なぜ太る?肥満の原因と痩せにくくなる仕組みを医師が解説
2026/10/26
なぜ太る?肥満が起こる基本的な仕組み
太るのは食べすぎや運動不足だけが原因ではない
「以前と同じ食事をしているのに、最近太りやすくなった」
「食事量を減らしているつもりなのに、なかなか痩せない」
「周りの人と同じくらい食べているのに、自分だけ体重が増える」
このような疑問を持ったことはないでしょうか。
一般的に、肥満の原因といえば「食べすぎ」や「運動不足」が思い浮かぶかもしれません。
確かに、食事から摂取するエネルギーと、身体が消費するエネルギーのバランスは、体重の増減を決める重要な要素です。
しかし、体重が増える理由を、単純に食べすぎや運動不足だけで説明することはできません。
私たちの身体では、脳や消化管、脂肪組織などが連携し、食欲やエネルギー消費を調節しています。
さらに、睡眠、ストレス、年齢、遺伝的な体質、生活環境なども体重管理に関係しています。
そのため、同じような食生活を送っていても、体重の変化には個人差があります。
肥満の仕組みを理解するためには、まず身体のエネルギーバランスについて知ることが大切です。
体重が増える基本的な仕組みは「エネルギーバランス」
私たちは毎日、食事や飲み物からエネルギーを摂取しています。
一方、身体は呼吸や心臓の拍動、体温の維持、消化吸収、歩行、運動など、さまざまな活動でエネルギーを消費しています。
体重の変化には、こうした摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが大きく関係しています。
基本的な考え方は次のとおりです。
| エネルギーバランス | 身体に起こる変化 |
|---|---|
| 摂取エネルギー > 消費エネルギー | 余剰エネルギーが蓄積され、長期的には体重が増加しやすい |
| 摂取エネルギー ≒ 消費エネルギー | 長期的には体重が維持されやすい |
| 摂取エネルギー < 消費エネルギー | 身体のエネルギー貯蔵が使われ、長期的には体重が減少しやすい |
例えば、毎日の生活で消費するエネルギーよりも、食事から摂取するエネルギーが多い状態が長期間続くと、余ったエネルギーの一部は体脂肪として蓄積されます。
反対に、摂取エネルギーが消費エネルギーを下回る状態が続くと、身体は蓄えられたエネルギーを利用するようになり、体重が減少します。
ただし、人間の身体は単純な計算式だけで動いているわけではありません。
体重が変化すると消費エネルギー量も変わるほか、食欲や身体活動量が無意識のうちに変化することがあります。
そのため、摂取カロリーを一定量減らせば、誰でも同じ速度で体重が減り続けるというわけではありません。
エネルギーバランスは体重変化の基本ですが、そのバランス自体が身体の仕組みや生活環境によって左右されているのです。
消費エネルギーは運動だけで決まるわけではない
「運動していないから太る」と考える方もいるかもしれません。
しかし、私たちの身体が消費するエネルギーは、運動によるものだけではありません。
1日の総エネルギー消費量は、主に次の3つで構成されています。
① 安静時のエネルギー消費
呼吸、心臓の拍動、体温の維持、臓器の働きなど、生命活動を維持するために必要なエネルギーです。
日常的には「基礎代謝」という言葉で説明されることもありますが、厳密には基礎代謝量と安静時代謝量は測定条件が異なります。
② 身体活動によるエネルギー消費
ウォーキングや筋力トレーニングなどの運動に加え、通勤、家事、階段の上り下り、立っている時間なども含まれます。
こうした日常生活の活動によるエネルギー消費も、体重管理に関係しています。
③ 食事誘発性熱産生
食事を摂取したあと、栄養素の消化・吸収・代謝などに伴って消費されるエネルギーです。
これらを合計したものが、1日の総エネルギー消費量になります。
例えば、デスクワークが中心の方では、運動する時間だけでなく、日常生活の活動量が少ないことも消費エネルギーの減少につながる場合があります。
また、体格や身体組成、年齢などによって安静時のエネルギー消費量も異なります。
そのため、同じ量の食事をしていても、すべての方が同じように体重を維持できるとは限りません。
余ったエネルギーは、なぜ体脂肪として蓄積される?
食事から摂取した糖質、脂質、タンパク質などの栄養素は、身体を動かしたり、細胞や組織を維持したりするために利用されます。
一方、摂取したエネルギーが消費量を上回る状態が続くと、身体は余剰のエネルギーを蓄積します。
その主要な貯蔵場所の一つが脂肪組織です。
脂肪組織では、エネルギーが主に中性脂肪として蓄えられます。
体脂肪は、単に不要なものというわけではありません。
エネルギーの貯蔵、臓器の保護、体温の維持などに役立つほか、身体の代謝や食欲に関係するさまざまな物質を分泌しています。
しかし、体脂肪が過剰に蓄積すると、健康上の問題につながる場合があります。
特に、内臓の周囲に蓄積する内臓脂肪は、インスリン抵抗性や脂質代謝異常などと関係しています。
そのため、医学的な体重管理では、単に体重を減らすだけでなく、過剰な体脂肪の蓄積を改善することが重要になります。
体重が増えやすい環境も、肥満に関係している
肥満は、個人の食事量や運動習慣だけでなく、日常生活を取り巻く環境とも関係しています。
例えば、現代では高カロリーの食品や飲み物を手軽に購入できる一方、仕事や生活の中で身体を動かす機会が減っています。
また、長時間のデスクワーク、外食の増加、不規則な勤務、睡眠時間の不足なども、体重管理を難しくする要因になり得ます。
特に、仕事が忙しい方では、栄養バランスを考えながら食事を準備したり、毎日十分な運動時間を確保したりすることが難しい場合もあるでしょう。
さらに、ストレスや睡眠不足は食欲や食行動にも影響するため、本人が意識している以上に食事量が増えてしまうこともあります。
このように、肥満には個人の生活習慣と社会的・環境的な要因が複雑に関係しています。
体重管理が難しいことを、単純に意志の弱さや努力不足だけの問題として捉えるのは適切ではありません。
身体には体重を調節しようとする仕組みがある
私たちの身体には、エネルギーの不足や蓄積の状態を感知し、食欲や消費エネルギーを調節する仕組みがあります。
例えば、脂肪組織から分泌される「レプチン」は、身体に蓄積されたエネルギーの状態を脳に伝えるホルモンです。
また、胃や腸などの消化管からも、空腹感や満腹感に関係するホルモンが分泌されています。
脳はこうした情報を受け取り、食欲や食行動、エネルギー消費などを調節しています。
しかし、この仕組みが常に体重増加を防いでくれるわけではありません。
食べ物が豊富に手に入り、身体活動が少なくなりやすい環境では、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態が続くことがあります。
また、体重が減少すると、身体は食欲を高めたり、エネルギー消費を抑えたりする方向に反応することがあります。
これが、食事制限によって一度は痩せても、減量を継続したり、体重を維持したりすることが難しくなる理由の一つです。
こうした身体の仕組みは、肥満が単に食べすぎだけで説明できるものではないことを示しています。
近年の医療ダイエットでは、食事療法や運動療法に加えて、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬など、食欲調節の仕組みに働きかける薬剤も選択肢となっています。
ただし、薬物療法の適否は、肥満の程度や健康状態、治療による利益とリスクなどを踏まえて判断する必要があります。
肥満の仕組みを理解することは、自分に合った体重管理の方法を考えるための第一歩です。
食欲はどう決まる?脳とホルモンの関係
「お腹が空いていないのに、つい食べてしまう」
「食事を減らそうとしても、空腹感が強くて続かない」
「以前よりも食欲が増えた気がする」
このように、食欲のコントロールに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ダイエットでは「食べたい気持ちを我慢すること」が重要だと考えられがちです。
しかし、私たちの食欲は、単に本人の意志だけで決まるものではありません。
脳は、胃や腸、脂肪組織などから送られてくるさまざまな情報を受け取り、身体に必要なエネルギー量や食事のタイミングを調節しています。
その際に重要な役割を果たすのが、レプチン、グレリン、GLP-1、GIPなどのホルモンです。
食欲は、身体のエネルギー状態を反映する複雑な生理機能であり、強い空腹感を意志だけで抑え続けることは簡単ではありません。
食欲をコントロールしているのは脳のどの部分?
食欲の調節には、脳の「視床下部」や「脳幹」などが重要な役割を担っています。
特に視床下部は、体温、睡眠、ホルモン分泌、エネルギー代謝など、生命活動の維持に必要な機能を調節する領域です。
視床下部には、身体のエネルギー状態に応じて食欲を促進する神経系と、食欲を抑制する神経系があります。
代表的なものとして、次の2つが知られています。
-
NPY/AgRPニューロン:主に食欲を促進する方向に働く神経細胞
-
POMCニューロン:主に食欲を抑制する方向に働く神経細胞
これらの神経細胞は、レプチンやグレリンなどのホルモンから情報を受け取り、食事摂取量の調節に関わっています。
また、脳幹は消化管からの神経信号やホルモン情報を処理し、食後の満腹感などに関係しています。
さらに、食欲には視床下部だけでなく、食べ物のおいしさや報酬を評価する脳の領域も関わっています。
そのため、身体に十分なエネルギーが蓄えられていても、おいしそうな食べ物を見たり、ストレスを感じたりすると、食べたいという欲求が生じることがあります。
私たちの脳は、身体に必要なエネルギーだけでなく、食べ物の魅力や過去の経験なども踏まえて食行動を調節しているのです。
レプチンとは?脂肪組織から分泌される食欲調節ホルモン
レプチンは、主に脂肪組織から分泌されるホルモンです。
身体に蓄積されたエネルギーの状態を脳に伝え、食欲やエネルギー消費の調節に関わっています。
一般的に、身体の脂肪量が多いほど、血液中のレプチン濃度も高くなる傾向があります。
レプチンは脳の視床下部などに働きかけ、食欲を抑える方向に作用します。
ここで疑問になるのが、「体脂肪が多いほどレプチンが増えるなら、肥満の人は食欲が減るのでは?」ということです。
実際には、肥満のある方ではレプチン濃度が高くても、十分な食欲抑制効果が得られない場合があります。
これには、レプチンの情報が脳へ十分に伝わらなかったり、レプチンに対する反応が低下したりする「レプチン抵抗性」と呼ばれる現象が関係すると考えられています。
ただし、レプチン抵抗性の仕組みは複雑で、肥満のある方すべてに同じ状態が生じているわけではありません。
また、レプチン抵抗性を一般的な血液検査だけで明確に診断できるわけでもありません。
重要なのは、体脂肪が増えれば必ず自然に食欲が抑えられる、という単純な仕組みではないということです。
グレリンとは?空腹感を高めるホルモン
グレリンは、主に胃から分泌されるホルモンで、食欲を高める方向に働きます。
一般的に、食事の前にはグレリン濃度が上昇し、食後には低下する傾向があります。
グレリンは脳の視床下部などに作用し、食欲を促進する神経系を活性化します。
そのため、空腹を感じる仕組みに関係する重要なホルモンの一つです。
また、グレリンは単に胃が空になったときだけ分泌されるわけではありません。
食事のタイミングや栄養状態、体重の変化など、さまざまな要因によって調節されています。
特に注目したいのが、ダイエットによって体重が減少したあとの変化です。
減量後には、グレリンの分泌が増加することがあり、空腹感が強まりやすくなる可能性があります。
これは、身体がエネルギー不足に対応しようとする生理的な反応の一つと考えられています。
つまり、食事制限を続けるうちに空腹感が強くなったとしても、必ずしも本人の意志が弱くなったわけではありません。
減量によって身体のホルモン環境が変化し、食欲が高まる方向に働くことがあるのです。
GLP-1とは?食後の満腹感や食欲の調節に関わるホルモン
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事を摂取した際などに、主に腸から分泌されるホルモンです。
GLP-1は「インクレチン」と呼ばれるホルモンの一種で、血糖値の調節に重要な役割を果たしています。
血糖値が高いときに膵臓からのインスリン分泌を促進するほか、食欲や満腹感の調節にも関係しています。
GLP-1には、主に次のような作用があります。
-
血糖値に応じてインスリン分泌を促進する
-
血糖値が高い状態ではグルカゴン分泌を抑制する
-
脳の食欲調節に関係する神経系に働きかける
-
胃から小腸への食べ物の移動を遅くする
このような作用によって、GLP-1は食後の血糖値や食事摂取量の調節に関わっています。
ただし、体内で自然に分泌されるGLP-1は、DPP-4という酵素によって比較的短時間で分解されます。
そこで開発されたのが、GLP-1受容体への作用が長く続くように設計された「GLP-1受容体作動薬」です。
代表的な有効成分には、セマグルチドやリラグルチドなどがあります。
これらの薬剤は、GLP-1受容体に働きかけることで食欲や食事摂取量を減少させ、減量につながる場合があります。
なお、薬剤による作用は、体内で自然に分泌されるGLP-1の働きと完全に同じではありません。
特に、薬剤は生理的なGLP-1より長く作用するため、継続的な食欲抑制や体重減少が期待されます。
GIPとは?GLP-1と同じインクレチンの一種
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)も、GLP-1と同じインクレチンの一種です。
主に小腸から分泌され、食事に応じたインスリン分泌の促進などに関係しています。
また、GIPは脂肪組織や中枢神経系にも受容体が存在し、エネルギー代謝や食欲調節との関係が研究されています。
近年では、GLP-1受容体だけでなく、GIP受容体にも作用する薬剤が開発されています。
その代表が、マンジャロやゼップバウンドの有効成分であるチルゼパチドです。
チルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用するため、「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれます。
臨床試験では、チルゼパチドによる大きな体重減少効果が確認されています。
ただし、ここで注意したいのは、GIPが単独でどの程度食欲を抑えるのか、またGLP-1との組み合わせによってどのように減量効果が高まるのかについて、まだ解明されていない部分があることです。
「GIPとGLP-1の2つに作用するから、食欲抑制効果が単純に2倍になる」という仕組みではありません。
GIP受容体への作用が減量効果にどのように寄与しているのかについては、現在も研究が進められています。
食欲に関係する主なホルモンを比較
ここまで紹介したホルモンの働きを整理すると、以下のようになります。
| ホルモン | 主な分泌部位 | 食欲との関係 |
|---|---|---|
| レプチン | 脂肪組織 | 脳にエネルギーの蓄積状態を伝え、食欲を抑制する方向に働く |
| グレリン | 胃 | 空腹感や食欲を高める方向に働く |
| GLP-1 | 腸 | 食欲・満腹感や血糖値の調節に関係する |
| GIP | 小腸 | インスリン分泌や代謝に関係し、食欲調節への作用は研究が進められている |
| PYY | 腸 | 食後に分泌され、食欲を抑制する方向に働く |
これらのホルモンは、それぞれ独立して働いているわけではありません。
脳は複数のホルモンや神経信号を受け取り、身体のエネルギー状態に応じて食欲を調節しています。
そのため、食欲の強さを、特定のホルモン一つだけで説明することはできません。
また、血液中のホルモン濃度を測定すれば、日常的な食欲の強さや太りやすさを簡単に判定できるわけでもありません。
食欲を調節する仕組みが、医療ダイエットにも活用されている
これまで、ダイエットでは食事量を減らすために空腹を我慢することが重要だと考えられがちでした。
しかし、食欲には脳やホルモンが深く関係しており、意志だけで長期間コントロールすることは簡単ではありません。
特に、減量によってレプチン濃度が低下したり、グレリンが増加したりすると、食欲が高まる方向に働くことがあります。
そのため、食事制限によって一度は体重が減少しても、減量を継続することや体重を維持することが難しくなる場合があります。
近年の医療ダイエットでは、こうした食欲調節の仕組みに働きかける薬剤も選択肢となっています。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲や満腹感に関係する神経系に作用し、食事摂取量を減らしやすくすることで減量を支援します。
ただし、薬物療法が必要かどうかは、肥満の程度や健康状態、治療上のリスクなどを踏まえて判断する必要があります。
また、薬物療法を行う場合でも、必要な栄養を確保し、適切な身体活動を継続することは重要です。
食欲の仕組みを理解することは、ダイエットを単なる我慢や努力の問題として考えるのではなく、自分に合った体重管理の方法を見つけることにつながります。
仕事が忙しい方や、強い食欲によって食事制限が続かなかった方も、生活環境や健康状態に応じて、医学的なサポートを検討することができます。
食べすぎてしまうのはなぜ?空腹感・満腹感・食欲の違い
お腹が空いていないのに、食べたくなるのはなぜ?
「夕食をしっかり食べたのに、デザートは食べられる」
「お腹は空いていないけれど、お菓子を見ると食べたくなる」
「仕事でストレスがたまると、つい食べすぎてしまう」
このような経験はないでしょうか。
私たちは、必ずしも身体にエネルギーが不足しているときだけ食事をするわけではありません。
食べ物の見た目や香り、おいしさ、過去の経験、ストレスなどによって、空腹ではなくても食べたいという欲求が生じることがあります。
これは、食欲の調節に、身体のエネルギー状態だけでなく、脳の報酬系や感情、学習した習慣などが関係しているためです。
「お腹が空いていること」と「食べたいと感じること」は、必ずしも同じではありません。
この違いを理解することは、食べすぎの原因を考えるうえで重要です。
食欲には「身体的な空腹」と「快楽的な食欲」がある
食欲を理解するうえで重要なのが、「恒常性に基づく摂食」と「報酬に基づく摂食」という2つの考え方です。
医学的には、それぞれ homeostatic eating、hedonic eating と呼ばれます。
① 身体的な空腹(恒常性に基づく食欲)
身体のエネルギー状態に応じて生じる空腹感です。
例えば、長時間食事を摂っていないときや、身体に必要なエネルギーが不足しているときには、空腹感が強まりやすくなります。
この仕組みには、視床下部や脳幹、グレリン、レプチンなどのホルモンが関係しています。
身体に必要なエネルギーを補給するための、生理的な仕組みと考えることができます。
② 快楽的な食欲(報酬に基づく食欲)
身体に十分なエネルギーがあっても、食べ物のおいしさや魅力によって生じる食欲です。
例えば、お腹がいっぱいでも好きなデザートを見ると食べたくなったり、おいしそうな料理の香りで食欲が刺激されたりすることがあります。
このような食欲には、脳の報酬系や、過去の経験によって形成された学習・記憶などが関係しています。
両者を比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 身体的な空腹 | 快楽的な食欲 |
|---|---|---|
| 主なきっかけ | エネルギー不足など | 食べ物の魅力・報酬・習慣など |
| 主な関係部位 | 視床下部・脳幹など | 報酬系・情動や記憶に関わる領域など |
| 食べたいもの | 特定の食品に限らないことが多い | 好きな食品を強く求める場合がある |
| 満腹時 | 一般的には弱まりやすい | 満腹でも生じることがある |
ただし、実際の食欲は、この2つに完全に分けられるわけではありません。
身体的な空腹があると、おいしい食べ物の魅力がさらに強まることもあります。
食欲は、身体的な必要性と食べ物から得られる満足感の両方によって調節されているのです。
脳の報酬系とは?おいしいものを食べたくなる仕組み
食べ物を見たり、香りを感じたり、おいしいものを食べたりすると、脳では報酬に関係する神経回路が働きます。
この仕組みには、ドパミンなどの神経伝達物質が関係しています。
ドパミンは、食べ物への期待や、それを手に入れようとする動機づけ、学習などに関係する物質です。
例えば、好きな食べ物を何度も食べていると、その食品の見た目や香り、購入する場所などが、食べたいという欲求を引き起こすきっかけになることがあります。
これは、過去にその食べ物を食べて満足した経験が、脳に記憶されているためです。
ここで重要なのは、「食べ物を欲しいと思うこと」と「食べておいしいと感じること」が、完全に同じ仕組みではないという点です。
研究では、食べ物を求める動機づけを wanting、食べたときの快楽的な反応を liking と区別することがあります。
そのため、必ずしも強い空腹感や大きな満足感がなくても、特定の食べ物を繰り返し求めてしまうことがあります。
ただし、このような報酬系の働き自体は異常なものではありません。
食事を楽しむことは自然な行動であり、報酬系は私たちが生活するうえで重要な役割を担っています。
問題となるのは、食べたいという欲求が頻繁に生じ、必要以上のエネルギー摂取が長期間続く場合です。
満腹なのに食べられるのはなぜ?満腹感にも種類がある
食事をすると、胃が広がることによる刺激や、消化管から分泌されるホルモンなどの情報が脳に伝わります。
これらの情報は、食事を終えるタイミングや、次の食事までの満腹感を調節するうえで重要です。
満腹感に関係する仕組みは、大きく2つに分けて考えることができます。
食事を終えるための満腹感(satiation)
食事中に働き、それ以上食べることをやめる方向に作用する仕組みです。
食事による胃の拡張や、消化管からの神経・ホルモン信号などが関係します。
食後に続く満腹感(satiety)
食事を終えたあと、次の食事まで空腹感が抑えられる状態です。
食事内容や摂取エネルギー、消化管ホルモンなど、さまざまな要因が関係します。
つまり、食事中に「もう十分食べた」と感じる仕組みと、食後に「しばらく食べなくてもよい」と感じる仕組みは、関連していても完全に同じではありません。
さらに、身体的には満腹でも、好きな食べ物への報酬的な欲求が残っている場合があります。
例えば、十分な食事をしたあとでも、普段とは異なる味のデザートを食べたくなることがあります。
このような現象には、同じ味や食品を食べ続けることで、その食品に対する魅力が相対的に低下する「感覚特異的満腹感」なども関係しています。
満腹感があるのに別の食べ物を食べたくなるのは、食欲が胃の状態だけでは決まらないためです。
ストレスがたまると食べすぎるのはなぜ?
仕事が忙しいときや、精神的な負担が大きいときに、甘いものや高カロリーの食品を食べたくなる方もいるでしょう。
ストレスは、食欲や食行動に影響する要因の一つです。
ストレスを感じると、身体では自律神経系や視床下部・下垂体・副腎系などが働き、コルチゾールをはじめとするホルモンの分泌が変化します。
ただし、ストレスによる食欲への影響は一律ではありません。
強い急性ストレスによって食欲が低下する方もいれば、慢性的なストレスの中で食事量が増える方もいます。
また、食べ物が一時的な気分転換や安心感につながることもあります。
例えば、仕事が終わったあとに甘いものを食べることで気分が落ち着くと、その行動が習慣化する場合があります。
これは、単純にお腹が空いているからではなく、食べ物が感情やストレスへの対処方法の一つになっているためです。
ただし、ストレスを感じる方が必ず過食になるわけではなく、個人差があります。
また、ストレスによる食べすぎを、すべてホルモンの変化だけで説明することもできません。
生活環境、睡眠、食習慣、心理的な要因などを総合的に考える必要があります。
食べる習慣が、空腹とは関係なく食欲を生むこともある
私たちの食行動は、毎日の繰り返しによって習慣化します。
例えば、次のような経験はないでしょうか。
-
テレビを見ながら、無意識にお菓子を食べる
-
仕事が終わると、空腹でなくてもコンビニに立ち寄る
-
映画館に行くと、必ずポップコーンを買う
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夜遅くなると、習慣的に何かを食べたくなる
-
食事のあとには、必ず甘いものを食べる
こうした行動は、必ずしも身体的な空腹によって引き起こされるわけではありません。
特定の時間、場所、感情、行動などが食事と結びつき、食べるきっかけになることがあります。
このような学習された食行動は、肥満のある方だけにみられるものではありません。
ただし、習慣的な間食や飲食によって摂取エネルギーが増え、それが長期間続くと、体重増加につながる場合があります。
そのため、体重管理では何を食べているかだけでなく、いつ、どのような状況で食べているかを確認することも重要です。
例えば、毎晩のお菓子が習慣になっている場合には、単に「食べないように我慢する」だけでなく、お菓子を置く場所や帰宅後の行動を見直す方法も考えられます。
こうした環境や行動への働きかけは、肥満治療における行動療法の一部です。
食べすぎやすい食品には特徴がある?
食べすぎには、食品そのものの特徴も関係しています。
例えば、脂質や糖質を多く含み、おいしさを感じやすい食品は、空腹でなくても食べたいという欲求を引き起こす場合があります。
また、食べる速度が速くなりやすい食品や、少ない量で多くのエネルギーを摂取できる食品では、結果として摂取エネルギー量が増えやすくなることがあります。
近年では、超加工食品(ultra-processed foods)と食欲・エネルギー摂取量の関係についても研究が進められています。
ただし、超加工食品という分類だけで、すべての食品の健康への影響を判断できるわけではありません。
また、食品の加工度が高いこと自体が食欲増加の直接的な原因なのか、エネルギー密度、食感、食べる速度、嗜好性などがどの程度関係しているのかについては、まだ研究が必要です。
そのため、「特定の食品を食べると必ず太る」「加工食品はすべて避けるべき」といった単純な考え方は適切ではありません。
大切なのは、食品の種類だけでなく、食事全体のエネルギー量、栄養バランス、食べる頻度や量を考えることです。
「食べ始めると止まらない」は病気の可能性もある?
食べすぎてしまうこと自体は、必ずしも病気を意味するわけではありません。
しかし、食事を自分でコントロールできない感覚が強く、過食を繰り返している場合には、摂食障害が関係している可能性もあります。
代表的なものの一つが「むちゃ食い障害(過食性障害:binge-eating disorder)」です。
むちゃ食い障害では、比較的短い時間に通常より明らかに多い量の食事を摂取し、その間に食べることをコントロールできないと感じる過食エピソードを繰り返します。
例えば、以下のような特徴がみられることがあります。
-
短時間に大量の食事を摂取する
-
食べることを途中でやめられないと感じる
-
不快になるほど満腹になるまで食べる
-
空腹ではないのに大量に食べる
-
食べたあとに強い罪悪感や苦痛を感じる
ただし、こうした症状が一度あっただけで、むちゃ食い障害と診断されるわけではありません。
診断には、過食の頻度や期間、精神的な苦痛、代償行動の有無などを含めた専門的な評価が必要です。
また、むちゃ食い障害は肥満のある方だけに起こるものではなく、体重やBMIだけで判断することはできません。
特に、過食に伴う精神的な苦痛が強い場合には、単純な減量指導や食欲抑制薬の処方だけで対応するのではなく、摂食障害に対する適切な治療を検討する必要があります。
食べすぎの背景に何があるのかを確認することは、適切な治療方法を選ぶうえで重要です。
食欲を我慢するだけでなく、食欲が生じる原因を考えることが大切
ここまで説明してきたように、食欲には身体的な空腹だけでなく、食べ物の魅力、ストレス、習慣、睡眠、脳の報酬系など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、食べすぎを改善する際には、単に食事量を減らそうとするだけでなく、なぜ食べたくなるのかを考えることが重要です。
例えば、食事の間隔が長すぎて強い空腹感が生じている場合には、食事のタイミングや内容を見直すことが役立つかもしれません。
一方、ストレスや習慣によって間食が増えている場合には、食事以外のストレス対処方法や、食べ物を手に取りやすい環境を見直すことが考えられます。
また、肥満があり、強い食欲によって減量を継続することが難しい場合には、医学的な評価を行ったうえで、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬などの薬物療法を検討する余地もあります。
これらの薬剤は、食欲や満腹感の調節に働きかけ、食事摂取量の減少を支援します。
ただし、薬物療法によってすべての過食行動や心理的な問題が解決するわけではありません。
薬物療法を行う場合でも、食習慣や生活環境を見直すことは重要です。
食欲を抑えるために我慢を重ねるだけでなく、食欲が強くなる理由を理解し、自分に合った方法で体重管理に取り組むことが大切です。
医療ダイエットでは、こうした身体の仕組みや生活背景も踏まえながら、一人ひとりに適した減量方法を考えていきます。
基礎代謝が低いと太る?消費エネルギーの仕組み
「基礎代謝が低いから痩せない」は本当?
「昔と同じ量を食べているのに、最近太りやすくなった」
「運動しているのに、思うように体重が減らない」
「筋肉をつけて基礎代謝を上げれば、自然に痩せるのでは?」
このように、ダイエットと基礎代謝の関係が気になっている方も多いでしょう。
基礎代謝は、私たちの身体が生命活動を維持するために消費するエネルギーのことです。
確かに、エネルギー消費量が少ない方は、同じ量の食事を摂取していても、エネルギーが余りやすくなる場合があります。
しかし、「基礎代謝が低いこと」だけで、太りやすさや痩せにくさを説明できるわけではありません。
体重の変化には、基礎代謝だけでなく、普段の身体活動量、食事摂取量、体格、筋肉量など、さまざまな要因が関係しています。
また、減量によって体重が軽くなると、身体が消費するエネルギー量も変化します。
そのため、基礎代謝だけに注目するのではなく、1日のエネルギー消費全体を理解することが重要です。
1日の消費エネルギーは、主に3つに分けられる
私たちは運動をしていないときでも、常にエネルギーを消費しています。
例えば、寝ている間も心臓は動き、呼吸が続き、脳や肝臓などの臓器が働いています。
1日の総エネルギー消費量(TDEE:Total Daily Energy Expenditure)は、主に次の3つで構成されています。
| エネルギー消費の種類 | 主な内容 | 一般的な割合の目安 |
|---|---|---|
| 基礎代謝・安静時代謝 | 呼吸、循環、体温維持、臓器の働きなど | 約60〜70% |
| 身体活動による消費 | 運動、歩行、家事、通勤など | 約15〜30% |
| 食事誘発性熱産生 | 食事の消化・吸収・代謝など | 約10% |
※割合は一般的な目安であり、年齢、体格、活動量、食事内容などによって大きく変わります。特に運動量が多い方では、身体活動による消費の割合が高くなります。
このように、私たちは運動をしていない時間にも多くのエネルギーを消費しています。
ただし、だからといって運動が重要ではないという意味ではありません。
運動や日常生活での身体活動は、総エネルギー消費量に影響するだけでなく、筋力や心肺機能、血糖コントロールなどにも関係しています。
体重管理では、基礎代謝・身体活動・食事によるエネルギー消費を総合的に考えることが大切です。
基礎代謝は何によって決まる?
基礎代謝量は、すべての方で同じではありません。
一般的に、次のような要因によって異なります。
-
体格:身体が大きいほど、エネルギー消費量も多い傾向がある
-
除脂肪量:筋肉や臓器など、脂肪以外の組織の量が関係する
-
年齢:加齢に伴う体組成や臓器機能の変化などが影響する
-
性別に関連する体組成の違い:平均的な筋肉量や身体の大きさなどが関係する
-
健康状態:発熱や甲状腺機能異常などによって変化する場合がある
ここで重要なのが、除脂肪量です。
除脂肪量とは、身体全体の重さから脂肪組織の重さを除いたもので、筋肉、臓器、水分、骨などを含みます。
一般的に、除脂肪量が多い方ほど、安静時のエネルギー消費量も多い傾向があります。
ただし、除脂肪量のすべてが同じ程度のエネルギーを消費するわけではありません。
脳、肝臓、心臓、腎臓などの臓器は、重量あたりのエネルギー消費量が比較的大きい組織です。
一方、骨格筋は身体全体では大きな重量を占めるものの、安静時の重量あたりのエネルギー消費量は、これらの臓器ほど高くありません。
そのため、基礎代謝を単純に筋肉量だけで判断することはできません。
筋肉が増えると基礎代謝はどのくらい上がる?
「筋トレをして筋肉を増やせば、何もしなくても大量のカロリーを消費できる」
このような話を聞いたことがある方もいるでしょう。
確かに、筋肉は安静時にもエネルギーを消費しています。
しかし、骨格筋1kgあたりの安静時エネルギー消費量は、一般的に1日約13kcal程度と推定されています。
つまり、単純な計算では、骨格筋が1kg増えたことによる安静時エネルギー消費量の増加は、それほど大きくありません。
もちろん、実際には筋力トレーニングによる活動時の消費エネルギーや、身体機能の改善なども考慮する必要があります。
筋トレによって筋肉量が増えれば、日常生活や運動でより活発に身体を動かしやすくなる可能性もあります。
また、筋肉は糖を取り込む重要な組織であり、筋力トレーニングはインスリン感受性の改善などにも役立ちます。
したがって、筋肉量を増やすことには、基礎代謝の増加だけでは説明できない健康上の意義があります。
筋トレの目的は、単に基礎代謝を大幅に上げることではなく、筋肉量や筋力を維持・向上させ、健康的な身体を保つことにあります。
運動していない時間の活動量も、消費エネルギーに関係する
身体活動によるエネルギー消費は、ジムでのトレーニングやジョギングだけではありません。
通勤で歩く、階段を上る、掃除をする、立って作業するなど、日常生活のさまざまな動作でもエネルギーが消費されています。
こうした運動以外の身体活動によるエネルギー消費は、NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)と呼ばれます。
NEATには、次のような活動が含まれます。
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通勤や買い物で歩く
-
エレベーターの代わりに階段を使う
-
家事や掃除をする
-
立った状態で作業する
-
日常生活で身体を動かす
例えば、同じデスクワーク中心の生活でも、通勤で長く歩く方と、自宅でほとんど座って過ごす方では、1日の活動量が異なります。
また、長時間の座位が続く生活では、総身体活動量が少なくなりやすい傾向があります。
仕事が忙しく、まとまった運動時間を確保できない方でも、日常生活の中で身体を動かす機会を増やすことは可能です。
ただし、NEATによる消費エネルギーには個人差があり、短時間立ったり歩いたりするだけで大きな減量効果が得られるとは限りません。
運動する時間だけでなく、1日を通してどの程度身体を動かしているかも、体重管理に関係しています。
食事をするとエネルギーが消費される?食事誘発性熱産生とは
食事を摂取すると、栄養素を消化・吸収・代謝するためにもエネルギーが使われます。
この働きを、食事誘発性熱産生(DIT:Diet-Induced Thermogenesis)と呼びます。
食事誘発性熱産生は、摂取する栄養素によって異なります。
一般的に、タンパク質は糖質や脂質と比較して、摂取したエネルギーに対する熱産生の割合が高いとされています。
おおよその目安は、次のとおりです。
| 栄養素 | 食事誘発性熱産生の目安 |
|---|---|
| タンパク質 | 摂取エネルギーの約20〜30% |
| 糖質 | 約5〜10% |
| 脂質 | 約0〜3% |
※これらは栄養素別の概算であり、個人差や食事内容によって変わります。食事全体の熱産生は、一般的に総エネルギー摂取量の約10%が目安です。
このような違いから、食事中のタンパク質割合がエネルギー消費に影響することがあります。
ただし、タンパク質を多く食べれば、それだけで大幅に痩せられるというわけではありません。
体重の増減には、1日の総摂取エネルギー量と総消費エネルギー量のバランスが大きく関係します。
また、タンパク質は筋肉量の維持にも重要な栄養素ですが、必要量は体格や年齢、運動量、腎機能などによって異なります。
そのため、極端にタンパク質だけを増やすのではなく、食事全体のバランスを考えることが大切です。
ダイエットをすると基礎代謝が下がるのはなぜ?
ダイエット中に「最初は順調に痩せたのに、途中から体重が減らなくなった」と感じることがあります。
この背景には、体重減少に伴うエネルギー消費量の変化が関係している場合があります。
例えば、体重80kgの方が70kgまで減量すると、身体全体の重量が軽くなります。
その結果、身体を動かす際に必要なエネルギーが減少するほか、身体を構成する組織の量が変化することで、安静時のエネルギー消費量も減少する場合があります。
さらに、体重減少に伴い、体格や体組成の変化から予測される以上にエネルギー消費量が低下する現象がみられることがあります。
この現象は、適応性熱産生(adaptive thermogenesis)と呼ばれます。
ただし、適応性熱産生の大きさには個人差があり、すべての研究で同じ程度の変化が認められているわけではありません。
また、減量中には疲労や空腹感などによって、無意識のうちに日常の活動量が減少する場合もあります。
こうした変化が重なると、以前と同じ食事量を続けていても、減量開始時ほどのエネルギー不足が生じなくなることがあります。
その結果、体重減少の速度が遅くなったり、停滞したりすることがあります。
ダイエット中に体重が減りにくくなるのは、必ずしも努力不足ではなく、減量に伴う身体の変化が関係している場合もあるのです。
体重が減ると、必要な摂取カロリーも変わる
減量を始めたときには、摂取エネルギー量を減らすことで体重が順調に減少する場合があります。
しかし、体重が減少すると身体のエネルギー消費量も変化するため、減量開始時と同じエネルギー摂取量でも、減量の速度が徐々に遅くなることがあります。
例えば、ある方が1日2,500kcalを消費していたとします。
その方が1日の摂取エネルギー量を2,000kcalに減らせば、当初はエネルギー不足が生じます。
しかし、減量が進んで体重や活動量が変わり、消費エネルギーが2,200kcalになった場合、同じ2,000kcalの食事でもエネルギー不足は小さくなります。
これはあくまで説明のための仮定ですが、減量に伴って消費エネルギー量が変化することを示しています。
そのため、摂取エネルギー量を一定に保っているだけで、体重が同じ速度で減り続けるとは限りません。
一方で、体重が減りにくくなったからといって、極端に食事量を減らすことは適切ではありません。
必要な栄養素が不足したり、筋肉量が大きく減少したりする可能性があるためです。
体重の変化に応じて食事や身体活動を見直しながら、無理のないエネルギーバランスを考えることが重要です。
InBodyで基礎代謝はわかる?測定値の見方と注意点
体組成分析装置「InBody」では、体重や体脂肪量、骨格筋量などに加え、基礎代謝量の推定値が表示される機種があります。
そのため、「InBodyで基礎代謝を測定できる」と考える方もいるかもしれません。
しかし、InBodyは呼気中の酸素消費量や二酸化炭素排出量を測定しているわけではありません。
InBodyでは、身体の電気抵抗などから体組成を推定し、その情報をもとに基礎代謝量を計算しています。
つまり、InBodyに表示される基礎代謝量は、実際のエネルギー消費を直接測定した値ではなく、推定値です。
また、体組成の測定値は、水分状態や食事、運動、測定時間などの影響を受けます。
そのため、表示された基礎代謝量をそのまま1日の必要摂取カロリーとして扱うことは適切ではありません。
特に、基礎代謝量と1日の総エネルギー消費量は異なります。
例えば、基礎代謝量が1,500kcalと推定されたとしても、実際には日常生活での活動や食事誘発性熱産生などによって、それ以上のエネルギーを消費しています。
医療ダイエットでは、こうした違いを理解したうえで、体重の推移や生活習慣などと合わせてエネルギー摂取量を検討することが大切です。
当院ではInBodyによる体組成評価を活用していますが、測定結果を絶対的なものとして判断せず、体重、腹囲、食事・運動の状況なども踏まえて評価することを重視しています。
基礎代謝を上げることだけが、ダイエットの正解ではない
ここまで説明してきたように、体重管理には基礎代謝だけでなく、身体活動量や食事摂取量など、さまざまな要因が関係しています。
筋肉量を増やすことは健康上重要ですが、筋肉を増やせば安静時のエネルギー消費量が大幅に上昇するわけではありません。
また、基礎代謝量が高い方でも、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回る状態が続けば、体重が増加する場合があります。
反対に、基礎代謝量が比較的低い方でも、生活習慣や摂取エネルギー量を適切に調整することで、減量できる可能性があります。
ただし、食事制限を厳しくしすぎると、空腹感の増加や栄養不足、筋肉量の減少などにつながることもあります。
そのため、医療ダイエットでは、食事療法・運動療法・必要に応じた薬物療法などを組み合わせながら、無理のない方法で体重管理に取り組むことが大切です。
基礎代謝の数字だけにとらわれず、自分の身体と生活に合った方法で、長期的に続けられる減量を目指しましょう。
年齢とともに太りやすくなる理由|基礎代謝・筋肉量・ホルモンの変化
30代・40代になると太りやすくなるのはなぜ?
「20代のころは何を食べても太らなかった」
「30代になってから、お腹周りの脂肪が気になり始めた」
「40代・50代になって、以前と同じ食事なのに体重が増えるようになった」
このような変化を感じている方は少なくありません。
年齢を重ねると太りやすくなる理由として、よく挙げられるのが「基礎代謝の低下」です。
確かに、加齢によって筋肉量や身体活動量、ホルモン環境などが変化し、エネルギー消費に影響することがあります。
しかし、近年の研究では、成人のエネルギー代謝は、これまで考えられていたほど単純に年齢とともに低下するわけではないことがわかってきました。
特に30代・40代の体重増加には、基礎代謝そのものの変化よりも、身体活動量や食生活、睡眠、仕事などの生活環境が関係している場合があります。
年齢とともに太りやすくなる背景には、身体の変化と生活習慣の変化が複雑に関係しているのです。
基礎代謝は30代から急激に低下するわけではない
一般的には、「基礎代謝は20代をピークに年齢とともに下がっていく」と説明されることがあります。
しかし、近年の大規模研究では、必ずしもそのような単純な変化ではないことが示されています。
2021年に科学誌『Science』に掲載された研究では、生後間もない乳児から95歳までの6,421人を対象に、1日の総エネルギー消費量が年齢によってどのように変化するかが検討されました。
この研究では、二重標識水法と呼ばれる方法を用いて、実際の生活環境におけるエネルギー消費量を測定しています。
その結果、体格や体組成の違いを調整したエネルギー消費量には、次のような特徴が認められました。
| 年齢 | エネルギー代謝の特徴 |
|---|---|
| 乳児期 | 体格に対してエネルギー消費量が高い |
| 1〜20歳ごろ | 成長に伴い、体組成調整後のエネルギー消費量が成人の水準へ変化 |
| 20〜60歳ごろ | 体組成調整後のエネルギー消費量は比較的安定 |
| 60歳以降 | 体組成調整後のエネルギー消費量も徐々に低下する傾向 |
この研究で重要なのは、20〜60歳では、年齢そのものによるエネルギー消費量の低下がほとんど認められなかったという点です。
ただし、これは「60歳までは誰でも消費カロリーが変わらない」という意味ではありません。
例えば、30代・40代になって筋肉量が減ったり、仕事がデスクワーク中心になって身体を動かす時間が減ったりすれば、1日の消費エネルギー量は少なくなることがあります。
つまり、年齢を重ねること自体よりも、筋肉量や活動量などの変化が、太りやすさに関係している場合があるということです。
では、具体的にどのような変化が体重増加につながるのでしょうか。
仕事や生活環境の変化で、身体活動量が減っていることもある
20代と40代では、仕事や日常生活の過ごし方が大きく変化していることがあります。
例えば、学生時代には通学やアルバイト、スポーツなどで身体を動かす機会が多かった方でも、社会人になってデスクワークが中心になることがあります。
また、仕事で責任が増え、残業や会食が多くなったり、家庭の事情によって運動時間を確保しにくくなったりする場合もあります。
こうした生活環境の変化は、日常生活でのエネルギー消費量に影響します。
特に重要なのが、NEAT(非運動性活動熱産生)と呼ばれる、運動以外の身体活動によるエネルギー消費です。
NEATには、通勤で歩く、階段を上る、家事をする、立って作業するなどの活動が含まれます。
例えば、休日に1時間運動していても、平日の大部分を座って過ごしている場合には、日常生活全体の活動量が少ないことがあります。
また、加齢に伴って疲労を感じやすくなったり、身体を動かす機会が減ったりすると、本人が意識しないうちに活動量が低下する場合もあります。
以前と同じ量を食べているつもりでも、消費するエネルギー量が少なくなれば、体重は増加しやすくなります。
そのため、年齢による体重増加を考える際には、基礎代謝だけでなく、日常生活の活動量が変化していないかを確認することが大切です。
加齢による筋肉量の減少も、体重管理に関係する
年齢を重ねると、筋肉量や筋力が徐々に低下することがあります。
特に高齢になると、筋肉量や筋力の低下が進み、身体機能にも影響する場合があります。
このような加齢に伴う筋肉量や筋力の低下は、サルコペニアと呼ばれる病態に関係しています。
ただし、加齢による筋肉の変化には個人差があり、30代からすべての方で急速に筋肉が減少するわけではありません。
また、筋肉量だけでなく、筋力や身体機能の変化も重要です。
筋肉量が少なくなると、安静時のエネルギー消費量が減少する可能性があります。
しかし、骨格筋1kgあたりの安静時エネルギー消費量は、一般的に1日約13kcal程度と推定されており、筋肉量の変化だけで大幅な体重増加を説明できるわけではありません。
一方、筋力や身体機能が低下すると、運動や日常生活で身体を動かす機会が減り、結果として総エネルギー消費量に影響する可能性があります。
また、筋肉は糖を取り込む重要な組織であり、糖代謝やインスリン感受性にも関係しています。
そのため、筋肉量や筋力を維持することには、体重管理だけでなく、健康を維持するうえでも意義があります。
年齢を重ねてからのダイエットでは、単に体重を減らすことだけでなく、筋肉量や筋力をできるだけ維持することが重要です。
体重が変わらなくても、体脂肪が増えていることがある
年齢を重ねると、体重そのものは大きく変化していなくても、身体の中身が変化している場合があります。
例えば、若いころと同じ70kgでも、筋肉量が減少し、体脂肪量が増加していることがあります。
この場合、体重計の数値は同じでも、体脂肪率が高くなっている可能性があります。
また、脂肪の蓄積する部位が変化し、腹部や内臓の周囲に脂肪が増える場合もあります。
内臓脂肪の過剰な蓄積は、インスリン抵抗性や脂質代謝異常などと関係しています。
そのため、健康状態を評価する際には、体重やBMIだけでなく、腹囲や体脂肪量なども参考になります。
例えば、以下のような変化がみられる場合があります。
| 項目 | 若いころ | 年齢を重ねたあと |
|---|---|---|
| 体重 | 70kg | 70kg |
| 体脂肪量 | 14kg | 18kg |
| 除脂肪量 | 56kg | 52kg |
| 体脂肪率 | 20% | 約25.7% |
※身体組成の変化を説明するための仮想例であり、年齢によって必ずこのように変化するわけではありません。
この例では、体重は変わっていませんが、体脂肪量が増加し、除脂肪量が減少しています。
つまり、体重が維持できていることと、体組成が維持できていることは同じではありません。
当院では体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などの推定値を確認できます。
ただし、InBodyは水分状態や測定条件によって数値が変動するため、体組成の変化を評価する際には継続的な測定や、腹囲、身体機能などとの総合的な評価が重要です。
男性はテストステロンの変化も関係する?
男性では、加齢に伴ってテストステロンの分泌や血中濃度が変化することがあります。
テストステロンは男性ホルモンの一種で、性機能だけでなく、筋肉量、骨、脂肪分布などにも関係しています。
テストステロンが低下すると、筋肉量や筋力の低下、体脂肪の増加などと関連する場合があります。
また、肥満そのものがテストステロンの低下と関係していることも知られています。
特に、肥満のある男性では、視床下部・下垂体・精巣系の働きが機能的に抑制され、テストステロン値が低くなる場合があります。
つまり、テストステロン低下が体組成の変化に関係する一方で、肥満がテストステロン低下の一因となることもあり、両者には双方向の関係があると考えられています。
ただし、ここで注意したいのは、「年齢とともに太るのはテストステロンが低下するから」と単純に説明できるわけではないということです。
また、テストステロン値が低い場合でも、それだけで男性更年期障害や性腺機能低下症と診断されるわけではありません。
症状や朝の採血によるホルモン評価、肥満や睡眠障害などの関連要因を確認する必要があります。
さらに、肥満に関連した機能的なテストステロン低下では、減量によってテストステロン値が改善する場合があります。
そのため、テストステロンが低いという理由だけで、すぐにテストステロン補充療法を開始することが適切とは限りません。
特に、肥満に関連する機能的な性腺機能低下では、減量や生活習慣の改善が重要な治療選択肢となります。
男性の肥満とテストステロン、男性更年期障害の関係については、別の記事で詳しく解説します。
年齢を重ねると、お腹周りに脂肪がつきやすくなる?
30代・40代以降になると、体重の増加だけでなく、お腹周りの変化が気になる男性も多いでしょう。
腹部の脂肪には、主に皮下脂肪と内臓脂肪があります。
皮下脂肪は皮膚の下に蓄積する脂肪であり、内臓脂肪は腹腔内の臓器の周囲などに蓄積する脂肪です。
特に内臓脂肪は、インスリン抵抗性や脂質代謝異常、高血圧などと関連しています。
男性では、体脂肪が腹部に蓄積しやすい傾向があり、加齢や生活習慣の変化によって内臓脂肪が増加する場合があります。
ただし、内臓脂肪が増える理由を年齢や男性ホルモンだけで説明することはできません。
摂取エネルギー量、身体活動量、遺伝的な体質、睡眠、飲酒習慣なども関係しています。
また、腹囲が増加したからといって、そのすべてが内臓脂肪の増加によるものとは限りません。
医学的には、BMIや腹囲、必要に応じた画像検査などを組み合わせて評価します。
お腹周りの脂肪が気になり始めた場合には、体重だけでなく、腹囲や健康診断の結果にも目を向けることが大切です。
50代・60代以降のダイエットでは、筋肉量の維持がさらに重要
50代・60代以降では、体重管理の目的を慎重に考える必要があります。
例えば、肥満によって高血圧や糖尿病、脂質異常症などの健康問題がある場合には、減量によって健康状態の改善が期待できることがあります。
一方、高齢になるほど筋肉量や筋力が低下しやすくなり、過度な食事制限によって身体機能に悪影響が生じる可能性もあります。
特に注意したいのが、肥満と筋肉量・筋力の低下が併存する状態です。
このような状態は、サルコペニア肥満と呼ばれることがあります。
サルコペニア肥満では、体脂肪が多い一方で筋力や身体機能が低下している場合があり、単に体重を減らすことだけを目標にするのは適切ではありません。
そのため、高齢者の減量では、食事量の調整だけでなく、十分な栄養摂取や筋力トレーニングなどを組み合わせることが重要です。
また、必要な減量の程度は、健康状態や身体機能によって異なります。
年齢が高くなるほど、体重の数字だけではなく、筋肉量・筋力・栄養状態・生活機能を重視した体重管理が大切になります。
年齢に合わせて、ダイエットの方法も見直そう
年齢を重ねると、仕事や家庭の事情、身体活動量、筋肉量、ホルモン環境など、さまざまな要素が変化します。
そのため、20代のころと同じ食事や運動習慣を続けていても、必ずしも同じ体重を維持できるとは限りません。
ただし、年齢だけを理由に、減量ができないと考える必要もありません。
体重管理の基本は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを整えることです。
そのうえで、必要な栄養を確保し、身体活動量や筋力を維持することが大切になります。
また、仕事が忙しく、食事や運動の管理が難しい方もいるでしょう。
そのような場合には、生活習慣を改善するための支援に加え、肥満の程度や健康状態に応じて、薬物療法を検討することもあります。
ただし、薬物療法は年齢だけで必要性が決まるものではなく、治療による利益とリスクを踏まえた判断が必要です。
当院では、体重やBMIだけでなく、InBodyによる体組成評価なども参考にしながら、患者さんの生活背景や健康状態に合わせた体重管理を大切にしています。
年齢を重ねても、身体の変化を正しく理解し、自分に合った方法で取り組むことが、健康的な体重管理につながります。
睡眠不足・ストレス・生活習慣は肥満の原因になる?
食事や運動だけでは説明できない、太りやすさの原因
「仕事が忙しくなってから体重が増えた」
「睡眠時間が短いと、甘いものが食べたくなる」
「ストレスがたまると、つい食べすぎてしまう」
このような経験はないでしょうか。
肥満の原因として、食べすぎや運動不足を思い浮かべる方は多いでしょう。
確かに、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスは体重管理の基本です。しかし、そのバランスには、食事や運動以外の生活習慣も影響しています。
特に重要なのが、睡眠時間、ストレス、生活リズム、仕事や日常生活での活動量です。
例えば、睡眠不足によって食欲が変化したり、ストレスによって間食が増えたりすることがあります。
また、夜勤や不規則な勤務によって食事のタイミングが乱れ、体重管理が難しくなる方もいます。
つまり、体重が増える背景には、本人が意識している食事量や運動量だけでなく、生活環境そのものが関係している場合があるのです。
睡眠不足になると太りやすくなるのはなぜ?
睡眠は、身体を休めるだけでなく、食欲やエネルギー代謝の調節にも関係しています。
睡眠時間が不足すると、空腹感や食べ物への欲求が変化し、結果として食事摂取量が増える場合があります。
その背景には、主に次のような仕組みが考えられています。
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食欲調節の変化:空腹感や満腹感に関係するホルモンや神経活動が変化する
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食べ物への反応の変化:高カロリー食品などへの欲求が強くなる場合がある
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食事機会の増加:起きている時間が長くなることで、夜間の間食が増えやすくなる
-
身体活動への影響:疲労や眠気によって、日中の活動量が減る場合がある
ただし、睡眠不足によって必ずグレリンが増加し、レプチンが減少するという単純な仕組みではありません。
これらのホルモンに関する研究結果は、睡眠不足の程度や研究条件などによって異なります。
重要なのは、睡眠不足が食欲や食行動に影響し、体重管理を難しくする場合があるということです。
睡眠時間を延ばすと、摂取カロリーが減る?臨床試験の結果
睡眠時間と食事摂取量の関係を調べた興味深い研究があります。
2022年に『JAMA Internal Medicine』に掲載されたランダム化比較試験では、普段の睡眠時間が6.5時間未満で、BMI25〜29.9の成人80人を対象に、睡眠時間を延ばす介入の効果が検討されました。
この研究では、食事制限や運動の指示を追加せず、睡眠習慣の改善を行っています。
その結果、睡眠時間を延ばした群では、対照群と比べて次のような変化が認められました。
| 評価項目 | 結果 |
|---|---|
| 睡眠時間 | 1日平均約1.2時間増加 |
| エネルギー摂取量 | 対照群より1日平均約270kcal減少 |
| 総エネルギー消費量 | 群間で統計学的に有意な差なし |
| 観察期間 | 介入期間2週間 |
この結果は、睡眠不足を改善することが、食事摂取量の減少につながる可能性を示しています。
ただし、研究期間は短く、参加者も比較的若い成人に限られています。
そのため、睡眠時間を1時間延ばせば誰でも270kcal減る、あるいは睡眠を改善するだけで長期的な減量に成功するという意味ではありません。
それでも、食事や運動だけでなく、睡眠も体重管理を考えるうえで重要な要素であることがわかります。
ダイエットを頑張っているのに痩せにくい場合には、食事量だけでなく、睡眠時間や睡眠の質にも目を向けることが大切です。
夜勤や不規則な生活は肥満に関係する?
夜勤や交代勤務などで、生活リズムが不規則になっている方もいるでしょう。
私たちの身体には、睡眠や覚醒、体温、ホルモン分泌、エネルギー代謝などを約24時間の周期で調節する仕組みがあります。
これは「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれています。
通常、概日リズムは光や食事、睡眠などの影響を受けながら調節されています。
しかし、夜勤や不規則な勤務によって、睡眠や食事のタイミングが身体のリズムとずれることがあります。
こうした状態は、食欲や糖代謝、脂質代謝などに影響する可能性があります。
また、夜勤中には食事の選択肢が限られたり、帰宅後の睡眠時間が不足したりすることもあります。
その結果、体重管理が難しくなる場合があります。
ただし、夜勤をしている方が必ず肥満になるわけではありません。また、夜遅く食事をすることだけで肥満が決まるわけでもありません。
実際の体重変化には、1日の総摂取エネルギー量、食事内容、睡眠時間、身体活動量などが関係します。
夜勤や不規則な生活の方では、理想的な生活時間に無理に合わせるよりも、現在の勤務形態の中で続けられる体重管理を考えることが重要です。
ストレスがたまると食べすぎてしまう理由
仕事や家庭などでストレスを感じたときに、甘いものや脂っこいものが食べたくなる方もいるでしょう。
ストレスは食欲や食行動に影響する要因の一つです。
ストレスを感じると、身体では自律神経系や視床下部・下垂体・副腎系が働き、コルチゾールなどのホルモンの分泌が変化します。
ただし、ストレスが食欲に与える影響には個人差があります。
強いストレスによって食欲が低下する方もいれば、慢性的なストレスによって間食や過食が増える方もいます。
特に、食べることが気分転換や安心感につながっている場合には、ストレスを感じるたびに食事をする習慣が形成されることがあります。
例えば、次のような行動です。
-
仕事が終わると、空腹でなくてもお菓子を食べる
-
疲れた日は、普段より多く食べてしまう
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イライラすると、甘い飲み物を飲みたくなる
-
夜遅くまで仕事をしたあと、大量に食べてしまう
このような食行動には、ホルモンだけでなく、脳の報酬系や過去の経験、生活習慣などが関係しています。
そのため、食べすぎを改善する際には、単に食事を我慢するだけでなく、ストレスとの付き合い方を考えることも重要です。
ストレスを減らせば痩せる?
ストレスによる食べすぎが体重増加に関係している場合には、ストレスへの対処方法を見直すことが役立つ可能性があります。
ただし、ストレスを減らせば必ず体重が減少するわけではありません。
体重管理では、食事摂取量や身体活動量なども考慮する必要があります。
また、仕事や家庭の事情など、ストレスの原因をすぐに取り除くことが難しい場合もあるでしょう。
そのような場合には、生活全体を一度に変えようとするのではなく、取り組める部分から少しずつ改善することが大切です。
例えば、ストレスを感じるたびに間食している場合には、短時間の散歩や休憩など、食事以外の気分転換を取り入れる方法があります。
また、食べ物を手に取りやすい環境を見直したり、食事の時間をある程度決めたりすることも考えられます。
必要に応じて、心理的なサポートや行動療法などを検討する場合もあります。
ストレスによる食べすぎは、意志の強さだけで解決しようとするのではなく、食行動が起こる背景に目を向けることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と肥満には関係がある?
肥満と睡眠の関係を考えるうえで、特に注意したい疾患が睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
なかでも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に上気道が繰り返し狭くなったり、閉塞したりすることで、呼吸が止まる、あるいは弱くなる疾患です。
肥満は、OSAの重要な危険因子の一つです。
特に、首周囲や上気道周辺への脂肪の蓄積などが、睡眠中の気道の狭窄に関係する場合があります。
一方、OSAによる睡眠の分断や日中の眠気は、身体活動や生活習慣に悪影響を及ぼすことがあります。
このように、肥満とOSAは相互に関連しています。
OSAでは、次のような症状がみられることがあります。
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大きないびき
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睡眠中に呼吸が止まると指摘される
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夜間に何度も目が覚める
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朝起きても疲れが取れない
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日中に強い眠気がある
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起床時に頭痛がある
ただし、これらの症状がすべてそろうわけではなく、自覚症状が乏しい場合もあります。
また、肥満のない方でもOSAを発症することがあります。
肥満があり、いびきや日中の眠気などが気になる場合には、睡眠時無呼吸症候群の評価も重要です。
睡眠時無呼吸症候群がある場合、減量すれば治る?
肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、減量によって呼吸障害の程度が改善する場合があります。
特に、体重減少によって上気道周囲の脂肪蓄積などが変化することが、症状の改善につながると考えられています。
ただし、減量によってすべてのOSAが治癒するわけではありません。
OSAには、肥満だけでなく、顎や咽頭の形態、上気道の構造、年齢なども関係しています。
また、症状が改善しても、睡眠中の呼吸障害が十分に改善しているとは限りません。
そのため、CPAP療法などを受けている方は、体重が減ったからといって自己判断で治療を終了するべきではありません。
必要に応じて睡眠検査などで再評価し、治療方針を検討することが重要です。
当院でも睡眠時無呼吸症候群の診療に対応しており、肥満や体重増加に加えて、いびきや日中の眠気が気になる方では、睡眠の状態も含めて評価することができます。
忙しい人は、何から生活習慣を見直せばいい?
ここまで、睡眠不足、ストレス、不規則な勤務、睡眠時無呼吸症候群などと肥満の関係を説明してきました。
しかし、仕事や家庭の事情によって、生活習慣をすぐに改善することが難しい方もいるでしょう。
そのような場合には、すべてを一度に変えようとする必要はありません。
例えば、次のような取り組みから始めることが考えられます。
| 生活上の悩み | 取り組みの例 |
|---|---|
| 睡眠時間が短い | 可能な範囲で就寝時間を早め、睡眠時間を確保する |
| 夜勤・交代勤務がある | 勤務に合わせて睡眠環境や食事のタイミングを整える |
| ストレスで間食が増える | 食べたくなる状況を把握し、食事以外の対処法も用意する |
| デスクワークが多い | 長時間の座位を減らし、日常の活動量を増やす |
| いびき・日中の眠気がある | 睡眠時無呼吸症候群などの可能性を医療機関で評価する |
こうした取り組みは、必ずしも短期間で大きな体重減少につながるわけではありません。
それでも、長期的な健康管理や体重管理を続けやすくするために役立つ場合があります。
また、強い食欲や生活環境などの影響で、生活習慣の改善だけでは十分な減量が難しい場合には、医学的な評価を行ったうえで、薬物療法を検討することもあります。
ただし、薬物療法の必要性は、BMIや健康状態、治療による利益とリスクなどを踏まえて判断する必要があります。
肥満の原因を、食事と運動だけで考えないことが大切
肥満には、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが関係しています。
しかし、実際には、そのバランスを左右する要因として、睡眠、ストレス、生活リズム、食行動などが複雑に関係しています。
そのため、食事量や運動量だけに注目しても、体重が増加した背景を十分に理解できない場合があります。
特に、仕事が忙しい方や生活リズムが不規則な方では、理想的な食事や運動の習慣を維持することが難しいこともあるでしょう。
大切なのは、生活習慣を改善できないことを努力不足と考えるのではなく、現在の生活の中で取り組める方法を見つけることです。
医療ダイエットでは、身体の状態だけでなく、こうした生活背景も踏まえながら、一人ひとりに合った体重管理の方法を検討することが重要です。
遺伝や体質で太りやすさは変わる?肥満と遺伝子の関係
同じくらい食べているのに、太りやすい人と太りにくい人がいるのはなぜ?
「友人と同じくらい食べているのに、自分だけ太る」
「家族に太っている人が多いから、自分も太りやすい気がする」
「生まれつき太りやすい体質はあるの?」
このような疑問を持ったことはないでしょうか。
体重の増減には、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが大きく関係しています。
しかし、食欲の強さや満腹感の感じ方、エネルギー消費量、脂肪の蓄積しやすさなどには個人差があります。
こうした違いには、生活習慣や環境だけでなく、遺伝的な要因も関係していることがわかっています。
例えば、同じ食事を摂取していても、身体活動量や体格、消費エネルギー量が異なれば、体重の変化は同じとは限りません。
また、食欲を調節する脳やホルモンの働きにも個人差があり、食事量を減らしたときに感じる空腹感の強さが異なる場合があります。
太りやすさには生まれ持った体質も関係しますが、それだけで体重が決まるわけではありません。
肥満は、遺伝と生活環境が複雑に関係して生じる状態なのです。
肥満は遺伝する?遺伝率の意味を正しく理解しよう
肥満には遺伝的な要因が関係しており、双子研究や家族研究などから、BMIの個人差には一定の遺伝的影響があることが知られています。
研究によって推定値は異なりますが、BMIの遺伝率はおおむね40〜70%程度と報告されることがあります。
ただし、この数字の意味には注意が必要です。
例えば、遺伝率が60%だからといって、「ある人の肥満の原因の60%が遺伝で、残り40%が生活習慣」という意味ではありません。
遺伝率とは、特定の集団において観察されるBMIなどの個人差のうち、遺伝的な違いと関連する割合を示す統計的な指標です。
つまり、ある人がどのくらい太るのかを、遺伝率だけで予測することはできません。
また、遺伝率は、研究対象となる集団や生活環境によって変わります。
例えば、食生活や身体活動などの環境が大きく変化すれば、肥満の発生状況も変わる可能性があります。
肥満に遺伝が関係することと、肥満が遺伝によって必ず決まることは、同じではありません。
太りやすさに関係する遺伝子はある?
現在までに、肥満やBMIに関係する多数の遺伝的変異が報告されています。
その代表的なものの一つが、FTO遺伝子の領域に存在する遺伝的変異です。
FTO遺伝子領域の一部の変異は、集団研究においてBMIや肥満リスクとの関連が報告されています。
また、食欲調節に関係するMC4R遺伝子も、肥満の研究で重要な役割を持っています。
MC4Rは、脳の視床下部などで食欲やエネルギーバランスの調節に関わる受容体をつくる遺伝子です。
ただし、FTOやMC4Rに関係する遺伝的変異があるからといって、必ず肥満になるわけではありません。
一般的な肥満では、特定の一つの遺伝子が原因となることは少なく、多数の遺伝的変異が少しずつ影響していると考えられています。
このような肥満は「多遺伝子性肥満」と呼ばれます。
主な遺伝的要因を整理すると、以下のようになります。
| 遺伝的要因 | 特徴 |
|---|---|
| FTO遺伝子領域の変異 | BMIや肥満リスクとの関連が報告されている |
| MC4R関連の変異 | 食欲・エネルギーバランスの調節に関係する |
| その他多数の遺伝的変異 | 一つひとつの影響は小さくても、組み合わさることで肥満リスクに関係する |
| 一部のまれな遺伝子異常 | 幼少期からの重度肥満などに関係する場合がある |
なお、同じ遺伝子に関係する変異でも、種類によって影響の大きさは異なります。
一般的な肥満では、一つの「太る遺伝子」があるというよりも、多数の遺伝的要因が組み合わさって太りやすさに関係していると考える方が正確です。
遺伝は食欲や満腹感にも関係する?
肥満に関係する遺伝的要因は、基礎代謝や脂肪の蓄積だけでなく、食欲の調節にも関係しています。
私たちの脳は、レプチンやグレリンなどのホルモン、神経信号、身体のエネルギー状態などをもとに、空腹感や満腹感を調節しています。
こうした仕組みに関係する遺伝的な違いが、食事摂取量や肥満リスクに影響する場合があります。
例えば、同じように食事量を減らしていても、空腹感が強く現れる方と、比較的無理なく続けられる方がいます。
また、食べ物への欲求や満腹感の感じ方にも個人差があります。
ただし、こうした違いがすべて遺伝によって決まるわけではありません。
睡眠不足やストレス、食事の内容、生活習慣なども食欲に影響しています。
そのため、食欲の強さから特定の遺伝子の異常を推測することはできません。
食事制限を続ける難しさには、本人の意志だけでなく、食欲を調節する身体の仕組みや体質も関係している可能性があります。
親が肥満だと、自分も肥満になりやすい?
両親や兄弟姉妹など、家族に肥満の方がいる場合には、自分自身も肥満になりやすい可能性があります。
ただし、家族内で肥満が多い理由は、遺伝だけとは限りません。
家族は遺伝的な特徴を共有するだけでなく、食生活や生活環境を共有している場合も多いためです。
例えば、次のような生活習慣が家族で共通していることがあります。
-
食事の量や味付け
-
間食や飲み物の習慣
-
食事をする時間
-
身体活動や運動の習慣
-
睡眠や生活リズム
このように、家族内で肥満が多い場合には、遺伝的な体質と生活環境の両方が関係している可能性があります。
一方で、家族に肥満の方が多くても、本人が必ず肥満になるわけではありません。
また、家族に肥満の方がいなくても、生活環境や健康状態によって肥満になることがあります。
そのため、家族歴だけで将来の肥満を決めつけることはできません。
遺伝的に太りやすい人は、ダイエットしても痩せない?
「太りやすい体質なら、ダイエットしても意味がないのでは?」
そう考える方もいるかもしれません。
しかし、遺伝的に肥満になりやすいことと、減量できないことは同じではありません。
2024年に『Cell Metabolism』に掲載された研究では、英国の約34万人を対象に、肥満に関係する遺伝的リスクと生活習慣の関係が検討されました。
この研究では、遺伝的な肥満リスクが高い人でも、食事や身体活動、睡眠などの生活習慣が良好な場合には、肥満や関連する健康問題のリスクが低い傾向が認められました。
また、2026年に報告された長期観察研究でも、健康的な生活習慣が、BMIに対する遺伝的リスクの影響を弱める方向に関連していました。
これらの結果は、遺伝的に太りやすい体質であっても、生活習慣が体重管理に関係することを示しています。
ただし、これらは主に観察研究であり、生活習慣を改善すれば誰でも同じ程度の減量ができると証明したものではありません。
また、遺伝的なリスクが高い方では、生活習慣を改善しても、体重管理が難しい場合があります。
大切なのは、遺伝だからと諦めることでも、努力すれば必ず痩せられると考えることでもありません。
自分の体質や生活環境を踏まえて、継続できる方法を検討することが重要です。
遺伝による肥満と、まれな遺伝性肥満症は違う
これまで説明してきた一般的な肥満では、多数の遺伝的要因と生活環境が関係しています。
一方、まれに特定の遺伝子の異常が、重度の肥満の主な原因となる場合があります。
これを単一遺伝子性肥満と呼びます。
代表的なものには、レプチンやレプチン受容体、MC4Rなど、食欲調節に関係する経路の遺伝子異常があります。
このような病態では、幼少期から非常に強い食欲がみられたり、早い時期から重度の肥満を発症したりする場合があります。
ただし、小児期から肥満がある方のすべてに、特定の遺伝子異常が認められるわけではありません。
また、成人になってから体重が増え始めた場合に、一般的な遺伝子検査を一律に行う必要があるわけでもありません。
特に幼少期からの高度肥満、著しい過食、発達や内分泌機能の異常、特徴的な家族歴などがある場合には、専門的な評価が必要になることがあります。
一般的な太りやすい体質と、特定の遺伝子異常が原因となる肥満症は区別して考えることが大切です。
肥満の遺伝子検査を受ければ、太りやすさがわかる?
近年では、遺伝子情報から肥満になりやすさを評価しようとする研究も進められています。
例えば、多数の遺伝的変異を組み合わせて肥満リスクを推定する「ポリジェニックリスクスコア(PGS)」という方法があります。
2025年に『Nature Medicine』に掲載された研究では、最大約510万人の遺伝情報を用いて、BMIや肥満リスクの予測精度を改善する取り組みが報告されました。
こうした研究によって、遺伝的な肥満リスクをより詳しく評価できる可能性が示されています。
ただし、現時点では、遺伝情報だけで将来の体重やダイエットの効果を正確に予測することはできません。
また、遺伝的リスクの予測精度は、祖先集団や使用するモデルなどによって異なる場合があります。
そのため、一般的な医療ダイエットを始める際に、すべての方が遺伝子検査を受ける必要はありません。
実際の診療では、体重やBMI、腹囲、体組成、健康状態、生活習慣などを評価することが基本になります。
遺伝子検査については、検査結果をどのように治療へ活用できるのかも含めて慎重に判断する必要があります。
太りやすい体質と医療ダイエットの関係
遺伝的な要因によって、食欲の強さや肥満になりやすさに個人差が生じることがあります。
そのため、同じ食事制限や運動を行っていても、すべての方が同じように減量できるとは限りません。
一方、遺伝的な肥満リスクが高い方でも、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることには意味があります。
また、生活習慣の改善だけでは十分な減量が難しい場合には、医学的な評価を行ったうえで、薬物療法を検討することもあります。
例えば、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲や満腹感の調節に働きかけ、食事摂取量の減少を通じて減量を支援します。
ただし、現時点では、一般的な肥満関連遺伝子の情報だけで、マンジャロなどの薬剤の減量効果を正確に予測したり、最適な薬剤を決定したりできるわけではありません。
薬物療法の必要性や適否は、BMI、健康状態、既往歴、生活背景、治療上のリスクなどを踏まえて判断する必要があります。
当院では、体重だけでなくInBodyによる体組成評価なども参考にしながら、患者さん一人ひとりに合った体重管理を検討しています。
太りやすい体質があったとしても、それだけで減量を諦める必要はありません。
一方で、体重管理が難しいことを本人の努力不足と決めつけるのも適切ではありません。
遺伝や体質、生活環境による違いを理解し、無理なく継続できる方法を選ぶことが大切です。
食事制限をすると、なぜ痩せにくくなる?停滞期と身体の適応
最初は順調に痩せたのに、途中から体重が減らなくなるのはなぜ?
「食事量を減らしたら、最初の1か月は順調に体重が減った」
「以前と同じ食事制限を続けているのに、最近は体重が変わらない」
「ダイエットを続けるほど空腹感が強くなり、我慢できなくなってしまう」
このような経験はないでしょうか。
ダイエットを始めた直後は体重が順調に減少していても、時間がたつにつれて減量の速度が遅くなり、やがて体重がほとんど変化しなくなることがあります。
このような状態は、一般的に「ダイエットの停滞期」と呼ばれています。
停滞期になると、「食事制限が足りないのでは?」「もっと運動しなければいけないのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、体重が減りにくくなる背景には、食事や運動の問題だけでなく、減量に伴う身体の変化が関係している場合があります。
特に重要なのが、消費エネルギーの減少と、食欲を高めようとする身体の反応です。
これらは、体重減少に対して身体が適応する仕組みの一部です。
体重が減ると、身体が消費するエネルギーも減少する
ダイエットを始めたときには、摂取エネルギーを減らすことで、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回る状態になります。
このエネルギー不足によって、身体に蓄えられた脂肪などが利用され、体重が減少します。
しかし、体重が減ると、身体が必要とするエネルギー量も変化します。
例えば、80kgの身体を動かす場合と、70kgの身体を動かす場合では、同じ距離を歩くとしても、一般的に身体が軽い方が必要なエネルギーは少なくなります。
また、減量によって脂肪や筋肉などの組織量が変化すると、安静時のエネルギー消費量も変わる場合があります。
つまり、減量前と同じ量の食事を続けていても、体重が減ったあとはエネルギー不足が小さくなることがあります。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
| 状態 | 1日の摂取エネルギー | 1日の消費エネルギー | 差 |
|---|---|---|---|
| 減量開始時 | 1,800kcal | 2,400kcal | −600kcal |
| 減量が進んだあと | 1,800kcal | 2,100kcal | −300kcal |
| 体重が安定した状態 | 1,800kcal | 1,800kcal | 0kcal |
※身体の変化を説明するための仮想例であり、実際の消費エネルギー量や減量経過を示すものではありません。
このように、摂取エネルギー量が変わらなくても、消費エネルギー量が減少すれば、減量の速度は徐々に遅くなります。
そして、摂取エネルギー量と消費エネルギー量が釣り合うと、体重は新たな水準で安定するようになります。
停滞期は、エネルギーバランスの法則が働かなくなった状態ではなく、減量によってエネルギーバランスが変化した結果として起こる場合があるのです。
身体には、エネルギー消費を抑えようとする仕組みがある
減量によるエネルギー消費の低下には、身体が軽くなったことだけでなく、代謝の適応反応が関係する場合もあります。
この現象は「適応性熱産生(adaptive thermogenesis)」と呼ばれています。
通常、体重や筋肉量などが減少すれば、それに応じてエネルギー消費量も低下すると予測されます。
しかし、減量中や減量後には、体重や体組成の変化から予測される以上にエネルギー消費量が低下する場合があります。
これが適応性熱産生です。
身体がエネルギー不足に対応し、エネルギー消費を抑える方向に働く反応の一つと考えられています。
ただし、適応性熱産生の大きさには個人差があり、測定方法や減量後の状態によっても研究結果は異なります。
また、体重が減りにくくなる原因のすべてを、適応性熱産生で説明できるわけではありません。
実際には、体重が軽くなったことによる消費エネルギーの減少、日常活動量の変化、食事摂取量の変化なども関係しています。
「身体が省エネモードになる」という表現を聞くことがありますが、これは身体がまったくエネルギーを消費しなくなるという意味ではありません。
減量によって必要なエネルギー量が減り、さらに一部の方では代謝の適応反応が加わることで、以前より体重が減りにくくなる場合があるということです。
ダイエットをすると食欲が強くなるのはなぜ?
減量中に生じる変化は、エネルギー消費量の低下だけではありません。
身体は、体重の減少に対して食欲を高める方向にも反応することがあります。
この仕組みには、レプチンやグレリンなどのホルモンが関係しています。
レプチンは主に脂肪組織から分泌され、身体に蓄えられているエネルギーの状態を脳に伝えるホルモンです。
体脂肪が減少するとレプチン濃度も低下し、食欲を抑える信号が弱まる方向に働くことがあります。
一方、グレリンは主に胃から分泌されるホルモンで、空腹感や食欲を高める方向に作用します。
減量後にはグレリン濃度が上昇する場合があり、以前より空腹を感じやすくなる可能性があります。
さらに、満腹感に関係するPYYなどのホルモンにも変化が生じることが報告されています。
主な変化を整理すると、次のようになります。
| ホルモン | 減量後にみられる変化の例 | 食欲への影響 |
|---|---|---|
| レプチン | 低下 | 食欲を抑える信号が弱まる方向に働く |
| グレリン | 上昇 | 空腹感が強まりやすくなる |
| PYY | 低下 | 食後の満腹感に影響する可能性がある |
※研究集団で認められた傾向であり、すべての方で同じ変化が起こるわけではありません。
このような変化によって、ダイエットを始めたころよりも食事制限を続けることが難しくなる場合があります。
減量後に空腹感が強くなることは、単に意志が弱くなったからではなく、身体の生理的な反応が関係している可能性があるのです。
減量後の食欲の変化は、長期間続くこともある
減量後のホルモン変化について調べた代表的な研究に、2011年に『New England Journal of Medicine』に掲載された研究があります。
この研究では、過体重または肥満のある糖尿病のない成人50人を対象に、10週間の低エネルギー食による減量プログラムを実施しました。
その後、減量前、減量直後、さらに約1年後のホルモン濃度や食欲を比較しています。
10週間の減量プログラムを完了し、追跡評価まで受けた34人では、減量直後の平均体重減少量は約13.5kgでした。
研究では、減量後に次のような変化が確認されました。
-
レプチン濃度の低下
-
グレリン濃度の上昇
-
満腹感に関係する一部のホルモンの変化
-
主観的な空腹感の増加
さらに、減量開始から約1年後にも、食欲に関係するホルモンや空腹感の一部に、減量前とは異なる状態が認められました。
この結果は、減量に伴う食欲調節の変化が、一時的なものにとどまらない可能性を示しています。
ただし、研究参加者は比較的少なく、短期間に大きく減量するプログラムを用いているため、一般的な緩やかなダイエットでも同じ変化が起こるとは限りません。
それでも、体重を減らしたあとも食欲が強い状態が続く場合があるという点は、リバウンドの仕組みを理解するうえで重要です。
停滞期は何週間続く?いつから起こる?
「ダイエットの停滞期は何週間目から始まるの?」
「停滞期になったら、何週間待てば再び痩せ始める?」
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
しかし、医学的にすべての方に共通する停滞期の開始時期や期間が決まっているわけではありません。
減量の速度や停滞するタイミングは、もともとの体重、摂取エネルギー量、身体活動量、減量方法などによって異なります。
また、体重は体脂肪だけでなく、水分量や消化管内容物などによっても変動します。
例えば、塩分の多い食事を摂取したあとや、便秘が続いているときには、一時的に体重が増加することがあります。
そのため、数日間体重が減らないだけで、減量が停滞したと判断することは適切ではありません。
一方、数週間にわたって体重の平均値がほとんど変わらない場合には、食事・活動量・測定条件などを振り返ることが役立ちます。
ただし、何週間体重が変わらなければ必ず停滞期と診断する、といった統一された医学的基準があるわけではありません。
短期間の体重変化だけで判断せず、一定期間の体重の推移を確認することが大切です。
食事制限を続けているのに痩せない場合、何を見直せばいい?
体重が減りにくくなった場合、最初に考えるべきなのは、食事量をさらに大幅に減らすことではありません。
まずは、現在の摂取エネルギー量と消費エネルギー量に変化がないかを確認することが重要です。
例えば、次のような点を見直してみましょう。
① 食事や間食の量が変わっていないか
食事制限を続けているつもりでも、調味料、飲み物、間食などによって、想定より摂取エネルギー量が多くなっている場合があります。
また、減量開始時には厳しく管理していた食事が、時間の経過とともに少しずつ元に戻っていることもあります。
ただし、自己申告による食事記録には誤差があるため、食事量が正確に把握できない場合もあります。
② 日常の身体活動量が減っていないか
減量中の疲労や空腹感によって、無意識のうちに身体を動かす機会が減ることがあります。
例えば、以前より歩く距離が短くなったり、座っている時間が増えたりする場合です。
運動時間だけでなく、1日の活動量全体を確認することが重要です。
③ 体重が減ったことで、必要なエネルギー量が変わっていないか
体重が軽くなると、安静時や身体活動時に必要なエネルギー量が減少する場合があります。
そのため、減量開始時に設定した食事内容が、現在の身体の状態に合っているかを見直すことも大切です。
④ 体重の変化を短期間だけで判断していないか
体重は水分や便通などによって日々変動します。
毎日の数値だけでなく、一定期間の平均値や傾向を確認しましょう。
これらを評価したうえで、必要に応じて食事内容や身体活動量を調整することが考えられます。
ただし、極端な食事制限や過度な運動を行うと、栄養不足や筋肉量の減少などにつながる可能性があるため、注意が必要です。
停滞期を抜けるために、さらに食事を減らすべき?
体重が減らなくなると、「もっと食べる量を減らせばよい」と考える方もいるかもしれません。
確かに、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を下回れば、長期的には身体のエネルギー貯蔵が減少する方向に働きます。
しかし、すでに食事量を大きく減らしている場合には、さらに制限を強めることが適切とは限りません。
極端な食事制限では、必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足する可能性があります。
また、筋肉を含む除脂肪量の減少や、強い空腹感、疲労などによって、長期間継続することが難しくなる場合もあります。
そのため、停滞期の対応では、単純に摂取カロリーを減らすだけでなく、食事内容や活動量、体組成の変化などを総合的に評価することが重要です。
特に、食事量が十分でないにもかかわらず体重が減少しない場合には、摂取量の評価だけでなく、浮腫、便秘、服用中の薬剤、内分泌疾患などの可能性も含めて、必要に応じて医学的に確認することが大切です。
停滞期に入ったからといって、無理に食事制限を強める必要があるとは限りません。
GLP-1・GIP/GLP-1製剤は、停滞期にどのように関係する?
近年、医療ダイエットでは、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬が注目されています。
これらの薬剤は、食欲や満腹感の調節に働きかけ、食事摂取量の減少を支援する薬剤です。
食事制限による減量では、体重が減少するにつれて食欲が強くなり、食事量を維持することが難しくなる場合があります。
GLP-1受容体作動薬などは、こうした食欲調節の仕組みに作用することで、減量を支援します。
2024年に『Obesity』に掲載された研究では、食事制限、セマグルチド、チルゼパチド、肥満外科手術による体重減少の経過が数理モデルを用いて比較されました。
この研究では、薬物療法や肥満外科手術では、食事制限のみの場合と比べて、体重減少に伴う食欲増加の影響が弱まる可能性が示されています。
ただし、これは数理モデルを用いた解析であり、すべての患者さんで薬物療法が停滞期を解消すると証明したものではありません。
また、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を使用していても、いずれ体重減少の速度が遅くなり、体重が安定する場合があります。
薬物療法は、身体のエネルギーバランスを無視して痩せる方法ではなく、食欲や食事摂取量を調節することで減量を支援する方法です。
なお、薬物療法の使用については、BMIや健康状態、既往歴、副作用のリスクなどを踏まえて判断する必要があります。
停滞期こそ、体重だけでなく体組成にも注目しよう
体重が減りにくくなったときには、体重計の数字だけで判断しないことも重要です。
例えば、筋力トレーニングを継続している方では、体脂肪量が減少する一方で、筋肉量や体内の水分量などが変化し、体重の減少が目立たない場合があります。
また、体重が安定していても、腹囲などの指標に変化がみられることがあります。
そのため、減量の経過を評価する際には、体重だけでなく、腹囲や体組成、身体機能などを確認することが役立ちます。
当院では体組成分析装置「InBody」を導入しており、体脂肪量や骨格筋量などの推定値を確認できます。
ただし、InBodyは水分状態などの影響を受けるため、1回の測定結果だけで体脂肪や筋肉の増減を判断することはできません。
できるだけ同じ条件で継続的に測定し、体重や腹囲、食事・運動の状況などと合わせて評価することが重要です。
体重の減少が一時的に止まっていても、それだけでダイエットが失敗したとは限りません。
停滞期は、減量方法を見直すきっかけにもなる
ダイエットを続けていると、体重が減りにくくなる時期が訪れることがあります。
その背景には、体重減少による消費エネルギーの低下、食欲の増加、身体活動量の変化などが関係している場合があります。
ただし、停滞期の原因は一つではなく、すべての方に同じ対策が適しているわけではありません。
食事内容を見直すことが役立つ方もいれば、身体活動量を増やすことが効果的な方もいます。
また、強い空腹感によって食事制限の継続が難しい方では、医学的な評価を行ったうえで、薬物療法を検討する場合もあります。
重要なのは、体重が減らなくなったことを理由に、無理な食事制限や過度な運動を始めないことです。
ダイエットの停滞期は、身体の変化を理解し、今の自分に合った減量方法を見直す機会でもあります。
長期的な体重管理では、短期間の減量速度だけにとらわれず、健康状態や体組成の変化にも目を向けながら、継続できる方法を選ぶことが大切です。
肥満の原因になる病気や薬剤とは?生活習慣以外の原因を解説
食事や運動を変えていないのに太るのは、病気が原因かもしれない?
「食事量は変わっていないのに、急に体重が増えた」
「以前より疲れやすくなり、体重も増えてきた」
「薬を飲み始めてから、太りやすくなった気がする」
このような変化がある場合、生活習慣だけでなく、病気や服用中の薬剤が体重増加に関係している可能性があります。
肥満の多くは、遺伝的な体質、食生活、身体活動量、睡眠、生活環境など、さまざまな要因が組み合わさって生じます。
しかし、一部の方では、ホルモンの異常や薬剤の影響などによって、体重が増加しやすくなる場合があります。
例えば、甲状腺機能低下症ではエネルギー消費量が低下することがあり、クッシング症候群では体脂肪の分布や代謝が変化します。
また、ステロイドや一部の精神科薬、糖尿病治療薬などでも体重増加がみられることがあります。
そのため、体重が増加した背景を確認せず、すべてを食べすぎや運動不足の問題として考えることは適切ではありません。
特に、急激な体重増加や、ほかの身体症状を伴う場合には、医学的な評価が重要です。
甲状腺機能低下症|代謝が低下して体重が増えることがある
甲状腺は、首の前側にある小さな臓器で、身体のエネルギー代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは、さまざまな臓器の働きやエネルギー消費に関係しています。
甲状腺機能低下症では、このホルモンの働きが不足し、身体の代謝が低下することがあります。
代表的な症状には、次のようなものがあります。
-
疲れやすい、だるさが続く
-
寒がりになった
-
便秘が続く
-
皮膚が乾燥する
-
顔や身体がむくみやすい
-
体重が増加する
-
脈が遅くなる
ただし、これらの症状は甲状腺機能低下症に特有のものではありません。
また、甲状腺機能低下症による体重増加には、水分や塩分の貯留が関係している場合もあります。
そのため、甲状腺機能低下症が原因で体重が増加した場合でも、すべてが体脂肪の増加によるものとは限りません。
さらに、甲状腺ホルモンの不足を治療すれば、必ず大幅に痩せられるというわけでもありません。
甲状腺機能が正常な方に対して、減量目的で甲状腺ホルモンを投与することは、不整脈や骨量減少などのリスクがあるため適切ではありません。
体重増加に加えて、強い疲労感や寒がり、便秘、むくみなどがある場合には、甲状腺機能の評価を検討することがあります。
甲状腺の検査は何を測定する?
甲状腺機能低下症が疑われる場合には、血液検査で甲状腺ホルモンの状態を確認します。
主な検査項目は、TSHと遊離T4(FT4)です。
| 検査項目 | 主な役割 |
|---|---|
| TSH | 下垂体から分泌され、甲状腺を刺激するホルモン |
| FT4 | 血液中の遊離型甲状腺ホルモンで、甲状腺機能の評価に用いる |
一般的な原発性甲状腺機能低下症では、TSHが上昇し、FT4が低下することがあります。
ただし、検査結果は基準値や症状、既往歴などを踏まえて解釈する必要があります。
また、肥満のある方では、明らかな甲状腺機能低下症がなくても、TSHが軽度上昇する場合があります。
そのため、TSHが少し高いだけで、体重増加の原因をすべて甲状腺機能低下症と判断することはできません。
欧州内分泌学会のガイドラインでは、肥満のある患者さんに甲状腺機能検査を行うことが推奨されています。
一方、検査の必要性や範囲は、症状や既往歴、これまでの検査結果などに応じて判断することが重要です。
クッシング症候群|コルチゾールの過剰によって肥満が生じることがある
クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンが過剰になることで生じる疾患です。
コルチゾールは、副腎から分泌されるホルモンで、血糖値やエネルギー代謝、ストレスへの反応などに関係しています。
しかし、コルチゾールが慢性的に過剰になると、身体にさまざまな変化が生じます。
代表的な症状や身体所見には、次のようなものがあります。
-
顔や体幹を中心とした脂肪の増加
-
手足が比較的細くなる
-
筋力低下、特に太ももや肩周囲の筋力低下
-
皮膚が薄くなり、あざができやすくなる
-
腹部などに幅の広い赤紫色の皮膚線条ができる
-
高血圧や糖代謝異常を伴う
ただし、クッシング症候群は比較的まれな疾患です。
肥満のある方すべてに、コルチゾールの異常が認められるわけではありません。
また、一般的な肥満でも腹部に脂肪が蓄積することがあるため、お腹周りに脂肪が多いという理由だけでクッシング症候群を疑うことは適切ではありません。
体重増加に加えて、特徴的な皮膚症状や筋力低下、高血圧などが複数みられる場合には、クッシング症候群を含む内分泌疾患の評価を検討します。
クッシング症候群は普通の血液検査でわかる?
クッシング症候群が疑われる場合には、コルチゾールの分泌状態を調べる検査を行います。
ただし、コルチゾールは時間帯やストレスなどによって分泌量が変動するホルモンです。
そのため、通常の血液検査でコルチゾールを1回測定するだけでは、クッシング症候群を正確に診断できません。
代表的なスクリーニング検査には、以下のようなものがあります。
-
1mgデキサメタゾン抑制試験
-
深夜唾液中コルチゾール測定
-
24時間尿中遊離コルチゾール測定
どの検査を選択するかは、症状や服用薬、生活リズムなどによって異なります。
また、肥満があるという理由だけで、すべての方にクッシング症候群の検査を行うことは一般的には推奨されていません。
クッシング症候群を疑う特徴的な症状や所見がある場合に、必要な検査を検討することが大切です。
男性ホルモンの低下も、体脂肪や筋肉量に関係する?
男性では、テストステロンの低下が体組成の変化に関係する場合があります。
テストステロンは、性機能だけでなく、筋肉量や骨、脂肪分布などに関係するホルモンです。
テストステロンが低下すると、筋肉量の減少や体脂肪量の増加などと関連することがあります。
一方、肥満そのものがテストステロン値の低下に関係する場合もあります。
特に肥満のある男性では、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の低下などによって、総テストステロン値が低くなることがあります。
また、一部では視床下部・下垂体・精巣系の機能的な抑制が関係する場合もあります。
そのため、肥満とテストステロンの低下には、双方向の関係があると考えられています。
ただし、総テストステロン値が低いことだけで、男性更年期障害や性腺機能低下症と診断できるわけではありません。
性欲低下、勃起機能の低下、疲労感などの症状や、朝の採血によるホルモン評価などが必要です。
また、肥満に関連する機能的なテストステロン低下では、減量によってホルモン値が改善する場合があります。
そのため、体脂肪が多い男性に対して、テストステロン補充療法を減量目的で一律に行うことは適切ではありません。
男性ホルモンと肥満の関係については、男性更年期の記事でも詳しく解説しています。
薬の副作用で太ることもある?薬剤性体重増加とは
体重増加の原因として、見落とされやすいものの一つが服用中の薬剤です。
一部の薬剤では、食欲の増加、エネルギー消費への影響、水分貯留などによって、体重が増加する場合があります。
ただし、同じ種類の薬剤でも、すべての薬が同じ程度に体重増加を引き起こすわけではありません。
また、薬剤の影響には個人差があります。
体重増加との関連が知られている主な薬剤には、以下のようなものがあります。
| 薬剤の種類 | 代表例 | 体重増加との関係 |
|---|---|---|
| ステロイド | プレドニゾロンなど | 食欲増加、脂肪分布の変化、水分貯留など |
| 一部の抗精神病薬 | オランザピン、クロザピンなど | 食欲や代謝への影響 |
| 一部の抗うつ薬 | ミルタザピン、パロキセチンなど | 食欲増加などがみられる場合がある |
| 一部の糖尿病治療薬 | インスリン、SU薬、ピオグリタゾンなど | 脂肪蓄積や水分貯留など |
| 一部の抗てんかん薬・気分安定薬 | バルプロ酸、プレガバリンなど | 食欲や体重への影響 |
| 一部のβ遮断薬 | アテノロール、メトプロロールなど | 体重増加との関連が報告されている |
※薬剤ごとの体重への影響は異なり、必ず体重が増えるという意味ではありません。
例えば、糖尿病治療薬には体重増加に関係するものがある一方、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など、体重減少につながるものもあります。
また、抗うつ薬や抗精神病薬についても、薬剤ごとに体重への影響が異なります。
そのため、現在服用している薬が体重増加に関係している可能性がある場合には、薬剤の種類や服用開始時期、体重の推移などを確認することが重要です。
薬を飲み始めてから太った場合、自己判断でやめてもいい?
薬剤を開始したあとに体重が増えると、「この薬が原因なら、飲むのをやめればいいのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、自己判断で服用を中止することは避ける必要があります。
特に、ステロイドや精神科の薬剤、糖尿病治療薬などでは、急に中止することで原疾患の悪化や離脱症状などが生じる場合があります。
また、体重増加が薬剤によるものなのか、病気そのものや生活習慣の変化によるものなのかを確認することも重要です。
薬剤の影響が疑われる場合には、処方医と相談し、必要に応じて以下のような対応を検討します。
-
体重増加と薬剤開始時期の関係を確認する
-
同じ疾患に対して、体重への影響が少ない代替薬があるか検討する
-
必要に応じて用量や治療方針を見直す
-
食事や身体活動などの生活習慣も評価する
-
体重や健康状態の変化を継続的に確認する
ただし、体重への影響が少ない薬剤に変更できるとは限りません。
原疾患の治療効果や安全性が優先される場合もあるため、処方医と相談して判断することが大切です。
薬剤による体重増加が疑われる場合には、自己判断で薬を中止せず、治療内容を見直せるか医師に相談しましょう。
急に体重が増えた場合は、脂肪以外の原因にも注意
短期間で体重が急増した場合、必ずしも体脂肪が増えたとは限りません。
体重には脂肪だけでなく、筋肉、水分、消化管内容物なども含まれています。
例えば、身体に水分が過剰にたまる「浮腫」が生じると、短期間で体重が増えることがあります。
浮腫の原因には、心不全、腎疾患、肝疾患、薬剤など、さまざまなものがあります。
特に次のような症状を伴う場合には注意が必要です。
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数日間で急に体重が増えた
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足や顔のむくみが強くなった
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息切れや呼吸困難がある
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横になると息苦しい
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尿量が減少している
このような場合には、単なる肥満として食事制限を始めるのではなく、早めに医療機関で評価を受けることが重要です。
特に呼吸困難や強い息苦しさを伴う場合には、緊急の対応が必要になることがあります。
短期間の急激な体重増加は、体脂肪の増加ではなく、病気による水分貯留が関係している可能性もあります。
体重が増えたら、全員がホルモン検査を受けるべき?
ここまで、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、男性ホルモンの低下など、体重増加に関係する可能性のある疾患について説明してきました。
しかし、肥満のある方すべてに、これらのホルモン異常が認められるわけではありません。
また、体重が増加したという理由だけで、すべてのホルモンを一律に測定する必要もありません。
例えば、甲状腺機能の評価については、欧州内分泌学会では肥満患者へのTSH測定が推奨されています。
一方、2026年の米国の肥満診療基準では、甲状腺機能低下症を疑う症状がある場合などに検査を検討する考え方が示されています。
このように、ガイドラインによって検査の対象に違いがあります。
一方、クッシング症候群については、一般的な肥満患者全員へのスクリーニングではなく、特徴的な症状や所見がある場合に検討することが基本です。
また、男性ホルモンについても、症状や身体所見などを踏まえて検査の必要性を判断します。
重要なのは、検査項目を増やすこと自体ではなく、体重が増えた背景を考え、必要な検査を選択することです。
医療ダイエットを始める前に、体重増加の原因を確認しよう
肥満の多くは、遺伝的な体質、食事、運動、睡眠、ストレス、生活環境など、さまざまな要因によって生じます。
しかし、一部の方では、内分泌疾患や薬剤の影響などが体重増加に関係している場合があります。
そのため、医療ダイエットを始める際には、現在の体重やBMIだけでなく、体重が増え始めた時期、生活習慣の変化、既往歴、服用中の薬剤などを確認することが重要です。
また、必要に応じて血液検査などを行い、体重増加の背景に病気が関係していないかを評価します。
特に、体重増加に加えて強い疲労感、むくみ、筋力低下などがある場合には、減量薬の使用を検討する前に、原因疾患の評価が優先されることがあります。
当院では、患者さんの健康状態や生活背景を踏まえて、自由診療による薬物療法も含めた体重管理を検討しています。
ただし、薬物療法がすべての方に必要というわけではありません。
医療ダイエットでは、単に体重を減らすことだけでなく、なぜ体重が増えたのかを理解し、その原因に合った方法を選ぶことが大切です。
太りやすさに合わせた体重管理と医療ダイエット
自分に合ったダイエット方法を選ぶことが大切
「食事を減らしても、空腹感が強くて続かない」
「運動しているのに、なかなか体重が減らない」
「以前は痩せられたのに、最近はリバウンドを繰り返している」
このように、ダイエットで悩む理由は人によって異なります。
これまで説明してきたように、肥満には食欲、エネルギー消費、年齢、遺伝的な体質、睡眠、ストレス、生活環境など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、全員が同じ食事制限や運動を行っても、必ずしも同じように減量できるわけではありません。
例えば、強い空腹感によって食事量を減らせない方と、食欲はそれほど強くないものの、日常生活の活動量が少ない方では、見直すべきポイントが異なります。
また、体重が同じでも、体脂肪量や筋肉量、健康状態によって、適切な減量方法が変わる場合があります。
ダイエットを成功させるためには、単に食事量を減らすのではなく、なぜ体重が増えたのか、何が減量を難しくしているのかを考えることが大切です。
まずは体重・BMI・体脂肪・健康状態を確認しよう
体重管理を始める際には、現在の身体の状態を把握することが重要です。
代表的な指標がBMI(Body Mass Index)です。
BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って計算します。
例えば、身長170cm、体重80kgの場合、BMIは約27.7になります。
日本では、一般的にBMI25以上を肥満と判定します。
ただし、BMIだけでは体脂肪量や筋肉量の違いを判断できません。
筋肉量が多いためにBMIが高い方もいれば、BMIが25未満でも腹部に脂肪が多く蓄積している方もいます。
そのため、体重やBMIだけでなく、腹囲や体組成、血圧、血糖値、脂質などの健康状態も確認することが重要です。
また、日本では「肥満」と「肥満症」を区別しています。
肥満はBMI25以上の状態を指しますが、肥満症は、肥満に関連する健康障害を伴うなど、医学的に減量が必要な疾患です。
この違いは、治療目標や薬物療法の適応を判断するうえでも重要になります。
食欲が強くて食事制限が続かない人は?
食事量を減らそうとしても、強い空腹感によって続けられない方がいます。
この場合には、単に食事量を減らすだけでなく、空腹感が強くなる原因や食習慣を確認することが重要です。
例えば、食事を抜いているために次の食事で食べすぎてしまう場合には、食事のタイミングを見直すことが役立つかもしれません。
また、食事内容によって満腹感の持続が異なるため、必要なタンパク質や食物繊維などを確保することも大切です。
一方、空腹ではないのに食べ物への欲求が強くなる場合には、ストレスや習慣、食べ物への報酬的な反応などが関係している可能性があります。
このような場合には、食事内容だけでなく、食べたくなる状況や環境を見直すことも考えられます。
さらに、肥満があり、生活習慣の改善だけでは十分な減量が難しい場合には、医師による評価を踏まえて薬物療法を検討することもあります。
GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲や満腹感の調節に働きかけ、食事摂取量の減少を支援する薬剤です。
ただし、薬物療法はすべての方に必要なものではなく、健康状態や副作用のリスクなどを考慮して判断する必要があります。
筋肉量が少ない人は?体重だけでなく身体組成も意識する
体重を減らす際には、体脂肪だけでなく、筋肉などの除脂肪組織も減少する場合があります。
特に、極端な食事制限を行ったり、十分な栄養を摂取できていなかったりする場合には注意が必要です。
また、もともと筋肉量が少ない方や高齢の方では、体重減少に伴う筋力や身体機能の低下にも配慮する必要があります。
そのため、減量中には、可能な範囲で筋力トレーニングを行い、必要なタンパク質やエネルギーを確保することが重要です。
ただし、筋肉量を増やせば基礎代謝が大幅に上昇し、自然に痩せられるというわけではありません。
筋力トレーニングの大きな目的は、減量中の筋肉量や筋力を維持し、健康的な身体を保つことにあります。
また、体重の変化だけでは筋肉や体脂肪の増減を十分に把握できない場合があります。
そのため、必要に応じて体組成を確認しながら減量を進めることが役立ちます。
仕事が忙しく、運動する時間が取れない人は?
仕事や家庭の事情によって、毎日まとまった運動時間を確保することが難しい方もいるでしょう。
しかし、身体活動によるエネルギー消費は、ジムでのトレーニングやジョギングだけではありません。
通勤で歩く、階段を使う、家事をするなど、日常生活での活動もエネルギー消費に関係しています。
そのため、運動時間を確保することが難しい場合には、日常生活の中で身体を動かす機会を増やすことから始めてもよいでしょう。
例えば、短い距離は歩いて移動する、長時間座り続けないようにするなど、小さな取り組みを積み重ねる方法があります。
ただし、活動量を増やすだけで必ず大きく痩せられるわけではありません。
体重を減らすためには、食事からの摂取エネルギー量も重要です。
運動時間を十分に確保できない方でも、食事内容と日常生活の活動量を見直すことで、体重管理に取り組むことは可能です。
睡眠不足やストレスが強い人は?
睡眠不足や慢性的なストレスは、食欲や食行動に影響する場合があります。
そのため、食事制限を続けているにもかかわらず、夜間の間食や食べすぎが多い場合には、睡眠やストレスの状況を確認することも大切です。
例えば、睡眠時間が不足している方では、可能な範囲で睡眠時間を確保することが、食欲の調節に役立つ可能性があります。
また、ストレスによって食事量が増えている場合には、食事以外の気分転換や、食べ物を手に取りやすい環境の見直しなどを検討します。
ただし、睡眠やストレスを改善すれば必ず痩せられるというわけではありません。
体重の変化には、食事摂取量や身体活動量なども関係しています。
また、強いいびきや日中の眠気がある場合には、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が関係している可能性もあります。
そのため、生活習慣の改善だけでなく、必要に応じた医学的な評価が重要です。
ダイエットを繰り返している人は、体重維持まで考えよう
「食事制限をすれば一度は痩せられるけれど、しばらくすると体重が戻ってしまう」
このような経験がある方もいるでしょう。
減量後には、身体のエネルギー消費量が減少したり、食欲が高まる方向にホルモンが変化したりすることがあります。
そのため、減量前と同じ食生活に戻ると、体重が再び増加する場合があります。
また、短期間だけ厳しい食事制限を行う方法では、減量後も同じ生活を続けることが難しい場合があります。
そのため、長期的な体重管理では、減量することだけでなく、減量後の体重をどのように維持するかまで考えることが重要です。
例えば、無理なく続けられる食事内容を選び、日常生活での身体活動を維持することが役立ちます。
薬物療法を行う場合にも、治療中の体重減少だけでなく、治療を継続する必要性や、中止後の体重管理について検討することが大切です。
医療ダイエットでは、どのような治療方法を選ぶ?
医療ダイエットでは、体重やBMIだけでなく、肥満に関連する健康障害、生活習慣、食欲、身体活動量、既往歴などを総合的に評価します。
そのうえで、患者さんの状態に合わせて治療方法を検討します。
主な方法には、次のようなものがあります。
| 方法 | 主な目的 |
|---|---|
| 食事療法 | 適切なエネルギー摂取量と栄養バランスを整える |
| 運動療法 | エネルギー消費、筋力、心肺機能などの維持・改善 |
| 行動療法 | 食習慣や生活環境を見直し、継続しやすい行動を身につける |
| 薬物療法 | 適応を満たす場合などに、食欲調節や体重減少を医学的に支援する |
| 体組成評価 | 体脂肪量や筋肉量などの変化を確認し、治療を見直す参考にする |
なお、これらは完全に独立した治療方法ではなく、必要に応じて組み合わせることが重要です。
例えば、薬物療法で食欲が減少した場合でも、必要な栄養素が不足しないように食事内容を考える必要があります。
また、体重減少に伴う筋肉量の低下をできるだけ抑えるため、筋力トレーニングなどを取り入れることも考えられます。
医療ダイエットは、薬を使って体重を減らすことだけではなく、身体の状態や生活背景に合わせて減量を支援する方法です。
マンジャロによる医療ダイエットは、どのような人に向いている?
近年、食欲や満腹感の調節に働きかける薬剤を用いた医療ダイエットが注目されています。
当院では、その選択肢の一つとして、GIP/GLP-1受容体作動薬であるマンジャロ(一般名:チルゼパチド)を取り扱っています。
チルゼパチドは、食欲や食事摂取量を減少させる作用があり、肥満を対象とした臨床試験でも体重減少効果が報告されています。
そのため、強い食欲によって食事制限が続かない方や、生活習慣の改善だけでは十分な減量が難しい方において、医学的な評価を踏まえた治療選択肢となる場合があります。
ただし、薬剤による減量効果には個人差があり、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの副作用が生じる可能性があります。
また、マンジャロは日本では2型糖尿病の治療薬として承認されており、減量目的での使用は国内承認された効能・効果の範囲外となります。
なお、同じチルゼパチドを有効成分とするゼップバウンドは、一定の条件を満たす肥満症などに対して国内承認されていますが、当院では取り扱っていません。
当院では、患者さんのBMIや健康状態、既往歴、生活習慣、治療による利益とリスクなどを確認したうえで、自由診療によるマンジャロの使用を個別に検討しています。
医療ダイエットで大切なのは、薬剤の使用そのものではなく、安全性に配慮しながら、自分に合った方法で体重管理を続けることです。
医療ダイエットでは、InBodyによる体組成評価も活用
体重管理では、体重計の数字だけに注目してしまいがちです。
しかし、同じ体重でも、体脂肪量や筋肉量によって身体の状態は異なります。
また、減量中には体脂肪だけでなく、筋肉などの除脂肪組織も減少する場合があります。
そのため、体重の変化だけでなく、身体の中身がどのように変化しているかを確認することも役立ちます。
当院では、体組成分析装置「InBody」を導入しています。
InBodyでは、体脂肪量や骨格筋量などを推定し、減量中の身体の変化を確認するための参考にすることができます。
ただし、InBodyの測定値は水分状態や測定条件などの影響を受けるため、1回の結果だけで判断することはできません。
できるだけ同じ条件で継続的に評価し、体重や腹囲、食事・運動の状況などと合わせて考えることが重要です。
また、InBodyの測定結果だけで、薬物療法の必要性や肥満に関連する健康障害を診断できるわけではありません。
医療ダイエットでは、体重を減らすことだけでなく、体脂肪や筋肉量、健康状態などを総合的に確認しながら治療を進めることが大切です。
ダイエットの目標は「何kg痩せるか」だけではない
ダイエットを始めるときには、「10kg痩せたい」「20代のころの体重に戻したい」など、目標体重を決める方も多いでしょう。
もちろん、目標を設定することは大切です。
しかし、医学的な体重管理では、体重の数字だけが目標になるわけではありません。
例えば、肥満に関連して血圧や血糖値、脂質などに異常がある場合には、減量によってこうした健康状態が改善することがあります。
日本の『肥満症診療ガイドライン2022』では、肥満症の減量目標として、現体重の3%以上が一つの目安とされています。
例えば、体重80kgの方であれば、3%は2.4kgです。
ただし、これはすべての方にとって3%の減量で十分という意味ではありません。
高度肥満症や合併する健康障害の程度によっては、より大きな減量目標が必要になる場合があります。
一方、健康状態や年齢によっては、体重を大きく減らすことよりも、筋力や栄養状態を維持することを優先する場合もあります。
そのため、目標体重は、BMIや健康状態、年齢、体組成、治療方法などを踏まえて個別に考える必要があります。
大切なのは、短期間で大幅に痩せることだけではなく、健康状態を改善し、その状態を長期的に維持することです。
太りやすさを理解することが、無理のないダイエットにつながる
肥満には、食事や運動だけでなく、食欲、代謝、年齢、遺伝的な体質、睡眠、ストレス、病気や薬剤など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、体重管理が難しい理由は人によって異なります。
強い空腹感が問題になっている方もいれば、生活環境によって身体活動量が少なくなっている方もいます。
また、病気や薬剤の影響を確認する必要がある場合もあります。
こうした違いを理解せず、全員が同じ方法で食事制限や運動を行っても、十分な効果が得られないことがあります。
自分が太りやすい理由を知り、その原因に合わせた方法を選ぶことが、無理なく体重管理を続けるための第一歩です。
当院では、患者さんの生活習慣や健康状態、体組成などを踏まえながら、食事・運動・必要に応じた薬物療法などを組み合わせた体重管理を検討しています。
これまで自己流のダイエットでうまくいかなかった方や、忙しくて体重管理が難しい方も、まずは現在の身体の状態や生活習慣を確認することから始めてみましょう。
まとめ|太りやすさにはさまざまな原因がある
肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態が長期間続くことで生じます。
しかし、その背景には、食事量や運動不足だけでなく、食欲を調節するホルモン、体組成、年齢、遺伝的な体質、睡眠、ストレスなど、さまざまな要因が関係しています。
今回の重要なポイントを整理すると、次のとおりです。
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体重の増減はエネルギーバランスが基本ですが、食欲や消費エネルギー量には個人差があります。
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食欲は脳やホルモンによって調節されており、単に意志の強さだけでコントロールできるものではありません。
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年齢を重ねると必ず基礎代謝が急激に低下するわけではなく、筋肉量や身体活動量、生活習慣の変化も重要です。
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睡眠不足、ストレス、遺伝的な体質なども、食欲や体重管理の難しさに関係しています。
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減量後には消費エネルギーが減少し、食欲が高まることがあるため、停滞期やリバウンドが生じる場合があります。
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甲状腺機能低下症などの病気や、一部の薬剤が体重増加に関係していることもあります。
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自分が太りやすい理由を理解し、生活習慣や健康状態に合った方法を選ぶことが、長期的な体重管理につながります。
ダイエットでは、短期間で何kg痩せたかだけでなく、体脂肪量や筋肉量、健康状態を確認しながら、無理なく続けられる方法を考えることが大切です。
大阪・本町のアンバー大阪メンズクリニックでは、InBodyによる体組成評価を活用し、食事や運動、生活習慣の見直しに加えて、必要に応じてマンジャロを用いた自由診療の医療ダイエットについてもご相談いただけます。
なお、マンジャロの減量目的での使用は国内承認された効能・効果の範囲外であり、薬剤の使用については健康状態やリスクを踏まえて個別に判断します。
これまでダイエットが続かなかった方も、まずは自分の身体と生活習慣を知ることから始めてみましょう。
医師からひとこと
診察をしていると、「食事を我慢しているのに痩せない」「昔は簡単に痩せられたのに、最近は体重が落ちない」というお悩みを伺うことがあります。
体重管理の基本は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスです。しかし、実際には食欲の強さや身体活動量、睡眠、ストレス、体質などが影響するため、同じ方法がすべての方に合うわけではありません。
特に、食事制限を続けるうちに空腹感が強くなったり、減量後に消費エネルギーが減少したりすることは、身体に備わった生理的な反応でもあります。
だからこそ、私はダイエットで大切なのは、ただ我慢することではなく、自分が太りやすい理由を知り、無理なく続けられる方法を見つけることだと考えています。
当院では、体重だけでなくInBodyによる体組成評価や生活習慣なども参考にしながら、一人ひとりに合った体重管理を一緒に考えていきます。
これまで自己流のダイエットでうまくいかなかった方も、気軽にご相談ください。
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日本肥満学会公式サイト:https://www.jasso.or.jp/

