行動を自分で制御できない感覚が強い場合や、短時間に大量の食事を繰り返す場合には、摂食障害の評価も重要です。
摂食障害が疑われる方に対して、減量薬だけで問題を解決しようとすることは適切ではありません。
食欲の問題を医学的に評価し、必要に応じて食事・行動面の支援や薬物療法を組み合わせることが大切です。
肥満による健康リスクが気になり始めた人
医療ダイエットを検討する理由は、見た目や体型の変化だけではありません。
肥満は、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな健康問題と関連しています。
特に、内臓脂肪の蓄積は、インスリン抵抗性や脂質代謝異常などと関係しています。
そのため、すでに健康診断で異常を指摘されている方だけでなく、体重や腹囲が増加し続けている方にとっても、早い段階から健康状態を確認することには意味があります。
こうした考え方は、病気を発症してから治療するだけでなく、発症リスクを減らすことを目指す予防医学にもつながります。
ただし、予防医学を目的とするからといって、すべての方に薬物療法が必要になるわけではありません。
健康状態によっては、まず食事・運動・睡眠などの生活習慣を改善することが適切な場合もあります。
重要なのは、現在の体重だけでなく、体重の推移、腹囲、血糖値、血圧、脂質などを総合的に評価することです。
医療ダイエットはBMIいくつから?日本と海外の基準を比較
医療ダイエットを検討する際には、BMIが一つの目安になります。
日本肥満学会では、BMI25以上を「肥満」と定義しています。
一方、米国や欧州では、BMI30以上を肥満、BMI25以上30未満を過体重として扱うことが一般的です。
このように、肥満の判定基準には地域による違いがあります。
また、薬物療法についても、日本と海外では承認条件が異なります。
例えば、チルゼパチドの体重管理目的での承認条件を比較すると、以下のようになります。
| 地域 | チルゼパチドによる体重管理の承認条件 |
|---|---|
| 米国 | BMI30以上、またはBMI27以上で体重関連の合併症が1つ以上 |
| 欧州 | BMI30以上、またはBMI27以上30未満で体重関連の合併症が1つ以上 |
| 日本 | 高血圧・脂質異常症・耐糖能障害などの条件を満たし、BMI27以上で関連健康障害が2つ以上、またはBMI35以上 |
※日本の条件は、2026年5月18日の適応変更後のゼップバウンドの承認条件を要約したものです。食事・運動療法で十分な効果が得られないことなど、ほかにも条件があります。
海外では、一定のBMI以上であれば、糖尿病がなくてもチルゼパチドによる体重管理が正式に承認されています。
特に欧州では、「マンジャロ」という製品名で、2型糖尿病だけでなく体重管理にも承認されています。
一方、日本ではマンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されており、減量目的での使用は承認適応外です。同じ有効成分のゼップバウンドは、一定の条件を満たす肥満症に対して承認されています。
ここで重要なのは、薬剤の承認適応と、実際に公的保険で治療を受けられる条件は必ずしも同じではないということです。
海外でも、薬剤の使用自体が承認されていても、公的医療制度や民間保険による費用負担には別の条件が設けられる場合があります。
ただし、海外で体重管理への使用が承認されているからといって、日本国内の承認条件を満たさないすべての方に、安全性や有効性が確認されているという意味ではありません。
特にBMI27未満の方や、肥満に関連する健康障害のない比較的軽度の肥満の方では、主要な臨床試験の対象集団との違いを考慮する必要があります。
保険適用の条件に当てはまらなくても、医療機関に相談していい?
「健康診断では大きな異常がないけれど、体重が増え続けている」
「肥満症の保険適用条件には当てはまらないけれど、将来の健康が心配」
このような場合でも、医療機関で体重管理について相談することには意味があります。
医療機関への相談は、必ずしも薬物療法を開始することを意味しません。
体重やBMI、体脂肪、腹囲、血圧、血糖値、生活習慣などを確認することで、現在の健康状態や減量の必要性を評価できます。
また、自由診療では、保険診療とは異なる枠組みで医学的な相談や治療を受けることができます。
ただし、自由診療であれば、どのような薬剤でも自由に使用してよいというわけではありません。
国内で承認された適応以外の目的で薬剤を使用する場合には、国内承認薬との違い、期待できる効果、副作用、長期的な安全性の不確実性などを理解したうえで、慎重な医学的判断が必要です。
特に、正常体重の方や医学的な減量の必要性が乏しい方に対して、安易に薬物療法を行うことは適切ではありません。
保険適用の条件を満たさないことと、体重管理の相談をする必要がないことは、同じではありません。
当院では、保険適用の有無だけでなく、患者さんの健康状態や生活背景を踏まえ、適切な体重管理の方法を一緒に検討することを大切にしています。
医療ダイエットが向いていない人もいる?
医療ダイエットは、多くの方にとって体重管理を見直すきっかけになりますが、薬物療法がすべての方に適しているわけではありません。
特に、以下のような場合には、薬剤による減量を慎重に考える必要があります。
-
BMIが標準範囲で、医学的な減量の必要性が乏しい場合
-
すでに低栄養や筋肉量の低下が疑われる場合
-
摂食障害が疑われる場合
-
持病や服用中の薬剤によって副作用のリスクが高い場合
-
短期間で極端に体重を落とすことだけを希望している場合
-
薬剤のリスクや適応外使用について十分な理解が得られない場合
また、体重増加の背景に甲状腺機能低下症などの内分泌疾患や、服用中の薬剤の影響がある場合には、その原因の評価が重要になります。
体重を減らしたいという希望があっても、すぐに減量薬を使用することが最適とは限りません。
まずは健康状態を確認し、薬物療法による利益がリスクを上回るかどうかを判断する必要があります。
自分の生活に合った体重管理を、医療と一緒に考える
健康的な減量には、食事療法や運動療法が重要です。
しかし、すべての方が十分な時間を確保できるわけではなく、強い食欲や生活環境などによって、自己管理だけでは減量が難しいこともあります。
当院では、そうした患者さんの生活背景も踏まえながら、体重管理を支援することを大切にしています。
また、体組成分析装置「InBody」を活用し、体重だけではなく体脂肪量や骨格筋量などの変化も確認できます。
薬物療法を行う場合にも、食事・運動・体組成の変化を評価し、減量後の体重維持まで見据えて取り組むことが重要です。
「忙しくて運動できない」「食事制限が続かない」と一人で悩むのではなく、医学的なサポートを受けながら、自分に合った減量方法を考えることも一つの選択肢です。
医療ダイエットはいつまで続ける?治療期間・薬のやめ方・リバウンド対策
医療ダイエットを検討する際、「どのくらいの期間続ければいいの?」「目標体重まで痩せたら薬をやめられる?」と疑問に思う方も多いでしょう。
特にマンジャロなどの薬物療法では、体重が減少したあとも薬を使い続けなければならないのか、不安に感じる方もいるかもしれません。
実際、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、治療中に体重が減少しても、薬を中止すると食欲が戻り、体重が再び増加する場合があります。
そのため、医療ダイエットでは、単に目標体重まで減量するだけでなく、治療をいつまで続けるか、どのように終了するか、その後の体重をどう維持するかまで考えることが重要です。
医療ダイエットの目標は、一時的に体重を減らすことではなく、減量後も健康的な体重をできるだけ長く維持することです。
医療ダイエットの治療期間はどのくらい?
医療ダイエットの治療期間は、減量の目標や使用する薬剤、体重の変化、健康状態などによって異なります。
例えば、数kgの減量を目指す方と、肥満に関連する健康障害の改善を目的に大幅な減量を必要とする方では、治療の目標や期間が異なります。
また、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、副作用を軽減するために少量から開始し、身体の状態を確認しながら段階的に増量する方法が一般的です。
そのため、治療開始直後から十分な減量効果が得られるとは限りません。
実際、チルゼパチドのSURMOUNT-1試験では72週間、セマグルチドのSTEP 1試験では68週間という長期間にわたって減量効果が評価されています。
ただし、こうした臨床試験の期間が、すべての患者さんに必要な治療期間というわけではありません。
治療期間は、減量効果だけでなく、副作用、費用、生活習慣、本人の希望なども考慮して個別に検討する必要があります。
「医療ダイエットは必ず3か月で終了する」「半年続ければ十分」といった、一律の治療期間が決まっているわけではありません。
目標体重に到達したら、すぐに薬をやめてもいい?
医療ダイエットで目標体重に到達すると、薬物療法を終了したいと考える方もいるでしょう。
しかし、目標体重に到達したことと、その体重を薬なしで維持できることは必ずしも同じではありません。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲や満腹感の調節に働きかけることで、食事摂取量を減らしやすくする薬剤です。
そのため、薬剤を中止すると、その作用が徐々に失われ、以前より空腹を感じやすくなったり、食事量が増えたりする場合があります。
また、減量後には、身体のエネルギー消費が低下したり、食欲を高める方向の生体反応が生じたりすることがあります。
このような変化は、薬物療法の有無にかかわらず、減量後の体重維持を難しくする要因です。
したがって、薬をやめるタイミングは、目標体重だけで判断するのではなく、食欲の状態や食習慣、運動習慣、健康状態などを踏まえて検討することが大切です。
マンジャロをやめるとリバウンドする?臨床試験の結果
チルゼパチドを中止したあとの体重変化を調べた代表的な研究に、SURMOUNT-4試験があります。
この研究では、肥満または過体重の成人に対してチルゼパチドを36週間投与し、その後、薬剤を継続する群とプラセボ(偽薬)に切り替える群に分けて、さらに52週間の体重変化を比較しました。
最初の36週間で、参加者の体重は平均20.9%減少しました。
その後の52週間では、次のような違いが認められました。
| 治療方法 | その後52週間の平均体重変化 |
|---|---|
| チルゼパチド継続群 | さらに5.5%減少 |
| チルゼパチド中止群 | 14.0%増加 |
※中止・継続を決めた時点の体重を基準とした変化率です。中止群が治療前の体重を14%上回ったという意味ではありません。
この結果から、チルゼパチドを中止すると、減量した体重の一部が再び増加しやすいことがわかります。
同様に、セマグルチドを使用したSTEP 1試験の延長研究でも、治療終了から1年後には、それまでに減少した体重のおよそ3分の2が再増加したと報告されています。
ただし、これらの結果は臨床試験に参加した集団の平均値であり、すべての方が同じ割合でリバウンドするわけではありません。
また、試験では比較的高用量の薬剤を長期間使用しており、低用量・短期間の自由診療で同じ結果になるとは限りません。
薬をやめると必ず元の体重に戻るわけではありませんが、中止後に体重が再増加する可能性を考慮しておくことが重要です。
マンジャロは急にやめても大丈夫?段階的に減量する方法との違い
薬物療法を終了する際、「いきなり中止するのはよくないのでは?」「少しずつ薬を減らした方がリバウンドしにくいのでは?」と考える方もいるでしょう。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬については、薬剤を段階的に減量してから中止する方法や、投与間隔を調整する方法などが検討されています。
しかし、現時点では、段階的に減量して中止することで、急に中止する場合よりも長期的なリバウンドを確実に防げるという十分な医学的根拠は確立されていません。
また、これらの薬剤は、離脱症状を防ぐ目的で必ず漸減しなければならない薬剤ではありません。
ただし、糖尿病治療として使用している場合には、薬剤の中止によって血糖コントロールが悪化する可能性があるため、代替治療を含めた医師の判断が必要です。
一方、減量目的で使用している場合には、薬剤を中止したあとに食欲や体重がどのように変化するかを確認することが重要です。
例えば、目標体重に到達した段階で、次のような選択肢を検討することがあります。
| 方法 | 考え方 |
|---|---|
| 薬物療法の継続 | 減量した体重や健康状態を維持するために継続する |
| 維持用量の検討 | 有効性・安全性・忍容性を踏まえ、適切な用量を検討する |
| 薬剤の減量・中止 | 食欲・体重・生活習慣を確認しながら、個別に終了方法を検討する |
| 中止後の経過観察 | 体重再増加を早期に把握し、必要に応じて対策を見直す |
なお、通常の承認用法から外れる投与間隔の延長や、標準化されていない減量方法については、有効性・安全性の根拠が限定的です。
そのため、患者さん自身の判断で投与量や投与間隔を変更することは避ける必要があります。
治療を終了する際には、薬剤の特徴や健康状態、これまでの減量経過を踏まえ、医師と相談しながら方法を検討することが大切です。
リバウンドを防ぐために、治療中から準備しておきたいこと
薬物療法を中止したあとの体重維持には、治療中から生活習慣を整えておくことが重要です。
ただし、食事や運動を十分に管理すれば、必ずリバウンドを防げるというわけではありません。
減量後には食欲やエネルギー消費に関する生体反応が生じるため、生活習慣を改善していても体重が再増加する場合があります。
それでも、長期的な体重管理のためには、次のような取り組みが役立ちます。
① 食事量だけでなく、食事内容を整える
薬剤によって食欲が抑えられている間も、必要なエネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルなどを確保することが重要です。
また、薬剤中止後に食欲が戻った場合に備え、極端な食事制限ではなく、長期間続けられる食事習慣を身につけておくことが望まれます。
② 筋力トレーニングを取り入れる
減量中には、体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量も減少する場合があります。
筋力トレーニングは、減量中の筋力や筋肉量の維持に役立ちます。
毎日ジムに通う必要はありませんが、生活に合わせて継続できる運動習慣をつくることが大切です。
③ 体重や腹囲を定期的に確認する
体重は食事内容や水分量などによって日々変動します。
そのため、1日の体重変化だけで判断せず、一定期間の推移を確認することが重要です。
薬剤を中止したあとも定期的に測定することで、体重再増加の傾向に早めに気づくことができます。
④ 体重が戻り始めたら、早めに対策を見直す
治療終了後に体重が増加した場合、すぐに薬物療法を再開しなければならないわけではありません。
まずは食事内容や活動量、睡眠、生活環境などを振り返り、原因を検討します。
そのうえで、体重増加が続く場合には、医師と相談しながら治療方針を再評価することが大切です。
InBodyで体脂肪や筋肉量を確認しながら、体重維持を目指す
医療ダイエットでは、治療中だけでなく、目標体重に到達したあとも体組成の変化を確認することが役立ちます。
例えば、体重が安定していても、体脂肪量や骨格筋量の推定値が変化している場合があります。
また、薬剤を中止したあとに体重が増加した場合、それが主に体脂肪の増加なのか、水分量などの変動によるものなのかを考えることも重要です。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などの推定値を確認できます。
ただし、InBodyの測定値は水分状態や測定条件に左右されるため、1回の測定結果だけで体脂肪や筋肉の増減を断定することはできません。
できるだけ同じ条件で継続的に測定し、体重や腹囲、食事・運動の状況などと合わせて評価することが重要です。
目標体重に到達したあとも、体重と体組成の変化を確認しながら、無理のない体重維持を目指すことが大切です。
医療ダイエットは、一度痩せたら終わりではない
医療ダイエットで大切なのは、短期間で大きく体重を減らすことだけではありません。
薬物療法によって減量に成功しても、その後の生活習慣や身体の変化によって、体重が再び増加する可能性があります。
そのため、治療開始時から減量後の体重維持について考え、必要に応じて継続的な医学的サポートを受けることが望まれます。
一方で、すべての方が同じ期間、同じ薬剤を使い続けなければならないわけではありません。
治療を継続するか、中止するか、別の方法に切り替えるかは、減量効果や副作用、健康状態、生活背景、本人の希望などを踏まえて個別に判断します。
当院では、薬物療法を含む医療ダイエットを検討する際にも、体重だけでなく体組成や生活習慣を重視し、長期的な体重管理につなげることを大切にしています。
「痩せること」だけでなく、「痩せたあとをどう過ごすか」まで考えることが、医療ダイエットの重要なポイントです。
医療ダイエットの費用は?保険診療と自由診療の違いを解説
医療ダイエットを検討する際、「保険は使えるの?」「マンジャロは自費診療になる?」「治療には毎月どのくらい費用がかかる?」と疑問に思う方も多いでしょう。
日本では、一定の条件を満たす肥満症に対して保険診療で使用できる薬剤がある一方、自由診療で行われる医療ダイエットもあります。
また、同じ有効成分の薬剤であっても、製剤ごとに承認された効能・効果や保険適用の条件が異なる場合があります。
医療ダイエットの費用を考えるうえでは、「薬剤が医学的にどのような目的で使用されるか」と「公的医療保険で費用が負担されるか」を分けて理解することが重要です。
医療ダイエットは保険適用になる?
日本では、すべての医療ダイエットが保険診療で受けられるわけではありません。
例えば、肥満に関連する健康障害があり、医学的に減量が必要と判断される「肥満症」に対しては、食事療法や運動療法などが治療の基本となります。
さらに、一定の条件を満たす患者さんでは、肥満症治療薬が保険診療で使用される場合があります。
日本で肥満症治療薬として承認されている薬剤には、セマグルチド製剤の「ウゴービ」や、チルゼパチド製剤の「ゼップバウンド」などがあります。
ただし、これらの薬剤は、BMIが一定以上であれば誰でも保険診療で使用できるわけではありません。
肥満に関連する健康障害、これまでの食事・運動療法の実施状況、医療機関の施設要件など、複数の条件を満たす必要があります。
また、体重を減らしたいという希望があっても、医学的な治療の必要性が認められない場合には、保険診療の対象とはなりません。
日本の肥満症治療薬には、どのような保険適用条件がある?
肥満症治療薬の保険診療では、薬剤ごとに定められた承認適応や、最適使用推進ガイドラインなどに基づく条件が設けられています。
例えば、ゼップバウンドの肥満症に対する承認適応では、高血圧、脂質異常症、耐糖能障害などの条件に加え、以下のBMI基準が設けられています。
-
BMI27以上で、肥満に関連する健康障害を2つ以上有する場合
-
BMI35以上の場合
ただし、これらのBMI条件を満たすだけで使用できるわけではありません。
食事療法や運動療法によって十分な効果が得られないことなど、追加の条件があります。
また、保険診療で処方する医療機関についても、専門医の配置や治療体制など、一定の要件が定められています。
このように、日本の肥満症治療薬の保険適用には、患者さんの状態だけでなく、医療提供体制に関する条件も関係しています。
つまり、BMIが高いからといって、必ずしも希望する医療機関で保険診療による薬物療法を受けられるわけではありません。
なお、薬剤ごとに承認適応や保険適用条件は異なり、制度も改訂されることがあるため、最新の情報を確認する必要があります。
マンジャロをダイエット目的で使用する場合は自由診療になる?
マンジャロは、有効成分チルゼパチドを含む注射薬で、日本では2型糖尿病の治療薬として承認されています。
そのため、糖尿病ではない方に対して減量を目的に使用する場合は、日本国内で承認された効能・効果とは異なる「適応外使用」に該当します。
このような減量目的での使用は、通常、公的医療保険の対象とならず、自由診療として費用を自己負担することになります。
一方、同じチルゼパチドを有効成分とするゼップバウンドは、日本で肥満症治療薬として承認されています。
両者の大きな違いは、有効成分ではなく、日本国内で承認されている適応や製剤ごとの用法・用量などです。
有効成分が同じだからといって、マンジャロの減量目的での使用が国内で承認されていることにはなりません。
自由診療で適応外使用を行う場合には、期待される効果だけでなく、国内承認薬との違い、副作用、長期的な安全性の不確実性などについて、十分な説明を受けることが重要です。
自由診療による医療ダイエットには、どんな特徴がある?
自由診療とは、公的医療保険を使用せず、患者さんが治療費を自己負担する診療です。
医療ダイエットにおいては、保険診療の対象とならない減量相談や、承認された効能・効果とは異なる目的での薬物療法などが、自由診療として提供されることがあります。
自由診療では、保険診療とは異なる枠組みで、患者さんの希望や生活背景も踏まえた治療方法を検討できるという特徴があります。
例えば、仕事が忙しく十分な運動時間を確保できない方や、食欲のコントロールが難しく、これまでのダイエットを継続できなかった方が、体重管理について医療機関に相談することもできます。
ただし、自由診療だからといって、すべての方に薬物療法が適しているわけではありません。
保険適用の条件を満たさない患者さんに対する薬物療法では、主要な臨床試験の対象集団との違いや、安全性・有効性に関する根拠の限界も考慮する必要があります。
また、持病や服用中の薬剤、摂食障害の可能性などを確認し、治療による利益がリスクを上回るかどうかを慎重に判断することが重要です。
当院では、患者さんの体格や健康状態、生活習慣などを確認し、自由診療による薬物療法も選択肢の一つとして検討しています。
海外では肥満治療の保険適用や承認基準が違う?
肥満治療薬の使用条件や医療費の負担制度は、国や地域によって異なります。
例えば、米国ではチルゼパチド製剤「ゼップバウンド」が、BMI30以上、またはBMI27以上で体重に関連する健康障害を伴う成人の体重管理に承認されています。
欧州では「マンジャロ」という製品名で、2型糖尿病だけでなく、一定の条件を満たす肥満・過体重の方の体重管理にも承認されています。
つまり、海外では糖尿病がなくても、チルゼパチドによる肥満治療が正式な医療として認められています。
一方、実際に公的医療制度や民間保険から費用が支払われるかどうかは、承認適応とは別に定められています。
例えば英国では、マンジャロの体重管理目的での使用自体は承認されていますが、NHSによる提供には、BMIや肥満に関連する疾患、医療提供体制などに応じた条件があります。
このように、薬剤の承認と、保険・公費負担の範囲は必ずしも一致しません。
保険適用にならないことだけを理由に、その治療に医学的な意義がないと判断することは適切ではありません。
ただし、海外で承認されていることを理由に、日本国内での承認適応外使用がすべて正当化されるわけでもありません。
治療の適否は、患者さんの健康状態と利用できる医学的根拠を踏まえて、個別に判断する必要があります。
医療ダイエットの費用は、薬代だけではない
自由診療による医療ダイエットでは、医療機関や治療内容によって費用が異なります。
特に薬物療法を行う場合、薬剤の種類や用量、治療期間によって総額が変わります。
また、医療機関によっては、薬代以外に診察料や検査費用などが必要になる場合があります。
治療前に確認しておきたい主な費用は、以下のとおりです。
| 費用の項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 初診料・再診料 | 医師による診察や健康状態の確認 |
| 薬剤費 | 薬剤の種類・用量・処方量によって異なる |
| 血液検査費用 | 必要に応じた血糖値・肝機能・腎機能などの確認 |
| 体組成測定費用 | InBodyなどによる体脂肪量・骨格筋量の評価 |
| その他 | 医療機関によっては指導料や配送費など |
※実際に必要な項目や費用は医療機関によって異なります。
また、薬剤を増量すると費用が変わる場合があるほか、長期間治療を続ける場合には、継続的な経済的負担も考える必要があります。
そのため、1回あたりの薬代だけでなく、治療期間全体でどの程度の費用が必要になるかを確認することが大切です。
費用だけでなく、治療内容や安全管理も確認しよう
医療ダイエットを選ぶ際、費用は重要な判断材料の一つです。
ただし、同じ薬剤を使用する場合でも、診察や検査、治療中のフォローアップなどの内容は医療機関によって異なります。
特に、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、吐き気、便秘、下痢などの副作用が生じることがあります。
また、体重が減少していても、食事摂取量が極端に少なくなっていたり、筋肉量が大きく減少していたりする場合には、治療内容の見直しが必要になることもあります。
そのため、薬剤の費用だけではなく、次のような点も確認するとよいでしょう。
-
治療開始前に健康状態や既往歴を確認しているか
-
薬剤の効果だけでなく、副作用や適応外使用について説明があるか
-
必要に応じて検査や体組成評価を行えるか
-
治療中の副作用や体重の変化について相談できるか
-
目標体重に到達したあとの維持や、薬剤の中止についても相談できるか
医療ダイエットは、単に薬を購入することとは異なります。
薬剤の価格だけでなく、医学的な評価と継続的なサポートを含めて治療方法を選ぶことが重要です。
自分に合った方法を、費用も含めて無理なく考える
医療ダイエットでは、希望する減量目標や健康状態、生活習慣、使用する薬剤などによって、必要な治療内容が異なります。
大きな減量が必要な方もいれば、まずは数%程度の減量や生活習慣の改善を目指すことが適切な方もいます。
また、薬物療法を行う場合にも、副作用や費用、治療期間などを考慮する必要があります。
当院では、体重だけではなく体脂肪量や骨格筋量などの変化にも注目しながら、患者さんの生活背景に合わせた医療ダイエットを検討しています。
仕事が忙しく、食事や運動の管理を十分に行うことが難しい方でも、無理のない方法を一緒に考えることができます。
医療ダイエットは、保険診療か自由診療かという違いだけで判断するものではありません。健康状態、治療効果、安全性、費用、そして継続のしやすさを総合的に考えることが大切です。
医療ダイエットを始めるには?初診から治療開始までの流れ
「医療ダイエットに興味はあるけれど、初診では何をするの?」
「マンジャロなどの薬は、診察を受けた当日から使える?」
「血液検査やInBody測定は必要?」
初めて医療ダイエットを検討する方の中には、このような疑問を持つ方も多いでしょう。
医療ダイエットでは、単に体重を確認して薬を処方するのではなく、患者さんの健康状態や生活習慣、これまでの減量経験などを評価することが重要です。
また、減量が必要な理由や目標体重、薬物療法による利益とリスクは、一人ひとり異なります。
そのため、まずは現在の身体の状態を把握し、無理なく続けられる治療方法を検討することが、医療ダイエットの第一歩となります。
ここでは、医療ダイエットを始める際の一般的な診療の流れについて解説します。
① 初診・カウンセリング|体重の悩みや生活習慣を確認する
医療ダイエットでは、まず現在の体重や体型に関する悩み、希望する減量目標などを確認します。
例えば、同じ「5kg痩せたい」という希望でも、患者さんによって背景は異なります。
-
仕事が忙しく、食事や運動の管理が難しい
-
強い食欲があり、食事量を減らせない
-
過去に何度もダイエットとリバウンドを繰り返している
-
健康診断で体重や腹囲の増加を指摘された
-
将来の生活習慣病を予防したい
このような生活背景や減量の目的を確認することで、患者さんに合った体重管理の方法を考えやすくなります。
また、診察では、現在の健康状態や既往歴、服用中の薬剤などについても確認します。
特に、糖尿病や膵炎、胆嚢疾患、重い消化管疾患などの既往がある場合には、薬物療法の選択に影響することがあります。
さらに、体重増加の背景に、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患や、服用中の薬剤の影響が関係している場合もあります。
そのため、体重が増えた理由をすべて食べすぎや運動不足と決めつけず、必要に応じて医学的な評価を行うことが重要です。
医療ダイエットの初診は、単に薬を選ぶためではなく、体重が増加した背景や減量の必要性を確認する機会でもあります。
② BMI・InBody測定|体重だけでなく体脂肪や筋肉量も評価する
医療ダイエットを始める際には、現在の体重やBMIを確認することが基本となります。
BMIは、身長と体重から計算される体格指数で、日本では25以上を肥満と定義しています。
ただし、BMIだけで体脂肪の蓄積や筋肉量を正確に判断できるわけではありません。
例えば、同じ身長・体重でも、筋肉量が多い方と体脂肪が多い方では、身体の状態が異なります。
そこで、体重に加えて体組成を評価することも役立ちます。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しています。
InBodyでは、主に以下のような項目を推定できます。
| 評価項目 | わかること |
|---|---|
| 体重 | 現在の身体全体の重さ |
| BMI | 身長に対する体重の割合 |
| 体脂肪量 | 身体に含まれる脂肪の推定量 |
| 体脂肪率 | 体重に占める体脂肪の割合 |
| 骨格筋量 | 身体を動かす骨格筋の推定量 |
| 部位別筋肉量 | 腕・脚・体幹などの筋肉量の推定値 |
※測定できる項目はInBodyの機種によって異なります。
このような情報を確認することで、単に体重を減らすだけでなく、筋肉量の維持にも配慮した減量目標を考えることができます。
ただし、InBodyは生体電気インピーダンス法を用いて体組成を推定する装置であり、測定値は水分状態や食事、運動などの影響を受けます。
そのため、数値を絶対的なものとして判断せず、腹囲や健康状態などと合わせて評価することが重要です。
体重が何kgあるかだけでなく、身体の中身がどのような状態なのかを確認することが、適切な減量計画につながります。
③ 必要に応じた血液検査|健康状態や薬物療法のリスクを確認する
医療ダイエットを始める際には、健康状態や既往歴などに応じて血液検査を検討することがあります。
特に、肥満に関連する生活習慣病が疑われる場合や、薬物療法の安全性を評価する必要がある場合には、検査が役立ちます。
代表的な検査項目には、以下のようなものがあります。
| 検査項目 | 主に確認すること |
|---|---|
| 血糖値・HbA1c | 糖代謝異常や糖尿病の有無 |
| AST・ALTなど | 肝機能や脂肪肝を疑う所見 |
| クレアチニン・eGFR | 腎機能 |
| LDL・HDLコレステロール、中性脂肪 | 脂質異常の有無 |
| TSH・遊離T4 | 甲状腺疾患が疑われる場合の評価 |
ただし、すべての患者さんに同じ血液検査が必要というわけではありません。
例えば、健康診断で最近検査を受けている方では、その結果を参考にできる場合があります。
一方、体重増加の原因として内分泌疾患が疑われる場合や、持病がある場合には、追加の検査が必要になることもあります。
また、薬剤の使用前に必ず膵酵素などを一律に測定しなければならないというわけではなく、症状や既往歴に応じて判断します。
検査の目的は、単に薬を使用できるかどうかを確認するだけでなく、現在の健康状態を把握し、適切な減量方法を考えることです。
④ 治療方法の選択|食事・運動・薬物療法をどう組み合わせる?
診察や身体の評価を行ったあとは、患者さんの減量目標や生活習慣に合わせて治療方法を検討します。
医療ダイエットには、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法などの選択肢があります。
例えば、間食や甘い飲み物の摂取が体重増加に関係している場合には、食生活を見直すことが重要です。
一方、仕事が忙しく運動時間を確保しにくい場合には、短時間の筋力トレーニングや日常生活での身体活動を増やす方法を検討できます。
また、強い空腹感や食欲によって食事管理が難しい方では、BMIや健康状態、治療上のリスクなどを評価したうえで、薬物療法を検討することもあります。
当院では、マンジャロなどのGIP/GLP-1受容体作動薬や、GLP-1受容体作動薬を用いた自由診療も選択肢としています。
ただし、日本で2型糖尿病治療薬として承認されているマンジャロを減量目的で使用する場合は、国内承認適応外となります。
そのため、効果や副作用だけでなく、承認された肥満症治療薬との違いや、臨床研究で確認されている対象・用量との違いについても理解することが重要です。
また、薬物療法が適していないと判断される場合には、食事・運動などを中心とした体重管理を提案することもあります。
医療ダイエットでは、最初から薬を使用することを前提とせず、患者さんにとって利益とリスクのバランスが取れた方法を選ぶことが大切です。
⑤ 治療開始|薬の使用方法と副作用を理解する
薬物療法を行う場合には、使用する薬剤の特徴や投与方法、副作用などについて説明を受けます。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬には、週1回の注射薬、毎日使用する注射薬、内服薬などがあります。
また、薬剤によって使用方法や用量調整の方法が異なります。
例えば、マンジャロは週1回の皮下注射製剤であり、国内で承認されている2型糖尿病の用法では、通常2.5mgから開始し、4週間投与したあとに5mgへ増量します。
ただし、これは2型糖尿病に対する承認用法であり、減量目的での適応外使用における有効性や安全性が、すべての用量・体格で同様に確認されているという意味ではありません。
また、薬物療法では、吐き気、便秘、下痢などの消化器症状が生じることがあります。
そのため、治療開始時には、主に次のような内容を理解しておくことが大切です。
-
薬剤の使用方法や投与頻度
-
期待される効果と個人差
-
よくある副作用と対処方法
-
速やかな受診が必要となる症状
-
投与を忘れた場合の対応
-
治療の継続・中止についての考え方
なお、初診当日に治療を開始できるかどうかは、診察結果や必要な検査、薬剤の適否などによって異なります。
患者さんが効果とリスクを理解し、納得したうえで治療を始めることが重要です。
⑥ 治療開始後のフォローアップ|体重・副作用・体組成を確認する
医療ダイエットは、薬を処方したら終わりではありません。
治療開始後には、体重の変化や副作用、食事・運動の状況などを確認し、必要に応じて治療内容を見直すことが重要です。
特に薬物療法の開始直後や増量時には、吐き気や便秘などの消化器症状が現れることがあります。
そのため、症状が強い場合には、増量を見送る、用量を見直す、休薬・中止を検討するなど、医師による判断が必要になることもあります。
また、体重が減少していても、食事量が極端に少なくなっている場合には注意が必要です。
減量中には体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量が減少する場合があるため、必要な栄養を確保し、運動を継続できているかを確認することも大切です。
InBodyによる体組成測定も、減量中の変化を評価する参考になります。
ただし、InBodyの推定値は測定条件の影響を受けるため、1回の数値だけで治療の効果を判断することはできません。
また、再診の頻度は使用する薬剤や副作用の有無、患者さんの健康状態などによって異なります。
医療ダイエットでは、体重が減っているかだけでなく、安全に減量できているかを継続的に確認することが重要です。
⑦ 目標体重に到達したあと|治療終了と体重維持を考える
目標体重に到達すると、「薬をやめてもいいの?」「また太ってしまわない?」という疑問が生じることがあります。
実際、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、薬剤を中止すると食欲が戻り、体重が再び増加する場合があります。
そのため、目標体重に到達したあとも、食事や運動の習慣を維持し、体重の推移を確認することが重要です。
また、薬剤を継続するか、中止するか、どのように終了するかは、減量の経過や健康状態、副作用、費用などを踏まえて個別に検討します。
段階的に薬剤を減量する方法についても研究されていますが、漸減によってリバウンドを確実に防げるという十分な医学的根拠は、現時点では確立されていません。
そのため、患者さん自身の判断で用量や投与間隔を変更することは避ける必要があります。
当院では、体重だけでなく体組成や生活習慣にも注目し、減量後の体重管理まで見据えた医療ダイエットを大切にしています。
医療ダイエットは、目標体重に到達することだけがゴールではありません。減量後も健康的な体重を維持できるよう、長期的な視点で取り組むことが大切です。
まずは自分の身体の状態を知ることから始めよう
医療ダイエットを始める際には、最初から使用する薬剤や目標体重を決める必要はありません。
まずは現在の体重や体組成、健康状態、生活習慣などを確認し、どのような減量方法が適しているかを考えることが重要です。
仕事が忙しい方や、過去にダイエットを続けられなかった方でも、生活に合わせた体重管理の方法を検討することはできます。
当院では、医師による診察に加え、InBodyを活用した体組成評価を取り入れながら、患者さん一人ひとりに合った医療ダイエットを検討しています。
薬物療法についても、期待される効果だけでなく、副作用や適応外使用に関する注意点を確認したうえで、使用の適否を判断します。
「何度もダイエットに失敗している」「食欲のコントロールが難しい」「将来の健康が気になる」という方は、一人で悩まず、医療機関で体重管理について相談することも一つの選択肢です。
医療ダイエットで失敗しないために|治療前に知っておきたいポイント
医療ダイエットを検討する際、「本当に痩せられるのか」「副作用は大丈夫なのか」「薬をやめたらリバウンドしないか」など、不安に感じることもあるでしょう。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬の登場によって、従来の食事療法や運動療法だけでは十分な減量が難しかった方にも、新たな治療の選択肢が生まれています。
しかし、薬物療法を行えば、誰でも同じように体重が減るわけではありません。
また、短期間で大きく減量することが、必ずしも健康的な結果につながるとは限りません。
医療ダイエットで大切なのは、自分の身体や生活習慣に合った目標を設定し、治療による効果とリスクを理解したうえで、長期的な体重管理に取り組むことです。
ここでは、治療を始める前に知っておきたいポイントを整理します。
① 短期間で急激に痩せることだけを目標にしない
医療ダイエットでは、「1か月で10kg痩せたい」「できるだけ早く目標体重に到達したい」と考える方もいるでしょう。
しかし、減量の速度が速ければ速いほどよいというわけではありません。
極端な食事制限によって摂取エネルギーが不足すると、体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量も減少する可能性があります。
また、急激な体重減少は胆石形成のリスクを高める場合があり、食事摂取量が極端に少ない状態では、脱水や栄養不足にも注意が必要です。
特に、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬によって食欲が大きく低下した場合、本人が意識しないうちに食事量が過度に減少してしまうこともあります。
そのため、体重が順調に減っている場合でも、十分な栄養を摂取できているか、体調に問題がないかを確認することが重要です。
また、目標とする減量率や減量期間は、もともとのBMIや体脂肪量、健康状態などによって異なります。
医療ダイエットでは、できるだけ早く痩せることよりも、安全性に配慮しながら適切なペースで減量することが大切です。
② 他の人と減量効果を比較しすぎない
SNSやインターネットでは、「マンジャロで1か月に5kg痩せた」「3か月で10kg以上減量できた」といった体験談を目にすることがあります。
しかし、こうした情報をそのまま自分に当てはめることはできません。
減量効果は、もともとの体重やBMI、薬剤の種類、使用量、治療期間、生活習慣などによって異なります。
例えば、体重100kgの方が5kg減量した場合と、体重60kgの方が5kg減量した場合では、もとの体重に対する減少率が異なります。
また、治療開始直後には、食事量の減少に伴う水分量や消化管内容物の変化などによって、体重が大きく変動する場合もあります。
そのため、短期間の体重変化だけで、体脂肪がどの程度減少したのかを正確に判断することはできません。
臨床試験で報告される平均減量率についても、試験に参加した患者さんのBMI、薬剤の用量、治療期間などを考慮して理解する必要があります。
大切なのは、他の人と何kg痩せたかを比較することではなく、自分自身の健康状態や体組成がどのように変化しているかを確認することです。
③ 体重だけでなく、体脂肪と筋肉量にも注目する
ダイエットでは、体重計の数字が減ることに意識が向きやすいものです。
しかし、体重が減少していても、必ずしも体脂肪だけが減っているとは限りません。
減量中には、体脂肪とともに筋肉を含む除脂肪量が減少することがあります。
特に、食事量が極端に少ない場合や、運動習慣がない場合には、筋肉量の維持にも配慮する必要があります。
筋肉は身体を動かすだけでなく、姿勢の維持や糖代謝などにも関係する重要な組織です。
そのため、医療ダイエットでは、体重の減少だけでなく、筋力や身体機能をできるだけ保つことも大切になります。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しています。
InBodyでは、体脂肪量や骨格筋量などを推定できるため、減量中の身体の変化を確認する際の参考になります。
ただし、InBodyの数値は水分状態や測定条件によって変動するため、1回の測定結果だけで筋肉や体脂肪の増減を判断することは適切ではありません。
可能な範囲で測定条件をそろえ、体重、腹囲、筋力、食事・運動の状況などと合わせて評価することが重要です。
「体重が減ったか」だけでなく、「体脂肪と筋肉量がどのように変化しているか」にも目を向けることが、健康的な減量につながります。
④ 薬を使用していても、食事と運動は大切
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲や満腹感の調節に働きかけることで、食事摂取量の減少を支援する薬剤です。
そのため、これまで空腹感が強く、食事制限を続けることが難しかった方にとって、薬物療法が役立つ場合があります。
ただし、薬によって食欲が低下したからといって、食事内容をまったく気にしなくてよいわけではありません。
食事量が大幅に減少すると、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素が不足する可能性があります。
また、運動不足が続いている場合には、減量中の筋力や筋肉量の維持が難しくなることもあります。
一方で、医療ダイエットを始めたからといって、毎日ジムに通ったり、厳しい食事制限を行ったりする必要があるわけではありません。
例えば、普段の食事にタンパク質を含む食品を取り入れる、甘い飲み物を減らす、短時間の筋力トレーニングを行うなど、生活に合わせた方法から始めることができます。
仕事や家庭の事情で十分な時間を確保できない方でも、少しずつ改善できる部分はあります。
医療ダイエットでは、薬を使用することと生活習慣を改善することを対立させず、両方を無理のない範囲で組み合わせることが重要です。
⑤ 副作用を我慢せず、医師に相談する
医療ダイエットで使用される薬剤には、期待される効果だけでなく、副作用もあります。
特にGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、吐き気、便秘、下痢、腹部膨満感などの消化器症状が比較的多くみられます。
これらの症状は、治療開始直後や増量時に生じやすく、時間の経過とともに軽減する場合もあります。
しかし、症状が強い場合や、食事・水分を十分に摂取できない場合には、治療内容の見直しが必要になることがあります。
また、持続する強い上腹部痛や背部痛、繰り返す嘔吐などがある場合には、急性膵炎などの重大な副作用の可能性も考える必要があります。
このような症状が現れた場合には、薬剤の使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
一方で、体重が思うように減らないからといって、自己判断で薬剤の用量を増やすことも避ける必要があります。
薬剤の増量は、効果だけでなく副作用の程度や健康状態などを踏まえて判断するものです。
医療ダイエットでは、副作用を我慢して治療を続けることよりも、安全に継続できる方法を検討することが大切です。
⑥ 薬をやめたあとの体重維持まで考えておく
医療ダイエットを始める際には、目標体重に到達したあとのことも考えておく必要があります。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬では、治療中に体重が減少しても、薬剤を中止すると食欲が戻り、体重が再び増加する場合があります。
チルゼパチドを用いたSURMOUNT-4試験では、減量後に薬剤を中止した群で、体重の再増加が認められました。
また、その後の解析では、体重再増加が大きかった方ほど、血圧や糖代謝などの改善が失われやすいことも報告されています。
このことからも、減量後の体重管理は重要であると考えられます。
ただし、薬物療法を行った方が、必ずしも生涯にわたって同じ薬を使用しなければならないという意味ではありません。
治療を継続するか、中止するかは、減量の経過や健康状態、副作用、費用、患者さんの希望などによって個別に検討する必要があります。
また、薬剤を少しずつ減量してから中止すれば必ずリバウンドを防げる、という方法は現時点で確立されていません。
そのため、治療中から食事・運動習慣を整え、目標体重に到達したあとも定期的に体重や健康状態を確認することが大切です。
医療ダイエットは、目標体重まで減量して終わるものではなく、その後の健康管理まで考えて取り組むことが重要です。
⑦ 自分に合った治療方法を選ぶ
医療ダイエットには、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法など、さまざまな方法があります。
また、薬物療法に使用される製剤にも、作用機序、投与方法、使用頻度、承認適応などの違いがあります。
そのため、インターネット上の体験談や、薬剤の減量効果だけで治療方法を決めることは適切ではありません。
例えば、減量効果が大きい薬剤であっても、副作用によって継続が難しい場合があります。
また、国内で承認された効能・効果以外の目的で使用する場合には、臨床試験で確認された対象集団との違いや、適応外使用に伴う注意点なども理解する必要があります。
自由診療では、患者さんの希望や生活背景も踏まえて治療方法を検討できますが、すべての方に薬物療法が適しているわけではありません。
特に、医学的な減量の必要性が乏しい場合や、薬剤の副作用によるリスクが利益を上回る場合には、薬物療法以外の方法を優先することもあります。
治療方法を選ぶ際には、期待できる減量効果だけでなく、安全性、費用、生活への負担、継続のしやすさまで含めて考えることが大切です。
医療ダイエットは、無理なく体重管理に取り組むための選択肢
健康的な体重管理には、食事療法や運動療法が重要です。
しかし、仕事が忙しくて運動する時間がない方や、強い食欲によって食事制限を続けることが難しい方もいます。
また、何度もダイエットに挑戦してはリバウンドを繰り返し、自分だけでは体重管理が難しいと感じている方もいるでしょう。
体重管理がうまくいかない背景には、生活環境だけでなく、食欲調節やエネルギー代謝などの身体の仕組みが関係している場合もあります。
そのため、減量が続かないことを、単純に本人の努力不足と考える必要はありません。
当院では、患者さんの健康状態や生活背景を踏まえ、食事・運動の改善に加えて、医学的に適切と判断される場合には、自由診療による薬物療法も選択肢として検討しています。
また、InBodyによる体組成評価を活用し、体重だけでなく、体脂肪量や骨格筋量などの変化にも注目しています。
大切なのは、薬を使って短期間で痩せることだけではありません。
自分の身体を理解し、無理なく続けられる方法で減量に取り組み、その後も健康的な体重を維持していくことが、医療ダイエットの目指すところです。
まとめ|医療ダイエットは、無理なく健康的な減量を目指すための選択肢
医療ダイエットは、医学的な評価に基づき、食事療法・運動療法・必要に応じた薬物療法などを組み合わせながら、体重管理を支援する方法です。
近年では、マンジャロなどのGIP/GLP-1受容体作動薬や、オゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬が登場し、食欲のコントロールが難しい方にとっても新たな選択肢が生まれています。
ただし、薬剤の使用には副作用や適応外使用に伴う注意点があり、すべての方に適しているわけではありません。
医療ダイエットで特に大切なのは、次の7つのポイントです。
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医学的な評価:BMIだけでなく、体脂肪・筋肉量・健康状態などを総合的に確認する
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生活に合った方法:仕事や生活環境を考慮し、無理なく継続できる方法を選ぶ
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薬物療法の適切な活用:効果と副作用を理解し、医学的に適切な場合に検討する
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食事・運動の継続:薬物療法中も栄養バランスや身体活動を大切にする
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体組成の評価:体重だけでなく、体脂肪量や骨格筋量の変化にも注目する
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安全性の確認:副作用や体調の変化を確認し、必要に応じて治療を見直す
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減量後の体重維持:薬剤の終了後も見据え、長期的な体重管理に取り組む
医療ダイエットは、単に短期間で体重を減らすための治療ではありません。
肥満に関連する健康リスクを減らすことを目指す予防医学の視点も大切であり、生活習慣病を発症する前から体重管理に取り組むことにも意味があります。
また、ダイエットが続かない背景には、食欲を調節するホルモンや身体の代謝、仕事や家庭などの生活環境が関係する場合があります。
食事制限や運動だけで減量を続けることが難しい方にとって、医療のサポートを受けることも一つの選択肢です。
大阪・本町で医療ダイエットをお考えの方へ
アンバー大阪メンズクリニックでは、患者さんの健康状態や生活背景を踏まえ、無理なく取り組める医療ダイエットを大切にしています。
当院では、マンジャロなどを用いた自由診療による薬物療法も選択肢として検討しており、体組成分析装置「InBody」を活用した体脂肪量・骨格筋量などの評価にも対応しています。
薬物療法については、国内での承認状況や適応外使用に伴う注意点、副作用などを説明し、診察のうえで使用の適否を判断します。
「何度もダイエットに失敗している」
「仕事が忙しく、食事や運動の管理が難しい」
「食欲をコントロールすることができず、体重が増えてしまう」
「将来の健康を考えて、今から体重管理を始めたい」
このようなお悩みがある方は、まずはお気軽にご相談ください。
一人ひとりの身体と生活に合った方法で、健康的な減量と長期的な体重管理を目指しましょう。
医師からひとこと
ダイエットというと、食事制限や運動を頑張るものというイメージが強いかもしれません。
もちろん、食事や運動は健康的な体重管理の基本です。しかし、仕事が忙しくて十分な時間を確保できない方や、強い食欲によって食事制限が続かない方も少なくありません。
体重管理が難しい背景には、生活環境だけでなく、食欲を調節するホルモンや身体の代謝なども関係しています。
私は、減量がうまくいかないことを、単純に本人の努力不足として考えるべきではないと思っています。
近年では、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬など、医学的に減量を支援する選択肢も増えてきました。
こうした薬剤には副作用や使用上の注意点があり、すべての方に適しているわけではありませんが、適切に活用することで減量の助けになる場合があります。
また、当院ではInBodyによる体組成評価も重視しています。単に体重を減らすだけでなく、できるだけ筋肉量を維持しながら体脂肪を減らし、その後の体重維持まで考えることが大切です。
「食事制限や運動を続けられないから仕方がない」と諦めるのではなく、医療のサポートを受けることも選択肢の一つとして考えていただければと思います。
アンバー大阪メンズクリニックでは、一人ひとりの健康状態や生活背景に合わせ、無理なく取り組める体重管理を一緒に考えていきたいと思っています。
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参考文献
肥満症の診断・治療と生活習慣
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日本肥満学会公式サイト -
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-
Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387(3):205–216.
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治療中止後の体重維持・リバウンド
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Aronne LJ, et al. Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial. JAMA. 2024;331(1):38–48.
https://doi.org/10.1001/jama.2023.24945 -
Wilding JPH, et al. Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extension. Diabetes Obes Metab. 2022;24(8):1553–1564.
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海外における承認・治療基準
-
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EMA公式サイト -
U.S. Food and Drug Administration(FDA).ZEPBOUND(tirzepatide)Prescribing Information.
FDA公式サイト
国内の承認情報・安全性
-
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).マンジャロ皮下注:電子添文・医薬品情報.
PMDA医療用医薬品情報検索 -
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).ゼップバウンド皮下注:電子添文・医薬品情報.
PMDA医療用医薬品情報検索 -
厚生労働省.医療法における病院等の広告規制について.医療広告ガイドライン及び関連資料.
厚生労働省公式サイト

